議席番号1番、日本共産党議員団の守岡等です。私は人口減少・少子化対策を強化させる視点から、福祉によるまちづくりについて質問させていただきます。
2014年5月に出された日本創生会議によるわが国の総人口の将来推計に関するレポート、いわゆる「増田レポート」に大きな衝撃を受けた方もたくさんいらっしゃると思います。このレポートは、若年女性の減少に基づいて2040年、今から25年後には全国で1,700を超える市区町村のうち896自治体が消滅の危機に直面すると警告し、上山市も消滅自治体の一つにあげられています。私はこのレポートの手法・内容のすべてを受け入れるものではありませんが、国や自治体が人口減少・少子化対策に本腰を入れるようになった契機になったものとしては高く評価したいと思います。
人口減少・少子化対策が大きな課題になる中、地方創生がうたわれ、国に「まち・ひと・しごと創生本部」が設置され、本市においても「上山市まち・ひと・しごと創生総合戦略」が示されました。そして「第7次上山市振興計画」の重要課題としても議論が進められています。この取組を必ず成功させ、上山市の未来を切りひらいていくために、議員の立場から市民の声を積極的に受け止め、具体的な提案を行っていきたいと考えます。
人口減少・少子化対策を進めるに当たっては、若者が安心して職に就き、安定した収入を得て、平和裡のうちに生活することが何よりも基本に据えられるべきだと考えます。しかし、国の方では地方創生を言いながら、一方では派遣労働者の拡大など不安定雇用を増大させ、それに伴う格差・貧困の拡大、さらには戦争する国づくりの推進など、若者から次々と未来と希望を奪う政策を続けているとしか思えません。少子化対策を勉強する中で、次の言葉に出会いました。「少子化は様々な要因が複雑に絡み合って起きるが、最大の理由は現代文明の行き詰まりを予想させる不安感の広まりであろう。人間は将来に不安を抱いた途端、本能的に子孫を残そうとは思わなくなる」というものです。まさに現状を言い表している言葉ではないでしょうか。逆に言えば将来不安を取り除き希望を切りひらくことが、何よりも今の政治に求められているのではないでしょうか。
ここで、福祉の産業化でまちの活性化を図った最上町の例を紹介します。
最上町は厳しい環境の下で貧困・過疎をはじめ、全国に先がけて高齢化の問題に直面した町でした。
そうした地域をいかにして過疎克服を目指し、福祉の町にしていったか、私は1999年に当時の町長だった中村仁さんにお会いし話を伺う機会がありました。何よりも中村元町長や最上町の理念として位置づけられているのが、「福祉こそ産業だ」ということです。そして「福祉は町村行政の原点である」という言葉です。こうした理念の下、今ではあたりまえになっている医療・保健・福祉の一体化に取り組み、ウエルネスタウンというハードウエアとソフトウエアの整備を図りました。
こうした福祉の産業化により何よりも雇用の確保が図られました。当時の最上町の保健・医療・福祉関連従事者は約300人で、これは町全体の就業者数の5%、町役場の職員の1.4倍という数字です。こうした雇用の充実が様々な面で経済効果を生み出しました。まず医療・福祉に携わる職員の給与総額が約14億4,000万円、関連施設での地元購入消費額が約2億7,000万円、その他宿泊・観光など間接的効果と合わせ年間約17億3,600万円の経済効果があったと試算されています。これは米の販売額15億円、国民年金15億4,900万円を上回る額で、最上町においていかに福祉が町の産業の中心になっているかを示していると思われます。
そして、そうした医療・介護施設の整備は過疎化対策にも貢献しています。最上町には県立新庄北高校最上分校がありますが、そこでは1995年から選択科目として福祉課程の授業が行われ、それが一つの契機となり地元卒業生の定着や短大や専門学校に進学した子どもたちが、福祉関係の資格を修得して町へ戻っていることにつながっているそうです。最近では一般の方の参加も可能にし、より介護関係の資格取得に役立っているとのことです。
さらにこうした福祉のまちづくりは、町内業者の所得増、社会的入院の解消による医療費の軽減、視察等の増加による観光客の増加、町外からの移住希望者増といった様々な複合的な効果を生み出しています。まさに地域で福祉関連サービスを充実させることは、地域経済の安定や活性化に貢献し、人口減少・少子化対策の基本となり得ることを示しています。
こうした最上町の取組を教訓にして、上山市で福祉によるまちづくりを行うにはどうしたらいいのかを考え、寝たきり老人ゼロ作戦の展開を提案します。今当市には、寝たきりの方とそれに近い状態の方を合わせ672人がいるとう統計が出されています。私自身、人間は年をとれば寝たきりになるのがあたりまえだとしばらく思っていましたが、しかし、「寝たきり」は「寝かせきり」であること、人間は一定のケアや社会参加を促す中で寝たきりを防ぐことが可能になっています。
この「寝たきり老人ゼロ」という概念は、広島・みつぎ総合病院の医師が「せっかく病院で一生懸命治療して治しても、退院して地域に戻ったらしばらくすると寝たきり老人になって戻ってくる」ということを問題視し、病院と地域の介護がきちんと連携をはかって寝たきり老人をゼロにしようというところから生まれたものです。
