愛と癒やしのコミュニオン  鈴木秀子
 
・人間同士の深い関わりを求めるなら、「聞く」練習をし、聞く力を育てる必要がある。
・ひたすら共感を持って聞く
 
<ドイツ人神父さんと犬>  アクティブ・リスニング
・家は教育関係者を輩出する名門
・優秀な兄と比較され続けてきた
・小学5年生の夏休み前 終業式の帰り道 通信簿には落第点がいっぱい
 足取りは重くなり家に入るのをためらっていると愛犬が飛んできた
・少年は犬を抱きしめながら語り始めた ありったけを話し続けた
・犬はじっと聞いている そうしているうちにもやもやが晴れてきた
 「こんなに自分のことをわかってくれるものがいる」
 「神様は自分をこういうふうにみていてくださる」少年なりの神体験
 「自分と同じように悩んでいる人に,神様がこんなに愛してくださることを伝えるのが  自分の使命ではないか」
・「あの時、自分の犬が全身全霊を傾けて聞いてくれ、苦しんでいる私とともにいてくれました。その犬に自分の気持ちを全部話してみると,不思議と自分は自分であって良いと思えるようになり,気持ちが楽になったのです。そして、勉強ができなくて悔しいのが自分だ、お母さんに成績表や先生からの手紙を渡さなければならないことを悲しんでいるのが自分だ、お父さんに叱られるのが怖い,それが自分だ、兄さんと比べられるといじけてしまう、それが自分だと,私はいつも嫌いな自分をも,そのときなんだか愛おしく受け入れられたのでした。私はその体験を通して神様の愛とはどんなものかを知ったのです:
 
「愛とは全身全霊を傾けて聞くこと、受け入れることに尽きる、つまりその人とともに一致して存在すること、それが愛」
 
アクティブ・リスニング
・考えを引き出すのでもなく,積極的に質問するのでもなく、ただ話し手に注目し,注意 深く耳を傾ける、つまり傾聴することで話し手は自分で解決していく知恵を出すことが できる。
・これは「批判しない」「同情しない」「教えようとしない」「評価しない」「ほめようとし ない」アクティブ・リスニングそのものだ。
 
・アクティブ・リスニングとはただひたすら聞くことだ
 
・受容とは,相手のいうことを認めること,肯定することではなく,非受容の言葉を返さ ないこと
・教訓や指示、評価、批判などはそれを示した時点で相手の心を閉ざしてしまう
 誰もが自らの問題を解決する能力を秘めているという事実を受け入れることが重要
 
・沈黙とあいづちの効用
 ドイツ人神父さんに対して,犬がもたらした効果は、この「沈黙とあいづち」受容的な聞き方ということができる。
 
・最も効果的なストレスの吐き出し方は,人に話を聴いてもらうこと
 
・問題所有の原則
 聞き手は,問題を引き受けて解決策を探すのではなく「この問題は話し手の持ち物で,解決法を探すのは、あくまで話し手自身である」と肝に銘じる
 
・シュタイナー
 アクティブリスニングは、相手も自分でも思いがけないほど自分の本音を語ってくれる。そうした本音をくみ取ったとき、聞く方は相手の本質に触れたように感じる。そして、深い畏敬の念、今までとは違った相手に対する深い敬意が自然と沸き起こる。意見の違いはそのままとしても、両者の間に深いところでつながりができる。
 
 
 
 
登校拒否を生きる 「脱落」から「脱出」へ  高垣忠一郎
 
「自己責任」「自立自助」のもと、自分がうまくいかないことにぶつかると。すべてを自分のせいにする傾向がある。そして自分を否定する。
 
・全て自分で解決しなければならないと思い込み、親にさえ相談できない。
 
<自己肯定感> 自分が自分であって大丈夫
・赤ん坊が泣く。そのとき「うるさいから黙れ」とはいわない。「そうかよしよし。おしめが濡れたのか。あるいはお腹がすいたのか、よしよし」
・赤ん坊のわけのわからない泣き叫びに「よしよし」と受け止めること。
・共感と赦しのはじまり
 
