一般質問の要旨   (平成30年9月)

 

質問者  議席番号1番  守岡等 議員

 

 

1 上山市空家等の適正管理に関する条例の制定について

(1)空き家・空き地の雑草処理

  人口減少が大きな課題になる中で、空き家問題も深刻化しています。こうした中、国の指針となる「空家等対策の推進に関する特別措置法」が平成27年5月に完全施行となり、本市でも平成28年12月に「上山市空家等対策計画」が示され、平成29年3月には「上山市空家等の応急措置に関する条例」が制定され、すでに40戸ほどの倒壊の危険性のある空き家が除去されているようです。

 本市には現在373戸の空き家が存在し、やがては崩壊の危険性も生じる可能性がありますが、すでに雑草の繁茂も近隣住民の大きな問題になっています。こうした雑草繁茂地は蚊やハチなどの害虫の繁殖地になるだけでなく、雑草の種子飛散による近隣地への影響拡大、ゴミ投棄などの衛生上の問題もはらんでいます。そもそも法で定める危険な空き家「特定空家等」ではこうした雑草繁茂地も対象となっているにも関わらず、全国的には特定空家に該当した事例がないとのことで、手つかずの状態になっています。

 当市においては市民の要請があれば市で所有者に通知を行い、原則所有者の責任で草刈り等を行うことになっていますが、この間市民生活課や建設課に雑草の相談が14件寄せられ(平成29年度)、シルバー人材センターや地元地区会の協力で処理がされているようです。

 しかし、所有者が不明であったり、通知を行っても、所有者が何らかの意思を表示しない場合には雑草を勝手に処理するわけにはいかず、そのまま深刻な事態になっているのが実状です。今後、人口減少が進む中で、そうした事態の発生がますます増えることが予想されます。

 こうした事態を打開するために、本市独自の空き家・空き地の適正管理に関する条例を制定する必要があります。その中で所有者による雑草の除去など管理の義務を定め、雑草処理の責任者は所有者であるという共通認識をつくっていく必要があります。そのうえで、地域の住民や地区会、NPO団体が管理を代替する仕組みをつくっていく必要があります。そして最終的には市長による助言、指導、勧告、命令を条文化し、たとえ所有者が不明であったり、連絡がつかない場合でも、市の判断で雑草の処理ができるようにすることを提案します。市長のご所見をお示しください。

 

2 小中連携教育の推進による学習・生活指導の改善について

(1)小中連携コーディネーターの配置

 小中連携教育の強化が必要とされる背景には2点あると考えます。

 第一に、学習指導の面です。本市の中学生の評価テストの成績分布をみると、山型の分布が望まれる中、近年は上位層と下位層の二極化が進む二こぶ型の分布が見受けられるだけでなく、最下位層が多く分布する魚の尻尾型の分布も見受けられます。特に理数系の教科でその傾向が顕著ではないかと思われます。理数系の教科はとりわけ系統的な指導と理解が求められますが、小学校と中学校で思うような児童生徒の情報や、学習指導における留意点が共有されないまま、系統的な指導がなされずに事態が悪化する場合があるようです。

 こうした課題を解決するために、兵庫県では中学校の教師が小学校に出向き、実際の授業を行う中で小学校の授業の中でどこでどうやって子どもたちがつまずくのかを実際に分析し、中学校の授業に活かして卒業までにつまずきを解決をはかる取組が行われています。兵庫県では「兵庫型教科担任制」という小中連携により、小学校高学年に教科担任制と少人数学習集団の編成を組み合わせて、複数の教員が児童の指導にあたる取組も行われています。

 さらに小中9年間を見通した連携指導計画がつくられ、小学校で積み上げられた学習指導の成果が、中学でもきちんと引き継がれるような仕組みができています。小中連携シート、あるいは小中連携カルテといった個々の情報が整理され、小学校での指導の成果がそのまま中学校でも活かされる制度になっています。

  このように、小中連携教育は系統的な学習指導を進める上で、非常に重要なかつ有効なものになってきています。

 第二に、生活指導の面です。「中一ギャップ」といわれる急激な環境変化にとまどう子どもたちが増えています。小学生の頃にはなかった先輩・後輩の関係、あるいは他校からきた生徒との人間関係、勉強の難易度の高まりや厳しく指導する教師などに対して不適応の反応を示し、最悪の場合不登校になる生徒もいるようです。

