一般質問の要旨  (平成29年6月)

質問者 議席番号 1番  守 岡  等  議員

 


1 長期的視野に立ったまちづくりについて

(1) 立地適正化計画の作成

   国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」によれば、上山市の人口は平成27年度の31,906人から平成31年度には3万人を割り、平成55年度には2万人を切ると予想されています。

   さらに平成23年2月21日に出された国土交通省「国土の長期展望」中間とりまとめによれば、2050年までに国土の7割近くの地域・エリアで人口が現在の半数以下になり、上山市のほとんどのエリアが含まれていることが報告されています。

   こうした超高齢化・人口減少社会はどのような社会になるのでしょうか。地域における空き家・空き店舗が広がり、住んでいる人も老老世帯や一人暮らし世帯が中心になります。地域の高齢化率が今後40%を超え、車を運転できない人が増え、買い物など日常生活に困難を抱える人が増えます。また、今以上に医療や介護が必要になりますが、医療従事者・介護従事者が不足し、市民ニーズとは正反対に医療機関や介護事業所の閉鎖が進み、必要な医療・介護サービスが受けられない事態も予想されます。

   人口減少によって税収も減り、生活する上で最低限必要な道路・上下水道・エネルギー供給など、生活基盤インフラも崩壊する地域がたくさん出るのではないかと思われます。

   こうした中、「コンパクトシティ・プラス・ネットワーク」として推進するため、平成26年に国土交通省より、都市再生特別措置法等の一部を改正する法律に基づき、市町村が立地適正化計画を作成することについて示されました。立地適正化計画は、市町村マスタープランの高度化版とみなされ、将来の人口減少社会を見据えたまちづくりを具体化するもので、関係する諸計画と連携して作成されるものです。

   具体的には、無秩序に拡大し、空き家が増え、核家族化で家族の人数が減少してしまった市街地や居住地において人口密度を維持することにより、生活サービスやコミュニティが持続的に確保されるように居住を誘導すべき区域を居住誘導区域とし、その区域内に行政・商業・教育・医療・福祉などの都市機能を都市の中心拠点や生活拠点に誘導し集約することにより、これらの各種サービスの効果的な提供を図る区域として都市機能誘導区域と定め、数十年後にはコンパクトなまちづくりができるように、今からそれぞれのエリアに区分していく取組みを言います。

   すでに県内では、鶴岡市・長井市・酒田市・寒河江市・中山町が立地適正化計画の作成について具体的な取組みを行っており、うち鶴岡市が計画を作成し、居住誘導区域・都市機能誘導区域を設定しています。

   私は、上山市が未来永劫存在し、市民の基本的人権を維持していくためには、一定の居住・都市機能の集約化を進めて行く必要があると考えています。

   本市の中期的な計画を示す「第7次上山市振興計画」においても、「少子高齢化に対応し、集約型都市構造を目指し、拠点性の高いコンパクトなまちづくりを推進します」とありますが、この方針に則って、具体的な居住と都市機能の集約化を図る立地適正化計画を作成していく必要があると考えます。

   人口減少時代のまちづくりの中心になるのが土地利用・住宅政策です。今すでに、市街地の低未利用地の増加、中心部の空洞化等による賑わいの喪失が大きな課題となっています。

   老老世帯や一人暮らしの方が、どうやって安心して暮らしていけるか、外出機会がますます減って健康への影響が懸念される中、介護が必要な状態になったらどうすればいいか。多くの方たちが大きな不安を抱えています。しかし、たとえ一人暮らしになっても安心して暮らせる地域をつくることが今後の大きな課題になるのではないでしょうか。

ア 居住誘導区域、都市機能誘導区域の設定

   今後、人口が半減し、空き家・空き地が増えることは必至ですが、中長期的スパンでまちの再編を考えていく必要があります。たとえ全体の人口が減っても、政策的な誘導で中心市街地等の人口密度を維持し、生活サービスやコミュニティを持続的に確保することは可能です。