・「よしよし」は存在そのものを肯定すること。使用価値ではなく存在価値
・今の子どもたちは泣き叫ぶこともできない、自分の不快感を言葉で表現できない
 自立・自助、自己責任の下否定され排除されないよう迷惑をかけないよい子を演じる
 
・私たちは登校拒否を治療して学校に行かすのではなく、その子どもたちのまるごと存在が「癒やされる」よう援助する。
 
・本人自身が自然治癒力(自己回復力)に依拠しながら,自分で自分を直していく。親やカウンセラーは自然治癒力(自己回復力)を活性化させるために、「自己肯定感」が膨らむように援助する。
 
<問を共有する癒やしの文化>
・私たちが登校拒否に向き合うとき,学校に戻してやれば良いという「答え」を安易に出すことはしない。「問い」を大事にして,それが何を私たちに問うているのか,その意味を考える。
 
・カウンセラーは答えを教えるのが仕事ではない。その人が問題とまともに向き合って、自分なりの答えを見つけ出すのを手伝うのがカウンセラーの仕事。
 
・日常の意識の中では明確な形で浮き上がってこない,よくわからないおぼろげな形をとったある「問題」=「尻尾あたりに感じる重苦しい感じ」をもたらすものが、彼の登校拒否を引き起こした何かであった。
 
・登校拒否の子どもの「行かねばならないと一方では思いつつ,他方でどうしてもいけない,生きたくない」という内的葛藤を、青年期(思春期)の発達の原動力としてくこと,生年の発達を主導する「内的矛盾の自己運動」として開花させていく援助こそが教育の場で必要なこと。
 
・学校のレールからはずれる「落伍者」「脱落者」としての物語とともに、副旋律として世間が認めている価値にとらわれた生き方から自分を解放する「脱出者」としての自己主張
 
 
 
 
生きづらい時代と自己肯定感 高垣忠一郎
 
肯とは(常用字解) ゆるす
自己肯定:評価的には自分を肯定することができない困難な状況にあっても、あえてそれ     を押し切って自分を認め,許す
 
・自己肯定感を持てないことが今の子どもや若者たちの「生きづらさ」の核心にある
 
赤ん坊のおしめと「よしよし」 大丈夫だよという共感と赦しの「よしよし」
 
・「自分が自分であって大丈夫」という安心と信頼があるとき,自分を自由に表現し,打ち出していくことができる。しかし、それがないと自由に考え,感じたことを表現することができなくなってしまう。
 
<東欧拒否にみられる子どもの特徴>
内側から見れば,人前では楽しそうに振る舞いながら,内心では常に周囲に気を遣い,他人の目を気にしている姿がある
 
・国際比較の調査で数学や理科の成績はトップクラスでも、「勉強は得意ですか」「成績はどれくらいですか」という問いには肯定的回答が飛び抜けて少ない。
 
教育社会学者の久冨善之氏「それは自己評価が他者との相対評価にしばられているから」
 
<学校の課題> 自己肯定感を育てる集団づくり
・二つの苦しみの中にいる若者たち
 若者は自分を嫌い否定する傾向をもつ一方で,周囲の大人や友人に自らの悩みやつらさを表現することに不安やおそれを感じているという二つの苦しみ
 
・とりわけつらさやしんどさに耳を傾けしっかりと受け止めてくれる相手を持てない孤立 感
 
・何よりも必要なことは、「他人とともにありながら、安心して自分自身であることができる」ような「ゆるし」と「共感」の人間関係の中に身を置くこと。
・そういう居場所に身を置くことによって「自分が自分であって大丈夫」という自己肯定感が心に根を生やし,育ち始める。
 
・スクールカースト クラスの中の一軍、二軍、三軍
 Aクラス:イケメンで格好良い。明るく面白い
 Bクラス:普通
 Cクラス:暗くてダサい
 お互いに関わりがない。そういう人間関係の中で自分を肯定する安心を抱くのが難しい
・子ども同士の人間関係では明るいこと○、暗いこと×という価値観があり、つらさや悩 みを打ち出すことができない
 
