一般質問の要旨  (令和元年9月)
 
  質問者 議席番号  4番  守岡 等 議員
 
 
1 子どもの貧困対策について
 子どもたちは本来大きな夢と希望を持って、果てしない未来に向かって進んでいく存在です。そして、学校や家庭、地域社会の中で様々なことを学び体験し、将来の地域や国家、世界の発展に貢献していくものです。
 しかし、近年、格差社会の進行に伴って子どもの貧困が社会問題になる中、学力の低下、健康状態の悪化、家庭機能の崩壊と育児放棄など具体的な問題が身近でも起きています。 特に、子どもの貧困問題は経済的な困難もさることながら、支えがない、自己肯定感の喪失など、人生の諦めモードに支配され、格差が次第に拡大するだけでなく、次世代に連鎖していくことも重大な問題です。
 もともと、貧乏と貧困は別の概念として捉えられていました。少々お金がなくても家族や友人関係の中で充実した人生を歩むことは可能です。しかしお金がないことに加え、健康や人間関係が疎外された場合、すなわち日常生活から孤立した場合、貧困という耐えがたい状況に陥ってしまいます。
 子どもの貧困を考える上で、経済的困窮に加え、学校や家庭、地域から孤立している問題を重視して、対策にあたる必要があります。そして特に、学校・教育現場を中心に据えて、学習指導と生活指導という教育の根幹から子どもの貧困対策を講じることが必要だと考え、問題提起するものです。
 
(1)「子どもの未来を応援する首長連合」への加盟
 いま、子どもの相対的貧困率(17歳以下の子ども全体に占める、等価可処分所得が中央値の半分に満たない子どもの割合)が13.9%(平成29年度)となっており、7人に1人が貧困状態にあります。特にひとり親世帯は50.8%で、国が対策法を作って以降減少傾向にはありますが、依然高い状況にあります。
 こうした子どもの貧困は学力や進学にも影響し、地域活力の低下や次世代の人材育成など本市の将来像にも大きく影響します。
 さらに生まれ育った家庭の状況に子どもたちの将来が左右され、再び困窮家庭を形成するという「貧困の連鎖」が生じる危険性があります。
 こうした子どもの貧困に対して真摯に立ち向かい、貧困の連鎖を断ち切る取組が全国各地で始まっています。その代表的なものに、佐賀県武雄市の小松市長らが発起人になって立ち上げた「子どもの未来を応援する首長連合」(子どもの貧困対策連合)があります。
 この対策連合は、それぞれの地域の実情を踏まえ、広域的な連携を図りながら地域の特色を活かした取組を推進することで、地域の活性化を図りつつ、貧困の連鎖を断ち切り、子どもたちの明るい未来の実現を図ることを目的とし、国への政策提言、シンポジウムなど多彩な取組を行っています。平成31年3月現在、179団体が加盟し、山形県からは山形市が加盟しています。
 本市が子どもの貧困問題に真摯に取り組み、子どもの明るい未来をつくる姿勢を市内外に示していくためにも、また山形市との連携による具体的事業を進めていく上でも、「子どもの未来を応援する首長連合」に加盟すべきと考えますが、市長のご所見をお示しください。
 
(2)各学校へのスクールソーシャルワーカー配置による生活支援の強化
 子どもの貧困が大きな社会問題になる中、国の方でも平成26年1月に「子どもの貧困対策の推進に関する法律」が施行され、同年8月には「子どもの貧困対策に関する大綱」が制定されました。
 そこでは教育の支援、生活の支援、保護者に対する就労の支援、経済的支援、調査研究が謳われていますが、中でも学校を基盤とした総合的な子どもの貧困対策を展開するとして、学力保障や福祉関連機関との連携、地域による学習支援に力を入れるとしています。特に学校を基盤として、子どもたちを早期の段階で生活支援や福祉制度につなげるシステムをつくるために、スクールソーシャルワーカーの配置推進が謳われています。
 子どもの貧困は「みえない貧困」ともいわれています。見た目は普通に見えても、対話や訪問を通じてはじめて、十分な食事がとれていない、親の育児放棄がある、孤立化する状況にあるなど、深刻な問題を抱えていることがわかる場合があります。
 私が経験した事例では、親が多重債務問題を抱え、弁護士の協力も得て一定問題解決を図ったものの、家計管理がうまくできず結局またサラ金に手を出してしまう、税を滞納してしまう、就労もうまくいかず家族関係も破綻してしまい、子どもの生活や心身の状況に大きく影響するといった深刻な事例がありました。子どもの貧困の背景にはこうした様々な問題が横たわっており、専門的知識を持ったものによる寄り添い型支援・同伴型支援が必要であることを痛感しました。
 しかし、学校の教師のみにそうした寄り添い型・同伴型支援を求めることには今の現場の教師が行かれている状況から見て無理があります。子どもたちの内面とふれあい、家庭の状況を把握し、問題があれば生活支援や福祉制度につなげるスクールソーシャルワーカーの役割が今日ほど大きくなっている時はありません。一人ひとりの子どもたちやそれぞれの家庭に寄り添った支援体制を構築するために、各学校に生活支援の専門スキルをもった常駐のスクールソーシャルワーカーを配置することを提案します。教育長のご所見をお示しください。 
 
