かみのやま温泉DMOの早期設立について
 
 DMOというのはDestination Management(Marketing) Organizationの略で、直訳すれば観光のマーケティングや商品開発などを一体的に進める組織のことをいい、一言で言えば、観光地域づくりを行う法人という意味です。観光庁によれば「日本版DMOは、地域の『稼ぐ力』を引き出すとともに地域への誇りと愛着を醸成する『観光地経営』の視点に立った観光地域づくりの舵取り役として、多様な関係者と協同しながら、明確なコンセプトに基づいた観光地域づくりを実現するための戦略を策定するとともに、戦略を着実に実施するための調整機能を備えた法人」と定義されています。
 そして、DMOが必ず実施する基礎的な役割・機能(観光地域マーケティング・マネジメント)として、
@DMOを中心として観光地域づくりを行うことについての多様な関係者の合意形成
A各種データ等の継続的な収集・分析、データに基づく明確なコンセプトに基づいた戦略(ブランディング)の策定、KPI(実績・目標)の設定・PDCAサイクルの確立
B関係者が実施する観光関連事業と戦略の整合性に関する調整・仕組み作り、プロモーション
を挙げています。
 また、地域の官民の関係者との効果的な役割分担をした上で、例えば、着地型旅行商品の造成・販売やランドオペレーター(旅行サービス手配)業務の実施など地域の実情に応じて、DMOが観光地域づくりの一主体として個別事業を実施することも考えられるとしています。
 いま、北海道ニセコ町、新潟県湯沢町、長野県飯山市、岐阜県高山市、大分県別府市などDMOによる観光地域づくりを進めているところが増えています。
 観光庁では日本版DMOの確立を促進するため、日本版DMO及びその候補となり得る法人を登録する制度を創設しています。そして、昨年11月には日本版DMO候補法人のうち、登録要件を満たす41法人を日本版DMOとして認定登録しています。
 こうした国の政策の下で、いま、「山形・天童・上山三市連携観光地域づくり推進協議会」(山形DMO)が結成され、さらに民間活力によるその商品化・具体化を図る「おもてなし山形株式会社」(山形DMC)が創設され、広域的な取り組みが始まっています。
 そこでは観光戦略の企画立案、マーケティングなどを担う企画担当部会、着地型旅行商品の企画・造成、プロモーションを行う旅行商品造成担当部会、情報発信業務などを行う情報・システム担当部会などが設置され、三市が連携した広域的な取り組みが行われています。
 この山形DMCの観光地域づくりを進めるにあたって、天童・山形・上山の各温泉地においてDMOを設立し、宿泊施設等の業務システムの共有化をはかり、従業員のシェアをはかることで従業員の確保と新たな雇用を創出し、あわせて未利用施設を宿舎として再生をはかり温泉街の活性化をはかることが打ち出されています。そして、すでに天童温泉DMCが設立されています。
 私はこうしたかみのやま温泉DMOを早期に設立させ、本市の地域資源整備、観光メニューの造成をはかりつつ、広域DMOとも協力してインバウンドも含めた幅広い観光客の受入を進めるべきだと考えます。
 たとえば、山形大学が行った上山市の観光分析にもあるように、これまでは旅館の魅力で本市を選択する観光客が多かったわけですが、今後はそれに加え、本市独自の観光メニューを選んでもらう必要があります。そのためには本市の観光資源をいかした体験型観光メニューを整備していく必要があります。これまでにもいくつかの体験型観光が行われてきましたが、たとえば上山城・武家屋敷周辺での着物着付け体験、折り紙・習字・茶道の体験、侍体験など、地域資源を発掘して新たな体験型観光メニューを作り上げていく必要があります。とりわけインバウンド観光においてはこうした体験型・着地型の観光メニューが効果的で、むしろ最近では都会の大型観光施設よりも地方の日本らしい地域を訪れる外国人観光客が増えているようです。先ほど述べた高山市に外国人観光客が訪れるのもこうした理由からだと考えられます。本市の自然環境、歴史、伝統文化などを観光資源として整備するならば、外国人に対し典型的な日本文化を示し得るものだと考えます。
 こうした本市独自の観光メニューをつくりあげていくためにも、かみのやま温泉DMOを創設すべきだと考えています。
 これまでにも市民はじめ、観光関連業者や行政が観光振興に努めてきたわけですが、交流人口の拡大やまちの活性化という共通のベクトルで、しかも利益を生み出すという目的で統一的に機能してきたとはいえない状況があります。これはそれぞれの業者・個人の事業目的が違うため当然といえば当然であるわけです。
 しかしDMOは観光地経営・観光地づくりという共通の目的を持ち、観光商品の開発と販売、旅行サービスの手配といった共通の事業を行う経営体です。当然経営的に自立し、責任の所在も明確です。非常にシビアな側面もありますが、本市の観光客を増やすためにはこうした組織が必要だと考えます。