<子どもの気持ちの言語化の援助とそれを共有すること>
・子どもに寄り添い,内面に耳を傾け,不安やつらさなどの感情を、その子が言語化し表現できるように援助すること
・子どもの気持ちを聞き取ることに力を注いでほしい
・そのことに成功すれば不安、つらさを他の子どもたちにもつないでゆき、子どもたちが共有できる
・そのことによって子どもの私秘的な「体験」が,他者と共有できる「経験」となってい く
・クラス集団が「他人とともにありながら,安心して自分でいられる」集団となり、その集団の中で自己肯定感を育む
・これが今の生活指導に求められる最も重要な課題
 
<「共感原理」の生きる学校やクラスをつくる>
・教師は安心して排泄物を漏らすことができる「おしめパンツ」に徹する
・今の子どもたちは、つらいことは話さない。相手に迷惑をかけると思い込んでいる。その不安を乗り越えるには「漏らしても大丈夫」という安心感が必要。
 
・教師自身が自分の傷付きの感情や気持ちを誰かに語り、聴き取ってもらう関係を経験す ることが必要
 
 
 
悩む心に寄り添う 高垣忠一郎
 
・子どもの権利条約の条文に子どもの意見表明権(第12条)があるが、登校拒否はこの 意見表明権の行使に他ならない
・今日の競争的な学校環境や非人間的な労働環境が、不安や恐れをもたらしている一面が あることは無視できない。
 
・娘から「親心は下心や」といわれた
 
・2020年春、科学的根拠もないまま、感染対策と称して全国の学校を一律休校にした
 親や子どものストレスが増大し、児童虐待など家庭が子どもの安心できる居場所でなくなってしまうという状況があちこちで生まれた
・コロナ禍が明らかにした問題
 経済効率を重視した人づくりは人間の発達を疎外している→自己肯定感の喪失
 自殺の急増
 
・子どもサミットにおける登校拒否をしている少年の発言
 「僕たちは不登校という形で、自分のつらさを表現できている。同じようなつらさを抱えながら、それを表現できずに学校に我慢して通っている子どもたちがいっぱいいる。その子どもたちのことを気にかけてあげてください」
 
・国語教育から「綴り方」や「作文」が消え、情報を読み解き、それを要領よくまとめて報告する力、つまり情報処理能力の養成に重点が移ってきている
 
・二つの苦しみと居場所
 自分を否定しなければならない苦しみと、それを誰にも言えない二つの苦しみ
 何よりも必要なことは、ゆるしと共感の人間関係の中に身を置くこと
 
・家庭が居場所になっているか→愛着障害
 
<ひきこもっていたが元気になった事例>
・料理とケーキ作りに興味と関心
・スポンジケーキ一つ作るのも大変や。僕はスポンジケーキ成功させたら、少しは世の中 に通用する自信がつくのでは
・ケーキ作りは自分づくり→次のステップへ
・生協のアルバイトでいろんな大人と出会い、いろんな価値観、考え方を知り、もう一度 勉強したいと定時制高校に通い始める
・学校に行かねばならない → 学校に行きたい
「カウンセリングの5年間は長かったなぁ。でも僕はその間に”花がきれいだなぁ”と感じるようになりました。
 
<自己否定感>
・自己否定感も自分の心と向き合えば、理由が見えてくるはずだ。
 ところが多くの人は、自分の心に向き合うことをしなくなっている。だから自分はだめだ、死にたいなどと感じたまま動けなくなっている。正体不明の感情に絡まれ、身動きとれなくなっている。
 
<自己肯定感を育てる方法>
・自分自身が苦しくて、つらいとき、その気持ちを「つらいね、よしよし」と受け止め、共有するということ。
・当事者が、その共感的他者と同一化して、もう一人の自分として、内面に取り込み、自分自身と優しく、慈愛に富む関係を作り出せるように、環境や人間関係を整えてやることである。相手を大切なかけがえのない存在として、その苦しみに共感し、慈悲の心で抱きしめる関係を作ること。
 
