一般質問の要旨  (平成30年6月)

質問者 議席番号 1番  守 岡  等  議員

 


1 国民健康保険制度の改善について

安心できる医療と介護は、市民共通の願いです。わが国は国民皆保険制度を実現し、国民すべて医療や介護が必要になったら、安心してサービスを受けられるということで、世界有数の長寿国となりました。

   しかし、最近、国保税や介護保険料の負担が大きく、窓口負担の問題とあわせ、経済的な問題で必要な医療や介護が受けられないという事例を経験するようになりました。全日本民主医療機関連合会が平成30年4月に公表した「2017年経済的事由による手遅れ死亡事例調査」では、医療費支払い困難等の経済的事由で治療が遅れた死亡事例が、全国加盟組織で63件にものぼることが報告されています。死亡事例の51%が無職で、非正規雇用や収入が不安定な自営業を合わせると71%にのぼっているということです。

   また、平成28年3月の全国保険医団体連合会の調査では、経済的理由による患者の治療中断が「あり」は40.9%、「未収金の発生」46.8%、「受診回数を減らしてほしいといわれた」60.8%など、重すぎる医療費負担の実態が示されています。こうした状況の下、命は万人に平等であり、「命の沙汰も金次第」ということがあってはならないという問題意識に立って、国保制度の改善について質問・問題提起させていただきます。

    最初に、国保の構造的問題を理解する必要があります。制度発足当初、国保制度は農林水産業者や自営業者が構成員の中心でしたが、平成28年度の厚生労働省による「国民健康保険実態調査」では、無職者が43.9%、非正規雇用などの被用者が34.0%と大きく構成員が変化し、それ故、「年齢構成が高く、医療費水準が高い」「所得水準が低い」「保険税負担が重い」といった構造的な問題を抱えるようになりました。国保加入世帯の平均所得は138万8千円まで落ち込み、平均保険税調定額1世帯あたり額は14万2,908円まで跳ね上がり、所得に対する保険税の割合は10.3%と所得の1割以上を国保税が占める状況になっています。協会けんぽの所得に対する保険料の割合は4.4%であることから、所得が半分の低所得者が2倍以上の保険料率であることが国保の過酷さを示しています。

   こうした構造的な問題に加えて、国が国庫補助率を大幅に削減したことが、高すぎる保険税の根本的な要因となっています。国は昭和59年に、国庫補助率を「医療費の45%」から「給付費の50%」に基準を変えました。一見、補助率が上がったかのような錯覚を覚えますが、給付費は医療費の70%相当ですので、実質の国庫負担は「医療費の45%」から「医療費の35%」へ10%も大幅に削減されたことになります。

これにより、国保税が引き上げられ市民の負担を増加させましたが、さらに国は平成17年に「収納率向上プラン」を打ち出し、それまでの資格証明書や短期被保険者証の発行に加え、財産差押えの強化による収納率向上を方針化し、平成28年度には全国で33万件、差し押さえた金額は1千億円近くになっています。

   また、国保の均等割額は、子どもが多い世帯ほど負担が増す制度となっており、一定の軽減措置はあるものの、子育て支援に逆行するものとなっており、早急な改善が求められています。

   さらに、これまで市が単独事業として行ってきた障がい者や子どもの医療費無料化などに対して、国は医療費増につながるなどとして、国保の国庫負担を減額する措置をとってきました。子どもの医療費無料化は、すでにほとんどの自治体で取り組まれている事業であり、本来であれば国で一般化すべき制度ですが、平成30年度より小学校就学前までの部分については減額調整をやめることになりました。