   これから本市のまちづくりを進めるに当たっては、一極集中型のコンパクト・シティではなく、市内の商店街及び新興住宅地などいくつかの拠点を中心にしたまちづくりが求められるのではないでしょうか。そのために、市内の各拠点を居住誘導区域と定め、空き家・空き地への公営住宅の移設と合わせ、新たな住まいが徐々にまちなかに集約される仕組みをつくる必要があります。

   こうしたまちの再編は一朝一夕にできるものではありません。住宅の建て替え期は30年から40年であり、減価償却による資産価値も22年間でゼロになります。そうしたサイクルを基本にして、居住誘導区域を設定し、長期スパンで集約化を図り、人口密度を維持する必要があると考えます。

   また、今後、高齢化が進む中で、車を運転できない「交通弱者」が増えてきます。現在でも、医療機関やスーパーなどが近くにないため、移動で不便を感じている方がたくさんいますが、ますますその傾向が顕著になります。

   こうした問題を解決するためには、歩いて暮らせるまちづくりを進めることです。これまでは車による移動を前提としたまちづくりが中心でしたが、人口減少・高齢化社会では「歩いて暮らせるまちづくり」の視点が重要になってきます。そのためには、市内のいくつかの拠点を都市機能誘導区域と定め、行政関係、医療・福祉、日常生活関連の店舗などを、長期的スパンで集約化を図る必要があります。こうした取組みは、商店街の活性化にもつながるのではないかと考えます。

   立地適正化計画による居住誘導区域と都市機能誘導区域を設定し、人口密度の維持と歩いて暮らせるまちづくりを進めることについて、市長のご所見をお示しください。

(2) 高齢者向け共同住宅と子育て世代向け戸建て住宅の整備

 今後、まちの再編を進める際には無計画に進めるのではなく、ライフサイクルに応じた計画・機能的な住宅政策が必要になります。

   高齢者については一人暮らしや老老世帯が増えています。当然、医療や介護が必要な方も増えてきます。これからの医療や介護は入院や施設を中心としたものから、在宅医療・在宅介護・在宅看取りを中心とする地域包括ケアシステムが中心となる中、高齢者が一番安心できる住宅は、一定の共同性があり、必要な医療や介護サービスが受けられるものです。そのためには身近に医療機関や介護事業所がある高齢者の集合住宅を整備することです。

   また、子育て世代の住宅は一定の広さが必要であることから、空き家のリフォーム補助のさらなる充実など、戸建て住宅の整備を図っていく必要があります。

   今後の「湯ったり健康かみのやま21行動計画」や「介護保険事業計画」、「中心市街地活性化基本計画」等をつくる際に、そうした住宅整備の方向性を盛り込み、社会福祉法人等と協力して具体化を図る必要があるのではないかと考えます。市長のご所見をお示しください。

(3) ICTの活用

ア 専門部署の設置

    今、ICT(情報通信技術)やAI(人工知能)といった技術革新が進み、第四次産業革命ともいわれています。人口減少時代において、労働力や生産力の低下を補い、これまでの生活や各種サービスの水準を維持するためには、こうした技術革新にもとづくまちづくりを進めていく必要があります。

     すでに後述するような各分野におけるICT化が全国的に進められていますが、かなり専門性を有する分野であり、本市においてそれぞれの分野でICT化を進めるために、専門の部署を設置し、そこに専門知識を有する総括的な責任者(CIO:chief information officer)を配置し、さらに関係する各課にその補佐役を配置してICT化を進めていくことを提案します。市長のご所見をお示しください。

イ 農業分野

    上山市の基幹産業である農業分野は、今後農業従事者の高齢化が進み、担い手不足、耕作放棄地の増加、生産農業所得の低下などますます深刻になることが予想されます。

     農業分野の課題としては、担い手をどう確保・育成するか、熟練農家の高い生産技術をどう引き継ぐか、生産性をいかに高めるか、消費者ニーズとの適合性をどう図るか、といったことがあげられます。こうした課題を達成するために、いま以下のような農業のICT化が急速に進められていますが、本市においてもその有効活用が求められています。