(3)学校における放課後を活用した学習支援
 親の所得と子どもの学力がきれいな比例関係にあることが多くの学者らによって実証されています(2009お茶の水女子大耳塚教授ら)。貧困により必要な教育機会が与えられなかったり、貧困に端を発する自己肯定感や将来の希望の欠如は、子どもたちやその家族だけでなく、社会全体の損失だと考えなければなりません。
 いま、子どもたちの貧困や孤立化をふせぐために民間団体による子ども食堂や居場所づくりが積極的に行われています。こうした民間の取組がさらに進んで、多くの子どもたちに希望を与える契機になってほしいと考えます。同時に、そうした民間の取組と並行・連携して、行政としての責任もきちんと果たす必要があるのではないでしょうか。
 特に子どもたちの学力保障は、学校が責任を持って行うべき課題だと考えます。塾に行きたくても親の経済負担を考えて我慢している子どもたちがいます。家庭の問題が心配で、なかなか勉強に身が入らない子どもたちがいます。極端な場合、親の育児放棄の事例さえあります。こうした子どもたちの学力を保障するためには、少人数の習熟度別学習や放課後補習などが考えられますが、今日の教師の多忙を考慮して、退職教員などの協力による放課後を活用した学習支援を行うべきではないかと考えます。教育長のご所見をお示しください。
 
2 教職員・保護者の学校給食等に係る負担軽減について
(1)学校給食費等の公会計化
 学校給食費は小学校で約4万5千円、中学校で約5万円で、一校あたりの年間会計は1千万円を超える場合もあります。これだけの金額が学校長名義の私会計で処理されているのが実状ですが、会計の透明性の観点から問題があるといわざるを得ません。
 また、給食費未納の場合には、担任の教師や教頭に督促を任せている状況にあり、教職員の多忙化に拍車をかける結果となっています。
 こうした中、文部科学省は、「学校給食費については公会計化を基本とする」方針を打ち出し、ガイドラインの作成や先進事例の提示が行われています(平成29年「学校における働き方改革に関する緊急対策」)。
 公会計を導入している自治体からは、@給食費の取り扱いがより明確になり、透明性が高まった、A保護者が指定した金融機関からの引き落としが可能となった、B給食費の徴収管理や事務負担が軽減され、教育の時間が確保できるようになった、C未納の要因になっている様々な問題について、福祉や医療など行政全体で対応できるようになった、といった効果が示されています。
 本市においても会計の透明化を図り、教職員の負担軽減、未納世帯へのきめ細かい行政対応などの面から学校給食費等の公会計化を図るべきだと考えますが、教育長のご所見をお示しください。
 
(2)学校給食の無償化
 みんなで食べる学校給食は、子どもの心身の成長を司る大変重要なものです。生産者や大地の恵みに対する感謝、給食に携わる職員への感謝、そしてマナーの向上など、まさに食育そのものです。
 日本国憲法第26条では「義務教育の無償」を謳っていますが、学校給食は教育の重要な分野であり、本来学校給食も無償にすべきものであります。
 また近年、格差・貧困が進行する中、保護者の給食費負担が大きくなるだけでなく、子どもの栄養摂取において学校給食の比重が増してきている現状もあります。
 こうしたことから子育て支援の強化の観点から、学校給食の無償化に取り組む自治体が増えています。平成30年7月の文部科学省の発表では、全国で82の自治体で無償化を実施しており、一部無償化・一部補助を行っている自治体が424となっています。県内では鮭川村が小学校・中学校で無償化を実施しているほか、11の市町村が一部無償化・一部補助を行っています。
 憲法が示す義務教育無償化の観点から、あるいは「子育てするなら上山」という子育て支援の観点から、そして保護者の経済的負担を軽減する観点から、学校給食の無償化を提案します。教育長のご所見をお示しください。