   こうした国が改善すべき問題については全国知事会や市長会でも要望されており、ぜひ今後もそうした方向で運動を強めていただきたいと考えます。

   今回は新制度発足を契機に、国保制度改善に向けて、市としてもできることはないかということで質問・提案させていただきます。

(1) 一般会計からの法定外繰入れ

   厳しい国保財政において、少しでも市民の負担を減らすために、一般会計から国保特別会計に法定外繰入れを行う市町村が増えています。平成27年度山形県国民健康保険事業年報によると、県内では23の自治体で総計6億8千万円におよぶ繰入れが行われています。13市を見ると法定外繰入れを行っていないのは上山市など3市だけになっていますが、その3市は、やはり医療分の保険税が高くなっています。平成27年度の本市の国保加入率は25.1%ですが、市民の4分の1に過ぎない国保加入者に一般会計から繰入れを行うのは、公平の原理からふさわしくないという議論もあります。しかし、国保の構造的な問題にもあるように、現在の国保制度は社会的弱者の医療制度となっています。公費負担が減らされる中、給付と負担の保険原理では限界に来ている制度です。国自身も公費負担繰入れ維持を含めた検討を各自治体の担当者に指示しており、新制度導入後も、国保会計への公費繰入れは自治体でご判断いただくというのが公式な政府答弁です。

   高齢者、低所得者が多い国保制度改善のためには、本市でかつて実施したことのある一般会計からの法定外繰入れを実施し、市民の国保税を引き下げることを提案します。市長のご所見をお示しください。

(2) 国の財政支援の活用

平成30年4月から国保の財政運営が都道府県に移され、市町村とともに国保を管理・運営することになりました。市町村は、これまでと同様、国保税の額を決め、住民から徴収します。一方で、国保の財政は都道府県が管理するようになり、都道府県には各市町村の税の算定方式や集め方、医療給付費の水準について指導を行い、意見を言う権限が与えられました。こうした新制度の下で、本市の国保制度がどうなるのか、どのように改善させるか質問・提案します。

   国保の厳しい財政事情に対し、国は平成27年度から毎年、全国の市町村に消費税を原資として低所得者対策として1,700億円配分することになりました。さらに平成30年度からは後期高齢者支援金を全額総報酬制にすることで浮いた分を原資にして毎年1,700億円が投入されることになりました。そのうち半分は、医療費増大に対する財政支援につかわれる他、残り半分は、保険者努力支援制度によって医療費適正化や保険料収納等に努力した市町村に配分されるということです。こうした3,400億円の財政支援によって国の資料には被保険者一人当たり約1万円の財政改善効果があると記されています。

    この国からの財政支援を活用して、国保税を引き下げ、より安心できる医療体制をつくりあげることを提案します。市長のご所見をお示しください。

(3) 収納率低下時の基金取崩し

   新制度になって、今後、県から示された納付金額7億7,900万円を全額納めなければなりません。これは山形県国民健康保険運営方針における本市の国保税収納率94%を基準にした額だと聞いておりますが、今後、収納率の悪化等により納付金を納められない事態の発生も予想されます。そうした場合に備えて、県の財政安定化基金による貸付制度があるわけですが、これは返さなければならない借金であることに変わりありません。こうした緊急事態にあたっては、本市国保会計に積み立てられている基金の取崩しを優先させ、財政悪化による保険税引上げを防ぐ防波堤にしていく必要があります。本市に積み立てられている国保基金は7億円に達していますが、これは1世帯当たり15万円で、13市の中ではトップです。

   今後この基金をどう活用するか、どのように被保険者に還元していくかが問われますが、新制度が軌道に乗るまでには、緊急時の準備金として保持し、収納率が低下した際にはこれを取り崩し、市民負担が増えない方向で対処することを提案します。市長のご所見をお示しください。

(4) 経済的困難を抱えている人への対応

   国保の都道府県単位化に当たって、保険者努力支援制度が創設されました。収納率をいかに向上させるかを主眼に、実質の保険証の取上げである資格証明書の発行や財産の差押えが強まる恐れがあります。

   本市における平成28年度の国保税収納率は95.0%と非常に高くなっていますが、これは納税意識の高い市民性および担当課職員の努力が反映していると思います。一方で、国保の構造的な問題が示すとおり、1年以上保険税を滞納して資格証明書を発行されている世帯が30件、約200件の短期被保険者証が発行されていることも事実です。

   また、最近は不動産や債権の差押えが行われており、市税全体で平成28年度は121件、約1,250万円の差押えが実施されています。こうした滞納処分は、他市に比べて少ない方だとは思いますが、今後もきめ細かい対応を行い、滞納処分は「払えるのに払わない」悪質なものに限定し、経済的困難をかかえる人と厳密に分けて対応するようお願いしたいと思います。