まず、GPS自動走行システムについてです。GPS自動走行システムによって、農業機器の夜間走行や自動走行が可能になり、大幅な作業量の省力化を図ることが可能になり、担い手不足を補うことができます。

2番目にネットワークカメラの導入です。ネットワークカメラの動画情報を解析することにより、農作物の成長・状態管理、肥料や農薬の散布量の最適化、収穫時期の最適化などが図られます。畜産業においてはサーモグラフィーを使用することにより家畜の体温状態を把握したり、移動検知システムで家畜の運動量や行動の分析など健康状態の管理が容易になり、管理コストの削減が図られます。

3番目にアグリドローンの導入です。 アグリドローンという、自動飛行機能を搭載したドローンを飛ばし、上空から農地をデジタルスキャンニングしてデータの蓄積を行います。蓄積されたビッグデータを解析して、病害虫の早期発見や生育管理を手軽に行うことが可能になります。また、作業用途に合わせてピンポイント農薬散布や害虫駆除など様々なオプション機能を搭載することで、人材不足の解消と効率的な農作業を実現します。また、すでにカラスの駆除に使用している自治体もあるようです。

4番目にデータのクラウド化についてです。ドローン、IoT、ウェアラブル(身につけられる)端末を活用し、あらゆるデータをクラウドに蓄積し、そのデータを解析して病害虫の早期発見や育成管理が行えるようにして、人材不足の解決と効率的な農作業を実現します。農業が直面している人手不足を解決すべく、時計やめがねと言ったウェアラブル端末を活用し、遠隔指示による技術指導が行えるようになります。

5番目にロボットの導入についてです。アシストスーツで収穫物のつみおろしなどの重労働を、アシストスーツで軽労化するほか、除草ロボットにより作業を自動化することができます。

6番目に消費者と安全・安心を共有することについてです。クラウドでデータを共有することにより、野菜の生産から消費まで、すべての工程を可視化し、消費者と「安全・安心」を共有することができるようになります。

    このように、担い手不足の解消や作業能率の向上などにおいて農業のICT化は必須の課題となります。市長のご所見をお示しください。

ウ 教育分野

    教育分野におけるICTの活用は、子どもたちの学習への興味・意欲を高めるとともに、わかりやすい授業や「主体的・対話的で深い学び」を目指す上でも大きな効果をもたらすと思われます。さらに他の学校や家庭との連携、人口減少地域における遠隔教育が可能になるほか、特別な支援が必要な子どもたちにとっても、その障がいの程度や発達に応じた指導において、有用なものとなるに違いありません。

まず、ICT化を進める環境整備です。教育分野におけるICT化を進めるためには、何よりも環境整備を図る必要があります。いま山形県の教育用コンピュータの1台あたり児童生徒数は5.5人(全国平均6.2人/台、平成27年度文部科学省)となっています。超高速インターネット接続率は81.6%(全国平均84.2%、平成27年度)です。今後、電子黒板や実物投影機(書画カメラ)、タブレット型端末機とあわせ整備を図っていく必要があると考えます。

2番目に支援員、CIOの配置です。教育分野におけるICT化をスムーズに進めていくためには、少なくとも教育委員会にCIO(最高情報責任者) 、各学校にICT支援員を配置して、教員のICT活用指導力向上など各学校における具体的な取組みを進めていく必要があります。

3番目に有害情報から子どもたちを守る取組みです。ICTの普及と共に、インターネットによる犯罪被害や生活の乱れなどが大きな問題になっています。そうしたICT化の負の側面についても子どもたち・保護者の情報モラルについての理解を培い、ICTの正しい活用について不断の学習を行っていく必要があります。

