一般質問の要旨 (令和元年12月)

 

 質問者 議席番号 4番  守岡 等 議員

 

 

 

1 豪雨対策について

 台風19号は全国各地に甚大な被害をもたらしましたが、過去最大の24時間降水量を観測した地点が103カ所に上っています。本市において大きな被害は避けられたものの、警戒レベル3に相当する避難準備・高齢者等避難開始が出され、警戒レベル4に相当する避難勧告も出され、実際に避難所に避難する方もいました。

 過去において、本市でも浸水被害が発生し、とりわけ河川周辺の住民は大雨が降るたびに不安を募らせています。特に河川が合流する地帯はバックウォーター現象が生じ、水があふれやすい要因として注目度が増してきています。市内の河川は県の管轄ということで、市としても繰り返し改修・整備を要望してきた経緯があり、その結果、整備・改修は終了したということです。しかし、川底への土砂の堆積や、上流の森林間伐、河川周辺の倒木などは継続的に整備していかなければならない課題であり、今後も引き続き整備・改修を要望していただきたいと思います。

 特に、本市の中心部はかなりの部分が浸水想定区域にあり、雨水の貯蔵や流水路の整備など国や県の協力で抜本的に改善を図る必要があります。

 また、今回の台風19号の豪雨対策に当たっても、本市として対策本部を設置し、必要な勧告を出すなど迅速な対応が図られたと思います。しかし、その中でもテレビのテロップでは市全域が避難勧告の対象だと誤った情報が流されたり、あるいは災害時要援護者支援においても市で策定された計画が、各地区の自主防災組織においては十分具体化が図られていないことが明らかになるなど、今後の改善点も示されました。

 また、実際の水害を想定した罹災証明とそれに当たる職員体制の整備、復旧に当たる職員の勤務・給与体系など、他市の事例を検討する中で整備していく課題もあります。

 全国各地で甚大な被害をもたらした台風19号ですが、台風の進路が少しずれれば、本市にも甚大な被害を及ぼしたであろうことから、しっかりとした豪雨対策を取ることが求められ、問題提起するものです。

 

(1)気候変動に伴う洪水ハザードマップの改訂

 毎年のように豪雨被害が発生する要因がこの間の研究で明らかになっています。

  豪雨の原因としては、熱帯から伸びる水蒸気の帯(AR Atmospheric River:大気の川)が海水温度の上昇によって以前よりも発生しやすくなっていること、そして大気の状態を不安定にし、上昇気流を引き起こす切離低気圧(cut off low) が記録的な降水量の背景にあることが明らかになってきています。

 そして、この間の豪雨被害は、これまでその地域では起こらなかったような雨が降る現象、すなわち降水極端現象であることが研究者の事例分析で明らかになっています。東京大学の研究者が緊急にまとめた報告書「平成30年7月豪雨に関する資料分析」は、高梁川水系などでは評価時間24時間で再現期間500年を超える降水量が記録されていたことを突き止めました。また、全国各県の降水量観測を積算することにより、広島県は再現期間500年を超える、岡山県は再現期間100年を超える極端現象であることが明らかになりました。つまり、100年に一度、500年に一度の非常に極端な豪雨状況になっているということです。

 こうした状況の下、平成27年の水防法改正により、国、都道府県または市町村は想定し得る最大規模の降雨・高潮に対応した浸水想定を実施し、市町村はこれに応じた避難方法等を住民等に適切に周知するためにハザードマップを作成・改訂することが必要となりました。これまでの洪水ハザードマップの総雨量は、数十年から100年に一度レベルの想定でしたが、これを1000年に一度レベルに対応した洪水ハザードマップをつくらなければなりません。

  また、ハザードマップには洪水予報等の伝達について記載することになりますが、今年の台風19号の際に生じた、市のホームページおよびラジオ情報と、テレビのテロップ情報との乖離について深く分析を行い,改善を図る必要があります。

 具体的には15時の段階で発表された「避難準備・高齢者等避難開始」は浸水想定区域を中心にした対象区域になっていましたが、21時の段階で出された「避難勧告」も対象区域は同じだったものの、テレビのテロップでは「市内全域が対象」と流され、市民の間に一定の動揺が生じたのも事実です。

 市のホームページでは詳しく避難勧告の内容が示されていましたが、非常に複雑でわかりにくかったのも事実です。おそらくテレビ局では字数制限もあり、詳しく検討しないままテロップを流したのだと思いますが、正確な情報伝達という点で課題を明らかにしたのではないかと思われます。

 最近の相次ぐ水害は「想定を超える災害がいつ起きてもおかしくない」という状況であり、地域住民が自らの命を守る上でハザードマップは不可欠なものです。現在の状況に即したハザードマップを改訂し、新たに早期の立ち退き避難が必要な区域、浸水の深さや継続時間、要配慮者利用施設、情報伝達などを表示し、市民に公表していく必要があると考えますが、市長のご所見をお示しください。

 

(2)指定緊急避難場所の指定の見直し

 現在、本市においては公共施設を中心に27カ所が洪水の指定緊急避難場所として指定されています。しかし、その多くが洪水浸水想定区域に属していることから、決して安心な避難場所とは言えません。実際に、台風19号に伴う豪雨においては、避難場所を移動しなければならない事例が全国各地で発生しましたし、本市においても、南小学校や体育文化センターが指定緊急避難場所になっていたにも関わらず、台風19号豪雨においては、避難場所となりませんでした。実際に南小学校付近は水が滞水している状況で、もう少し降雨が続けば浸水する恐れもある状況でした。また、豪雨が予想される中でも、屋外に避難するのではなく自宅の2階に避難する方が高齢者を中心に相当数いますが、浸水の深さも今後表示されることから、そうした面も考慮した避難場所の設定が求められます。こうした状況の下、新たな避難場所の模索や他市の公共施設や民間の商業施設、大規模工場との連携協定も必要になっているのではないでしょうか。