<理解と赦し>
・赤ん坊が泣くとき、「よしよし」と声をかける
 「いいんだよ、大丈夫。よく教えてくれたね」
・理解と赦しの「よしよし」は存在そのものを肯定する。
 
・痛みや苦しみを訴え、その痛みを受け止め、手当てしてもらえる関係の中で、子どもたちは「自分が自分であって大丈夫」という安心を得て、自分で自分に「よしよし」ができるように、つまり自分が苦しくなったときに自分に向き合うことができるようになる。
 
第4章 若者や子どもの生きづらさに光を当てる支援
1 自己否定の心も否定せず受け入れる
・2004年佐世保で小6の女児が同級生を殺害した事件 長崎家庭裁判所の決定
 彼女が自分の気持ちを表現することが苦手だった、とりわけ否定的な感情を表現するこ とができなかったことに触れている
 
・暗い話をすることは相手に迷惑だと感じる気持ちは若者に共通
 つらいことを親に言えずペットに語る、登校拒否で親に迷惑をかけて自分など消えてしまった方がいい、親の期待を裏切って申し訳ないetc
 
・つらさやしんどさを受け止めてくれる人のいない孤立感、自分を表現することに対する 恐れや絶望感
 
2 聴く力の大切さ
<アクティブ・リスニング>
鈴木秀子「愛と癒やしのコミュニオン」
 
「愛とは全身全霊を傾けて聞くこと、受け入れることに尽きる、つまりその人と共に一致して存在すること、それが愛」
 
「傾聴してくれる相手に話すとき、自分の内面の見えなかった根の部分にまで光を当て、いままで出なかった知恵をくみ出していくことができるのだ。これはまさに『批判しない』『同情しない』『教えようとしない』『評価しない』『ほめようとしない』アクティブ・リスニングであると」
<あるお母さんの自己肯定感の目覚め>
「ここで自分のつらくてしんどい気持ちを洗いざらい吐き出して、それをしっかりと聴いて受け止めてくださる。そうすると、心が軽くなるのです。そのことを実際に経験して気づいたことがあります」
「ここで話を聴いていただいて、心が軽くなって家に帰ると子どもをまるごと受け入れられるのです。子どもを落ち着いてみてやれるのです。私自身がそのことを経験して気づいたのです。ここで私が話を聴いていただいたように、私が子どもの気持ちを聴いてやらないといけない。それなのに、私は自分の不安や焦りを子どもにぶつけるばかりで、子どもの気持ちに耳を傾けてやれていませんでした。それでは子どもの気持ちも落ち着きませんよね」
 
・私たちの人間性は、face to faceの中で他者への応答可能性、応答責任を認めたときにのみ発言されるように思う。その関係性を引き裂き、情報のみが一人歩きして、その人間を特定したり、選別したりするための手段になるとき、それは人間を道具的に扱うことになる。
 
奈々子に(吉野弘 抄)
お父さんが
おまえにあげたいものは
健康と
自分を愛する心だ
 
ひとが
ひとでなくなるのは
自分を愛することをあyめるときだ。
 
自分を愛することをやめるとき
ひとは
他人を愛することをやめ
世界を見失ってしまう
 
自分があるとき
他人があり
世界がある
 
 
 
 
「学校に行きたくない」と子どもが言ったとき親ができること 石井志昂
 
・子どもは雑談したがっている
 「チャイルドライン」という18歳までの子どものための電話相談機関
 相談内容のトップ3にランクインしているのが「雑談をしたい」
 この傾向は10年ほど  子どもたちがとりとめのない話をする相手に困っている
 