   こうした経済的困難を抱える人たちに対し、一定の軽減措置が設けられていますが、国保制度の様々な基準が、前年度の所得が基準となっているため、いま現在大変な思いをしている人たちを救済するには至っていないのが現実です。実態に即した国保制度とするために、当該年度の所得減についても「特別の事情」として認め、滞納処分の対象から外すことを提案します。市長のご所見をお示しください。

 

2 保健事業の充実による医療給付費削減について

   高すぎる国保税を引き下げるためには、保健事業を充実させ、医療給付費を引き下げることも重要です。

   国では、医療保険のレセプトや健診結果などを分析し、地域の健康課題を明らかにし、必要な保健事業を行い、さらに検証を進めるデータヘルス計画の策定を呼びかけており、本市においても第2期上山市保健事業実施計画が定められています。この計画を実りあるものにして、市民の健康増進が進み、医療給付費が減少し、国保税の引き下げにつながることを展望して質問・提案を行います。

(1) 高血圧の予防

   まず、本市の医療給付費が高い問題です。平成28年度は13市で2位となるなど、高い水準で推移しています。これまでは近隣市を含めた医療機関の数が多いため、医療機関を受診する機会が多いことが本市の医療給付費高騰の原因だと説明されてきました。しかし、このたびのデータヘルス計画を策定する際のNPOの分析では、本市の特徴として、外来の受診件数が多いこと、重症化してから受診する傾向があること等が指摘されています。

   さらに分析すると、高血圧の治療件数が多く、とりわけ高血圧の薬が医療費に大きく影響していることが予想されます。高血圧の診断基準が年々厳しくなり、収縮期血圧の目標値は、昭和62年180mmHg以下、平成16年140mmHg以下、平成20年130mmHg以下と頻繁に改訂され、その結果、高血圧と診断される患者数と治療薬の投薬量が増え、医療費を引き上げた要因になっていると考えられます。高血圧症の診断および治療に当たっては、現場の医師が高血圧学会のガイドライン等に基づいて行うものであり、その裁量権を侵すことはできませんが、市として今後、軽度の高血圧患者に対して食塩摂取量を減らしたり、肥満度を解消する保健事業によって高血圧の予防や重症化を防ぐことは重要な課題だと考えます。そのために、2つの事項について提案します。

まず、塩分摂取量を減らすことによって、高血圧を予防することは可能です。そのためには市民一人ひとりが摂取塩分量を自覚し、食生活の改善を進める必要があります。尿中塩分測定用キット(ウロペーパーソルト)を使用し、乳幼児健診、公民館行事など様々な機会に尿塩分チェックを行い、生活習慣改善の契機とするとともに、1日塩分摂取量10グラム以上の人への保健指導につなげていくことです。

もう一つは、特定保健指導の対象者に頸動脈エコー検査を実施し、脳梗塞発症前の頸動脈狭窄を発見し、適切な治療につなげることです。また、この事業によって高血圧予防の気運も高まることが予想されます。

   以上、市長のご所見をお示しください。

(2) 肺がん・肺炎の予防

   平成28年において、本市の死因の第一位は悪性新生物(がん)ですが、部位別でみると肺がんが最も多く、死因第5位である肺炎とあわせ、呼吸器対策の強化が必要になっています。山形県医療費適正化計画によると、特に喫煙の問題では、山形県の男性の喫煙率は34.4%で、全国平均の30.2%に比べ高く、このことが肺がん・肺炎の割合が高いことにつながっているのではないかと思われます。

   本市でも高齢者の肺炎対策として、肺炎球菌ワクチン接種に当たって4千円の助成が行われています。平成29年度は2,461人の対象者に対して1,182人、48.03%の接種率となっています。この数字をもっと引き上げることによって、肺炎による死亡、重症化を防ぐことができるのではないでしょうか。このことから、3つの事項を提案します。

一つは、本市の健康課題に肺がん・肺炎対策を位置づけ、データヘルス事業の対象として肺がん・肺炎の要因を分析し、たばこ対策あるいはアスベスト対策などの保健事業を実施していくことです。