 想定雨量が1000年に一度のレベルに対応した、指定緊急避難所の指定の見直しを行い、市民に公表していくことが必要ではないかと考えますが、市長のご所見をお示しください。

 

2 温泉健康施設について

(1)上山市の財政状況から見た温泉健康施設事業計画の中止について

 令和元年の6月定例会において、私は「発生主義・複式簿記」の地方公会計制度による「平成29年度上山市の財務諸表」にもとづいて、以下のような本市の厳しい財政状況を質しました。

@負債が一般会計で約220億円、連結会計で約343億円にも及んでいること

A住民一人あたりの負債額は一般会計で一人あたり71万8,000円で、総務省関係者 が平均値として示している30万円を大きく上回っていること。

B平成29年度末の状況では、本市の地方債償還支出が14億円であるのに対し、地方債 発行収入は約26億円で、地方債の償還が進んでいないこと。

C債務残高を減らすためには基礎的財政収支、いわゆるプライマリーバランスが黒字であ ることが求められるのに対し、本市の基礎的財政収支はマイナス9億7,400万円で 借金頼みの財政であること。

D債務償還可能年数が10.4年と、基準値10年を上回っていること。

E有形固定資産減価償却率(資産老朽化比率)が57.2%と建物や設備の半分以上が帳 簿上の価値を失っていること。

  こうした厳しい財政指標を指摘し、今後本市がめざす財政方向は、負債を減らすことに主眼を置き、事業展開は負債を増やすような大型事業ではなく、人口減対策に結びつく教育や社会保障など市民生活直結の事業展開を図るよう提案しました。

 今回あらためてお聞きしたいのは、「平成30年度上山市の財務諸表」について、先ほど示した@一般会計及び連結会計の負債状況、A住民一人あたり負債額、B地方債償還支出と地方債発行収入、C基礎的財政収支、D債務償還可能年数、E有形固定資産減価償却率(資産老朽化比率)がどのような状況になっているかお示しください。

  各種指標の中でも「債務償還可能年数」を総務省・財務省でも重視しており、自治体財政健全化の判断資料にしているようです。

 これまでは地方債をコントロールするために、「起債制限比率」が用いられてきましたが、地方債には元本据え置き期間があるために、起債制限比率はすぐには上昇しないという問題点がありました。また、下水道会計などにおける一般会計で負担すべき地方債、第三セクターや土地開発公社の負担、退職給与引当金など起債制限比率に反映されない「隠れ借金」ともいうべき問題もあります。こうしたことから、起債制限比率のみを指標とする財政運営を続けるならば、気がつかないうちに隠れ借金が膨れ上がり、財政破綻を招く事態に陥ってしまいます。

 こうした欠点を補うために新しく出された指標が「債務償還可能年数」です。この債務償還可能年数は、「実質的な債務が、償還財源上限額の何年分であるかを示す指標」とされています。判定目安としては、9年から12年が要注意自治体、12年から14年が危険な自治体、14年を超えると危機的自治体と判定されます。

 宮城県の涌谷町は、2019年1月に財政非常事態宣言を出しましたが、健全化比率では問題なかったものの、債務償還可能年数が前年の8.3年から2017年度には17.8年と悪化したため破綻を免れたとのことです。

  令和2年度からは庁舎耐震化事業の償還も始まりますが、今後本市においても債務償還可能年数を指標とした、債務管理が求められているのではないでしょうか。平成29年度時点で債務償還可能年数が10.4年という要注意自治体になっている中、地方債を増やすことは大変問題があります。

 また、資産老朽化比率が50%を超える中、公共施設の維持・更新も大きな課題になります。今後40年間に1,140億円必要になります。

 さらに、先に示した豪雨対策においても、浸水を防ぐための雨水貯留施設や下水道への合流整備などは市民生活を守る上で必至なものになります。

 人口減少も他市に先駆けて進行しています。山形県が発表した令和元年10月1日現在の人口と世帯数推計値では本市の人口は3万人を切る29,774人となっております。こうした人口減少に対応し、当然、税収は減り、消費・経済は停滞し、市の財政も今以上に苦しくなるのは必至です。

 現在においても、すでに公表されている平成30年度決算に基づく経常収支比率は95.2%と前年度よりも3ポイント、基準値をも大きく上回り、本市の財政が著しく硬直していることを示しています。自由に使える部分が4.8%しかない財政状況の下で、やはり優先すべきは少子化対策、福祉の充実ではないでしょうか。

 また、全体の事業予算についても、平成28年度の議員研修会で示された15億円程度と示されただけで、具体的なものが未だに示されていません。開設後の収支計画も示されていません。また、温泉健康施設に付随してクアパーク構想も出されましたが、この事業についても具体的構想・予算が示されていません。このような事業予算がはっきりしない中で、温泉掘削や事業所募集が先行して行われているという本末転倒なやり方に市民は不信感を募らせています。

 私たち日本共産党上山市委員会が今年の1月に行った市民アンケートでも、市政に求めるものは第1位:医療・介護・福祉の充実、第2位:税・保険料の軽減、第3位:人口減対策となっています。温泉健康施設については「つくるべきではない」が63%で、その理由として@赤字が心配、A財源を福祉に回すべき、B運営主体が不明確、といったことがあげられています。これが市民の標準的な考え方だと思います。

  厳しい財状況の下で、大型の事業に取り組むことは、本市の財政を破綻に追い込むことにつながりかねません。温泉健康施設事業計画は中止し、市民生活に直結する事業を優先すべきだと考えますが、いかがでしょうか。市長のご所0見をお示しください。