・聞き手に徹する
 どんどん別の話をしていく
 話ながら気持ちが整理され、自分の心の奥にある気持ちに気づく
 
<文科省の調査>
・小中高の不登校児童生徒数は2019年度は23万1372人と過去最多を更新
 小学校5万3350人、中学校12万7922人、高校5万100人
 
・学校に行きたくない理由は重なり合っている
 友人との関係53.7% 生活リズムの乱れ34.7% 勉強がわからない31.6% 先生との関係26.6%
 
・つらいまま学校に行く方が傷は深くなる
 
・不登校は一番苦しい時期を脱したサイン
 学校を休み始めた瞬間から心の回復が始まる
 
・子どもが言われてうれしい2つの言葉
 「好きにしていいよ」「ありがとう」
 その一言を聞いて彼女は「家族の一員なんだと思えた。存在してもいいんだと思った」
 
・子どもの意思を大切にする
 教育の「個別最適化」
 自分が選んだ環境に身を置くことで、子どもはおのずと最適なルートを選んでいく
 
<フリースクール>
子どもの意思を尊重してくれる場所「あなたが自分の意思で学びたいことを学んでいくんだよ。あなたの人生を歩んでいくんだよ」
・文科省の調査ではフリースクールでは平均3万3千円の月謝(+入会金、交通費)
 ごく一部の自治体で奨学金制度がある
 国からの補助金はない
 
<教育機会確保法で何が変わったか>
2017年施行
1)フリースクールの認知度が上がり、不登校の子どもたちが通う場として認識されるよう になった
2)不登校の子への支援は、従来のような学校復帰を目的とせず、個々人が進路を主体的に 考え、社会的に自立することを目指す方向に転換
 
・一人ひとりの持ち味を信頼しながら、その子の持ち味を見守っていく。そうやって何かあっても否定されなかった、自分は自分でいいんだという感覚を子どもは得る。それを自己肯定感というのではないか。
 
・ネガティブな感情をうまく発散する
 一番わかりやすいのはアタッチメント(身体的接触)手を握る、おんぶする
 脳の中にオキシトシンという癒やし系のホルモンが分泌される
 
・最近の研究では、10歳の時に社会性が良く育っている子を調べていくと、0-2歳の乳児 期にアタッチメント体験が豊富だったという相関関係がはっきり出た。
 その中でも、親ではなく、血のつながりのない人が自分を愛してくれる、わかってくれ ているという感情を持つことが大切(保育士さんなど第三者)
 
・フリースクールは何がフリーかというと、カリキュラムを自分たちで作っていけるフリ ーがある。
 
・不登校の経験はいつか自分の財産になる
 
<N高等学校> ネットの高校 個別最適化
・不登校の人たちが行きたい学校がなくて困っている、通信制高校へ行くのが恥ずかしい
 
・キャンパスでの課外授業
 卒業資格とは関係ないが、絶対に楽しい
 
・脱偏差値教育 社会の多様性を知る
 東大合格者もいる。多様性を経験している人が東大に入る。それが重要
 
 
Web資料
 
○世田谷区 公設民営の不登校支援施設
・教育支援施設を学校復帰を求めない施設にすると歩行姓を変え、民間のノウハウを活用・利用料無料
 保護者の金銭負担に罪悪感を感じる子ども無料は公設のメリット
 
○N高 目指すのは生徒の自主性を伸ばす多様な学び
・ネットならではの斬新さ
 自分が好きなときにオンラインで学ぶネットコース、仲間とネット上で学ぶオンライン 通学コース、各地にあるキャンパスに通う通学コース、通学プログラミングコースの4 つのコース
 
・様々なカリキュラムの中で自分のやりたいことを見つけ、将来につなげる
 2020年度の大学合格実績
 東京大学4人 京都大学1人 早稲田15人 慶応16人など
 
・豊富な課外授業
 酪農体験、大学受験対策、ファッション、プログラミング、語学、ダンス、起業、投資、 小説など
 
・中等部も開設
 
○N高卒業生、不登校経験者も8割が進路を見つけた
 不登校の経験がある人も、チャンスを用意すれば進路決定率は変わらないことを実証
・N高出身のスター
 フィギアスケート選手、囲碁の女流棋聖、囲碁の新人王、eスポーツ金メダル、国際情報オリンピック銅メダル
 