4番目に校務の情報化です。いま、学校の先生は非常に忙しく子どもたちとふれあう時間が少ないどころか、過労死基準を上回る労働時間の事例も報告されています。教員の校務の負担を軽減し、教員が子どもたちとふれあう時間を増やしたり、教員同士の交流を図るためには、校務の情報化を図る必要があります。教育クラウドを整備し、学籍・出欠・成績・保健等の管理や、教員間の指導計画・指導案・デジタル教材などの様々な情報を共有し、そうした入力業務を学校クラークを整備することによって、教員の校務負担を軽減することができるのではないでしょうか。これら教育分野でのICT活用について、教育長のご所見をお示し下さい。

エ 介護等分野

    今、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年を見据え、医療病床や介護施設では対応しきれなくなる患者・要介護者を、在宅医療・在宅介護・在宅看取りで対応する地域包括ケアシステムへの移行が図られています。

     人口が半減する中、2025年度の介護保険利用者は今の1.5倍になることが予想される一方、介護従事者の不足は今以上に深刻化することが予想されます。こうした中、厚生労働省も介護業界のICT化推進は国の重要施策として、いくつかの提言を行っています。

まず、情報の共有です。介護記録の入力が、ヘルパーにとって大きな負担になっています。これをスマートフォンやタブレットを使っていちいち事業所に立ち寄らずにその場で入力できれば、かなりの負担軽減となります。また、この情報をクラウドによって共有することで、各職種間の連携強化を図るとともに、迅速・適切なサービス提供にもつながります。

2番目に質の高いサービスの提供です。利用者の状況をオンライン動画を通じて情報共有を図ることによって、組織全体でケアをすることができ、介護力の向上やヘルパーの不安払拭を図ることができます。

3番目に見守りセンサーです。一人暮らしの高齢者宅に見守り装置と赤外線センサーを設置し、生活状況の把握、睡眠状態の確認、転倒防止・発見等につなげています。遠方に住む家族もパソコンを通して確認することができるそうです。

    また、GPシューズという、小型GPSをシューズの中に設置して、認知症高齢者の位置が把握できるグッズもあります。

4番目に介護ロボットです。介護業務を支援するロボットとして、車いすからベッドへの移乗をサポートするロボット、排泄物を自動的に処理するロボット、持ち上げや歩行を補助するパワーアシストスーツなどがすでに実用化されています。最近では、要介護者の癒やしや見守りに有効なロボットも開発されており、利用者を認識して呼びかけたり、目覚ましや服薬を促す機能もあるそうです。会話ができるロボットや、ゲームやクイズなどレクリエーションを実施できるロボットもあるようです。

     このように、介護従事者の負担を軽減したり、他職種間での情報の共有、高齢者の見守りなどの多様なICTを活用した取り組みが行われています。ぜひ本市でも取り入れて、介護の質を高めていく必要があると考えますが、市長のご所見をお示しください。

 こうした各分野のICT化を市が率先して進めることには二重の意義があると考えます。第一に、各分野のICT化をばらばらに進めるのではなく、最高情報責任者(CIO)のもとで総合的に進められるという点です。各分野のICT化には共通するものがたくさんあり、クラウド活用など総合的に整備した方が効率的だという側面があります。

    第二に、公的な組織でICT化を進めることによって、その利益が広く享受できるという点です。ICT化を進めることにより、本来は労働時間の軽減が図られ、豊かな人間生活が保障されるはずですが、これまでの技術革新の成果は富の集中化にまわされ、社会全体で享受するものにはなっていませんでした。

    今回のICT化、人工知能の普及によって失業する職種がかなり発生すると指摘する人もいますが、そうした失業社会を招くのではなく、ICT化の利益を全体で享受し、豊かな市民生活を発展させる方向に持って行くことが必要です。そうした視点で本市におけるICT化を進めることを切にお願いして第一問目を終わります。