当市においても、本来であれば、保健・医療・介護・福祉の連携の中で、病院を退院した患者さんが地域の中で必要なリハビリや介護サービスを受けながら、寝たきりにならないような包括ケアが望ましいところですが、市立病院を持たず、さらにお隣の山形市の病院を受診する患者さんが多いという特色を持つことから、十分把握しきれないというのが現状ではないかと思います。
そうした特徴を持つ当市において寝たきり老人をゼロにするためには、現在寝たきりになっている方々の要因分析を行うことが重要です。なぜ寝たきりになっているのか、どのような支援が必要か、約200人いる日常生活自立度ランクCの方たちの要因分析を行い、必要な対策を講じていくことが必要だと考えますが、市長の御所見をお示しください。
次に温泉活用で閉じこもり予防の強化についてです。
寝たきりになる要因として脳卒中や転倒が主要なものとして考えられてきましたが、最近は「閉じこもり」の問題がクローズアップされています。閉じこもり予防を展開する上で通所型介護予防などが行われていますが、なかなか男性に魅力のある事業メニューが乏しいという意見が出されています。男性の高齢者が楽しく、気楽に参加できるメニューとしては、温泉の活用が最適ではないかと考えます。寝たきり老人ゼロ作戦を展開する一つの柱として、温泉活用による閉じこもり予防対策の強化を図る必要があると考えられます。すでに当市においても温泉を利用したデイサービスなどが行われているようですが、今後さらに建設が検討されている温泉健康施設において、寝たきり老人ゼロ作戦の視点から、温泉を利用した閉じこもり予防の事業を行ってはいかがでしょうか。市長の御所見をお示しください。
次に特別養護老人ホーム増設による待機者ゼロ作戦の展開についてお伺いします。
特別養護老人ホームなど介護サービスを充実させ、特養待機者ゼロ作戦を進めると同時に雇用の確保など、一定の経済効果をつくり出すことです。
いま、当市の特別養護老人ホーム入所待機者は300人で、うち在宅で待機している方は140人、緊急性のある方が30人います。少なくとも、在宅で待機している140人に対しては、早急に整備していく必要があると考えます。
特別養護老人ホームの建設にあたっては、保険料の高騰など様々なリスクが存在します。しかし、そうしたリスクを上回る次のようなメリットが存在することも事実です。
第一に介護の社会化を図ることができるということです。結局家族にしわ寄せがきている現状を改め、施設増設によって介護の社会化を図ることは要介護者にとっても、家族にとっても重要なことではないでしょうか。毎月のように介護悲劇が報道される中、介護施設の整備を図り、少しでも家族の負担を軽減していく必要があるのではないでしょうか。またそのことは、介護の必要性から仕事を辞めざるを得ないという事態も軽減することができます。国の1億総活躍社会への具体策を議論する国民会議(議長・安倍晋三首相)でも、2020年代初頭までに介護離職する人をなくすため、特別養護老人ホームや在宅サービスの整備を加速する方針を表明しています。
第二に、最上町の例にもあるように、施設などサービス提供体制の新増設は、雇用を産み出し若者の定着にも大きく貢献し、一定の経済効果も生まれるということです。
第三に、都会の高齢化問題が深刻になる中、将来的には少なくとも上山市出身の高齢者を受け入れる必要性も出てくるのではないかと思います。すでに他市町村でそういう話がきていることを耳にしています。都会の高齢者を受け入れるためには、医療費・介護費用の負担の問題などクリアすべき課題は多いのですが、将来課題として準備を進めておくことは必要なのではないでしょうか。
第四に、空き家対策にもつながるということです。すでに国の部会では空き家・空き旅館を利用した施設整備の構想も出されているようです。当市においても民間団体による空き家を利用した高齢者住宅の取り組みが開始されています。
このように特別養護老人ホームの整備を図り特養待機者ゼロ作戦を展開することは、福祉の向上、雇用対策、将来対策につながる重要かつ有効な課題であると考えますがいかがでしょうか。市長の御所見をお示しください。
次に保育料無料化による経済負担の軽減についてお伺いします。フランス、スウェーデンなど出生率を向上させたヨーロッパ諸国に共通していることは、子育ての経済負担を軽減させたということです。国内でも有名な福井県など経済負担の軽減で出生率を向上させた自治体がたくさんあります。当市でも子どもの医療費無料化が中学3年生まで拡大され、市民からは大変喜ばれています。今後、当市において真剣に少子化対策を進めようと思うならば、保育料の完全無料化を進めていくべきだと考えます。多くの夫婦が子どもは3人以上ほしいと思っていても、実際の子どもの数が2人以下である最大の理由に経済的負担の大きさの問題があります。そうした経済負担を軽減するために地方行政ができることは何よりも保育料の無料化ではないでしょうか。
若いお母さんたちと話をして必ず話題になるのが保育料の問題です。保育料が無料になるということは、単に家計が助かるということだけでなく、行政がきちんと子育ての問題に対処している、行政に対する信頼度のバロメーターだということです。保育料無料化に向けた市長の御所見をお示しください。