・教員の1割をリモートワーク雇用に シングルマザーに新たな働き口を
 
 
 
子どもの尊さと子ども期の保障 増山均
 
・コロナ禍の最も深い危機は自由なコミュニケーションが奪われた人々、特に子どもたち の生活と発達の危機
・マスクで口元が見えず、表情が読み取れないことは、人間として成長していくための、 最も重要な基本的プロセスが奪われている
 
・3密の禁止と「ソーシャルディスタンス」を厳しく守らせるという生活は、子どもが子 どもでなくなること、人間になれないことを意味する。
 
<学校は何をするところか>
・休校措置は、何よりも子どもたちの「生存権の土台としての学習権」を失わせ、教育を 受ける権利を奪うことになる重大な措置であった。
 虐待的・放任的な環境にいる子どもの保護機能(保健室、給食、安全地帯)
 子どもの発達と文化の権利を保障する場所(校庭、体育館、図書室)
 
<子どもの権利条約> 6つの権利性とそれを保障する6つの育
1 生存権 療育
2 生活権 養育 くつろぎ安眠できる住居と食事・衣服が用意され、快適な生活
3 学習権 教育
4 遊び権・文化権 遊育
5 更生権 甦育
6 自治権・社会参加権 治育
 
・日本の学校は、教育以外の育の位置づけに弱点があり、特に遊育、甦育、治育の視点が 弱い
 
<子どもによく説明すること>
デンマークのフレデリクセン首相 子ども向けのオンライン会見で「外で遊んでも大丈夫ですか」質問に一つ一つ答える
ノルウェーのソールバルグ首相 子ども向けの記者会見
 
<コロナ禍でいま何が問題か>
・子どもの発達と人間的コミュニケーションの危機
・密接・密着・密集こそがヒトを人間にし、人間性を育み深めていく源泉
・子どもたちにとっては何よりも「遊び」を取り戻すことが突破口に
 
・遊びが子どもにとって不可欠の権利であることは、児童憲章9条や国連の子どもの権利 条約31条に明記
 
2018.3 東京目黒区で5歳の女児が虐待で死亡
「ゆるしてください…これまでどれだけあほみたいにあそんだか、あそぶってあほみたいだからやめる もうぜったいやらないからね」
 
・死ぬほど遊んだ子ども時代が「人生を切り拓く源泉になっている」(山下雅彦)
 
・親子と子どもの生活の中でストレスが高まっている時代、子どもの健康な育ちにとって 必要なのは「のんびりする時間」や「気晴らしの時間」であり、大人によって価値づけ られない時間の保障である。
 
<子どもたちの声を聞かねば本当のことはわからない>
・声なき声に耳を澄ますこと
 子どもの意見表明は言葉だけではない
 
<居場所を失う子どもたち>
日本の子どもたちが抱える「心の不安」「心の拠り所の喪失」は、日々の生活の中に自分の役割がなく、自信が持てず。孤独感を抱いているところから生じている。
 
<子どものまち>千葉県佐倉市2002年から継続開催
・子どもたちで模擬的なまちを運営する。
 商店、市役所、銀行、警察署、清掃局など公共部局も設置され、子ども自身が協力しながらまちを機能させていく。
 子どもが役割を持って仕事に取り組みながら、自治的にまちの機能を運営し、社会の仕組みや仕事を体験できる。
 
<要町あさやけ子ども食堂>
・子どもが内面の苦悩を表出できるようにする最も良い方法は、遊びを重視することが大 切
・子どもたちが思い切り身体を動かし、心を解放できたときに、心の内にある思いや願い が顔をのぞかせる
 
 
子ども白書 2020
<声を上げる子どもたち>
・茨城県では県内全ての県立高休校を求めて日立一校の3年生有志がストライキ、全校休 校へと県の方針を転換させた
・一部の学校休校に伴う教育格差の拡大や感染拡大の防止、十全な学校生活の保障を求め て高校生がツイッターで「9月入学」を要請、これがきっかけで国政でも9月入学が検 討された。
コロナ禍で障がい者権利条約策定時に掲げられた「私たちのことを私たち抜きで決めないで」という合い言葉の重要性を、子どもについても痛感
 