二つ目は、禁煙治療にかかる医療費自己負担分の分の1(上限1万円)を市で補助することです。

三つ目は、高齢者の肺炎球菌ワクチンの接種率を100%まで高めるため、現行4千円の助成を7千円まで引き上げることです。

   以上、市長のご所見をお示しください。

(3) 糖尿病の予防

   糖尿病が原因で腎不全を引き起こし、人工透析が必要になる場合があります。新規の人工透析導入患者のうち、4割以上を糖尿病性腎症が占めるそうですが、患者は週3回、一日4〜5時間かけて血液を浄化する治療法で日常生活が大きく制限され、年間200万円以上の医療給付費が必要だということです。

   今回のデータヘルス計画の中心課題が糖尿病の重症化による人工透析をいかに防ぐかということで、糖尿病等重症化予防事業が取り組まれることになりました。医療機関に受診しない人を医療へつなげるための仕組みづくり、医師会と連携した保健指導、糖尿病予防教室がその骨子となっています。

   対象者の選定にあたっては、レセプトデータと健診データの突合が可能になり、これまで以上の精度で対象者が選定され、糖尿病予備群・治療中・治療中断などが明らかになり、さらに腎機能の低下によるハイリスク者の抽出も可能になりました。問題は受診勧奨や保健指導などの介入をどのように行うかです。そのためには、保健師の数を抜本的に増やし、対象者個々のデータに基づいて健康支援プログラムを実施し、糖尿病の重症化を予防していくことを提案します。

   次にこうした事業の効果を検証するために、これまでは受診率や回数、参加人数で評価する仕組みになっていましたが、これからは、医療費の効果や血糖値検査結果の改善など具体的な数値で評価する仕組みに変えていくことを提案します。さらにこうした追跡調査を専門機関に委託して経年的に進め、重症化予防のエビデンスをつくりあげていくことを提案します。市長のご所見をお示しください。

 

3 医療・介護データの連結・解析について

   第2期上山市保健事業実施計画(データヘルス計画)においては、NPOによる綿密な分析が行われているようですが、今後介護費も含めた構造分析によって介護給付費及び介護保険料の軽減が可能になるのではないかと考えます。

   福井県では福井全県の国保レセプト、介護保険レセプト、特定健診データを接合した「総合的パネルデータ」を作成し、介護保険の導入によって社会的入院が減ったこと、介護ニーズに即したサービス提供体制の整備で介護費用を減らし、保険料も減らせること、死亡1年前の医療費や社会的入院を分析した結果、医療費削減や高齢者のQOL(生活の質)の維持の面からも介護施設で対応する方が有効であること、などを明らかにしています。

   日本老年学的評価研究(JAGES)では全国40市町村、30万人のデータを用いて、日常生活圏域ごとに自分たちの地域の課題を抽出できる「地域診断書」などの「見える化ツール」を開発してきました。様々な成果を生み出していますが、たとえば過去1年間で転倒した人の割合と、スポーツ組織に週1回参加している人の割合を、小学校区別に集計し、各々の関連を分析した結果、スポーツ組織に参加する割合が高い小学校区ほど転倒割合が低い傾向にあることを分析し、転倒予防の事業展開につなげています。あるいは、ある自治体の特定健診データと介護保険データおよび介護予防・日常生活圏域ニーズ調査データの突合を行った結果、スポーツや趣味の会への参加者数を増やすことで健康な人を増やせる可能性があることを分析し、5年後の要介護認定率を半分に抑制し、介護給付費も抑制されたという成果を生み出しています。

   こうした事例に鑑み、本市でも専門機関と協力し、医療と介護を有機的に結びつけた分析を行い、健康課題を明らかにする中で具体的事業に取り組み、検証を進めていく必要があるのではないでしょうか。折しも、国の方では、平成32年度から医療と介護のレセプトデータを連結・解析して、効率的な医療・介護の提供をめざす動きが出ています。本市においても率先して医療・介護データの連結・解析を進めていくことを提案します。市長のご所見をお示しください。