 学習指導と同様に、児童生徒についての情報共有化の取組を進め、定期的に担当者会議を行っている淡路市では、不登校出現率を1000人中0.8人まで激減させたという成果をあげています。このほか、小中連携教育による一日オープンスクールで実際の授業や部活動を体験したり、音楽会など合同企画を実施する中で小学校・中学校の溝を埋め、小学生の不安を解消する取組を行うところも増えています。

 こうした小中連携教育を進め、学習・生活指導の改善を図るために、「小中連携コーディネーター」の配置を提案します。

 「小中連携コーディネーター」は、日常的に小中学校、あるいは保護者、地域と連携・調整を図りながら小中連携を推進していきます。

 具体的には、@9年間を見通した系統的・継続的な学習指導方針を作成し、確かな学力を育成する、A9年間の地域に根ざした特色のある教育活動により、自分の住む地域に自身と誇りを持ち、地域に貢献できる人材を育成する、B小学生と中学生の交流を進め豊かな人間性・社会性を育む、C教職員の小学生・中学生一人ひとりに対する理解を深め、個々の状況に応じた指導を実施する、D小学校と中学校の教職員が交流を深めることにより、教職員の資質と指導力の向上を図る、といったことがあげられます。

 小中連携教育を推進し、学習指導、生活指導で効果を上げるよう「小中連携コーディネーター」の配置を提案します。教育長のご所見をお示しください。

 

3.学校における性的少数者に対する対応について

(1)教職員研修と子どもたちの理解の醸成

 性的少数者(セクシュアル・マイノリティ)は一般的にLGBTといわれています。Lesbian女性同性愛者、Gay男性同性愛者、Bisexual両性愛者、Transgender性別違和のある方の頭文字を並べたものです。また、どちらの性を愛するかという「性的指向」と、自分自身がどちらの性と認識するかという「性自認」とは別のものであることから、「性的指向と性自認」Sexual Orientation and Gender Identityの頭文字をとったSOGI(ソジ)という言葉も一般的になっています。

 日本では13人に1人(7.7%)(平成27年電通の研究機関の調査)が性的少数者だとされています。日本人の苗字で多い順に佐藤・鈴木・橋・田中・渡辺がベスト5だそうですがこの五つを足しても全体の6.15%ということで、性的少数者はそれよりも多い、佐藤という苗字の人よりも性的少数者が多いという数字になっています(明治安田生命保険会社2013年)。

 しかし、実際には性的少数者は社会の差別や偏見を恐れて学校や会社においても、親や兄弟に対しても性的少数者であることを告げることができず悩み苦しんでいます。性的少数者は小学校入学前に7割の方が自分の性的違和感を感じていますが、科学的な情報を得るどころか、マスコミではお笑いの対象にされていたり、教育現場でも差別的な用語でばかにされ、自己肯定感を喪失したまま疎外感と孤立感を深めています。

 宝塚大学の日高庸晴教授によるLGBT1万5千人の調査では、学校でいじめに遭った人は6割、自殺を考えた人も6割、自殺未遂をした人が1割を超えたという調査結果もあります。本市においても今年の少年の主張でLGBTの問題がとりあげられたように、けっして人ごとではなく、人権問題として現に存在する課題であることを認識する必要があります。

 性的少数者をめぐっては誤解と偏見をきっぱりと打ち破る必要があります。米国精神医学界では同性愛を1973年に精神障がいから外し、WHO国際保健機関では1992年に国際疾病分類において「同性愛はいかなる意味でも治療の対象にならない」と宣言しました。日本でも、日本精神神経学会が1995年にWHO宣言を尊重する見解を発表しています。つまり、LGBTは病期や障がいではなく、人間の自然な姿の一つなのだということを科学が認めたということです。人を好きになるということは自然な姿であり、それは異性だけでなく同性においてもそうだということです。

 こうした科学的事実にもとづいて、平成27年に文部科学省は、「性的少数者の児童・生徒へのきめ細やかな対応を求める」通知を出しています。こうした中、本市においてもLGBTSOGIに関する教職員の研修会を開催し、正しい知識の習得と悩み苦しむ児童・生徒に思いをはせ、人権問題としてこの問題に対処し、子どもたちの理解を醸成するよう提案します。教育長のご所見をお示しください。