議席番号4番、守岡等です。
 私は令和元年度上山市一般会計補正予算(第6号)債務負担行為の補正について,反対の立場で討論を行います。
 私が温泉健康施設の建設に反対する第一の理由は、市民の理解が培われていないということです。私たち日本共産党が行った住民アンケートでも、あるいは最近市民有志から寄せられたアンケートをみても、7割〜8割近い方が温泉健康施設建設に疑問の声を上げています。また、市民との対話の中でも同様の声がたくさん寄せられています。
 人口減少のもと本当に必要な施設なのか、未来の子どもたちに負債を残したくない、将来的にお荷物になることは眼に見えている、中心街の活性化につながる事業にすべきだ、限られた財源はまず高齢者福祉に回してほしい、などなどどれも上山市の将来を憂う切実な声ばかりです。
 こうした真摯な市民の声に耳を傾け、最も基本である市民要求の把握という原点に立ち戻り、計画の再構築が必要であると考えます。
 
 反対する第二の理由は、この事業が著しく本市の財政を圧迫し、将来の発展を阻害するということです。
 地方自治体の財政状況を判断するいくつかの指標がありますが、まず財政の弾力性をはかる経常収支比率についてです。平成30年度決算では前年度を3ポイントも上回り、95.2%と大変硬直化した状況にありましたが、これが令和5年には99.8%と、自由に使える財源はほとんどない状況に陥ります。
 こうした硬直化した財政の下で、仮に今起きているパンデミック、新型肺炎の流行が起きたらどうなるか、高齢者などリスクの大きい方への援助、緊急避難所の設置、観光施設への支援、ひょっとしたらワクチンの確保、医療費の圧迫など、他の自治体では機敏な対応ができているのに,本市では財政的問題でできないということも起こりかねません。
 ふるさと納税があるから大丈夫だという意見もあります。しかし、ふるさと納税というのは確実性の乏しい寄付金です。こうした不確実性の原理の下に、上山市の財政を委ねることは市民の生活に責任を負うものとして決して許されないことではないでしょうか。
 財政状況を判断するもう一つの指標として債務償還可能年数というものがあります。上山市の債務償還可能年数は10年を超えており、要注意自治体というイエローカードを出された状態で、14年を超えると危機的状況になっていることを示す指標です。
 しかし今、資産老朽化比率が50%を超える中、公共施設の維持・更新も大きな課題になり、今後40年間に1,140億円必要になります。もちろんすべての公共施設を維持・更新することは不可能で、今後厳密な査定が行われると思いますが、それでも数百億円の財源が必要になります。よほど厳密な債務管理を行わなければ,あっという間に危機的自治体に陥ってしまいます。
 このように総務省や財務省から出されている指標からみて、温泉健康施設建設事業は財政的に大きな問題があると判断し、反対するものです。
 
 温泉健康施設に反対する第3の理由は、市民の健康寿命の延伸を考えた場合、ハード的な施設を整備することよりも、ソフト的な地域に根ざした地道な保健活動を強化する方が有効だと判断したからです。本市の死亡率の最も大きな要因になっている呼吸器疾患、肺炎や肺がんを減らすにはどうしたらいいか、他に例を見ない喫煙率の上昇にどう歯止めをかけるか、糖尿病の重症化を減らすにはどうしたらいいか、こうした本市固有の課題に対し、やはり対象者一人ひとりにきめ細かいアウトリーチを行い、それぞれの状況に応じた改善プログラムを示していくことが最も有効的です。健康長寿で有名な長野県のいくつかの自治体を訪問しましたが、医師や保健師を中心に、そうした地道な地域医療・保健活動が活発に行われています。
 すでに市内のいくつかの地区で健康づくりのモデル事業が行われ、近年は各地区で百歳体操が取り組まれ、地域における保健・介護予防活動が前進してきています。こうした地域活動を大きく飛躍させることが今後の健康寿命の延伸につながるのではないでしょうか。
 16億円という対費用効果を考えた場合、10年、20年後の市民の健康づくりに思いをはせた場合、やはり箱物・温泉健康施設による健康づくりではなく、地域に根ざした保健・予防活動の強化を図るべきだと考えます。
 
 こうした理由から債務負担行為の補正に係る本議案に反対するものです。議員各位のご協力をお願い申し上げて討論とします。