<子どもたちの生活への多大な影響>
*生活リズムの乱れ
 朝起きても行くところがない、することがない、友だちと会えない、遊べない
 質の良い睡眠がとれない、ゲーム依存→睡眠リズムの乱れ
 1日何かを食べている→体重増加
 
*心の成長への危惧
 卒業式、入学式、集団生活を経験することは、教育だけでなく、子どもたちの心の成長 を促す。その積み重ねが思春期の自己を組み直す作業に欠かせない
 
*ゲーム障害激増の危惧
 2019年に新たな疾患として認定されたゲーム障害激増の危惧
 
<PTSG(Post Traumatic-Stress Growth=心的外傷後ストレス成長)>
・苦しいときこそ、成長の機会になる
・パンデミック後の変革
 
○平成30年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸問題に関する調査結果(文 科省HP)
 2018年度30日以上欠席した不登校
 小学校4万5千人(在籍児童数の1.3%) 中学校12万人(4.8%) 
・不登校の要因を分類・区分化
 
○教育機会確保法(2016年公布)
・不登校児童生徒の休養の必要性を認め、学校以外の場で様々な活動を行う民間の団体と学校教育の関係者が連携し、すべての子どもたちの教育機会の確保を目指すという理念が示されている。
 
<学校をつくるという選択肢>
新しい学校を作ろうとする動きが全国で相次いでいる。
・広島県教育委員会
 2019年に「個別最適な学び担当」を設け、オランダで普及しているイエナプランを一部の公立小学校に導入していく方針を表明
  ↓
福山市がイエナプランに基づく公立校を2022年に開こうと準備
・名古屋市も2018年「公教育の構造転換」を掲げ、画一的な一斉授業から「一人ひとりの子どもを大切にした教育の実現のために、個別化・協同化プロジェクト型学習」への意向に取り組み始めている。
・私立の動き
 高知県いの町に森の小学校をうたった「とさ自由学園」
 長野県佐久穂町に国内初のイエナプランスクール認定校である「大日向小学校」が開校 長崎県東彼杵町のながさき東そのぎ小学校
 軽井沢風越学園
 北海道道沼町「自由な小学校」
 
・「自由」を掲げていることが特徴
 一日のスケジュールは用意されているものの、学ぶ時間や内容は子どもたち自身が決める
 
<夜間中学は社会の宝>
・2015年7月の文科省通知で、中学卒業証書をもっていても不登校で学ぶ機会がなかった場合は夜間中学に入学できるようになった。
 
・不登校生「一番困るのは何割引が理解できないこと」「バイト先で反省文が書けなかった」「必要な資格が取れない」
 
<グレタさんを生んだスウェーデンの若者参画社会>
・スウェーデンは若者が社会参画する国として知られている
・スウェーデンには若者が社会参画する場が多用に存在し、それを応援する若者政策が整備されている
 学級会ではクラスの環境について、給食委員会ではランチのメニューについて、生徒会では学校全体のことについて生徒が意見を伝え、それが環境改善に活かされる
 
・若者団体の活動が盛ん
 国や自治体の助成金
・子どもオンブズマン
 
 
子ども白書 2021
 
<データが語るコロナ禍の子どものからだと心>
2019年3月国連子どもの権利委員会が示した「日本政府第4・5回統合報告書に関する最終所見」
・社会の競争的性格により子ども時代と発達が害されることなく、子どもが子ども時代を 享受することを確保するための措置をとることが勧告された。
・過去3回の勧告では「教育制度」に限定していた問題の原因が「社会」にまで及んでい る、また「発達」だけでなく「子ども時代」の問題にも言及されている
 
・2020年の児童生徒の自殺者数が2019年より140人増えて479人で過去最多
 
・虐待の疑いがあるとして全国の警察が児童相談所に通告した18歳未満の子どもは前年より8.9%増加して10万6960件