議席番号4番、守岡等です。
 私はまず発生主義・複式簿記に基づく財務諸表の活用についてということで、資産・負債をふやさない財政への転換について質問をします。まず、温泉健康施設等の整備に関する財政見通しについてです。
平成27年1月に総務大臣通知「統一的な基準による地方公会計の整備促進について」が出され、本市でも発生主義と複式簿記に基づく財務諸表が出されるようになりました。
 本市も含め、これまで地方公共団体の財務会計方式は、「現金主義・単式簿記」の考えに基づいて行われてきましたが、資産・負債の状況が把握できない、減価償却費や各種引当金など正確な行政コストが把握できないという問題がありました。
 こうした中、固定資産台帳が整備され、そして貸借対照表、行政コスト計算書、純資産変動計算書、資金収支計算書といった財務諸表が整備されたことは画期的な出来事であり、今後この財務諸表の分析をきちんと行い、正しく活用して健全な財政をつくり上げていくことが急務となっています。
 発生主義と複式簿記に基づく財務諸表によって、本市の財務状況が総合的に把握できるようになりました。まず、一般会計で約220億円、連結会計で約343億円にも及ぶ負債の状況ですが、平成29年度末の状況では、本市の地方債償還支出が14億円であるのに対して、地方債発行収入は約26億円で、地方債の償還が進んでいない状況にあります。債務残高を減らすためには、基礎的財政収支、いわゆるプライマリーバランスが黒字であることが求められますが、平成11年以降、地方公共団体純計の基礎的財政収支は黒字を継続している中で、本市の基礎的財政収支は約マイナス9億7,400万円となっており、財政の執行に係る経費が借金に頼っている状況であることが明らかになりました。住民1人当たりの負債額は一般会計で1人当たり71万8,000円で、総務省の部会関係者が平均値として示している30万円を大きく上回っています。
 また、今回の財務諸表によって負債の償還能力をはかる債務償還可能年数が指標として示されました。これは負債を償還財源で割ることにより、債務の償還に徹すれば、最短何年で償還できるのかの数値を求めるもので、本市は10.4年となっており、基準値10年を上回っています。銀行は、一般企業に融資を行う場合、この債務償還可能年数を最も重視し、10年を超えている場合には返済能力がないとみなされ、融資を受けることができない場合もあるそうです。
 このように、貸借対照表などにより、本市の厳しい負債の状況が明らかになり、今後の本市の財政的課題は何よりも負債を減らしていくことが至上命題となります。
 こうした状況のもと、本市において、平成28年度の議員研修会で15億円程度として示された温泉健康施設事業や、平成30年度の議員研修会で示された約6億5,000万円の駅前開発が予定されていますが、莫大な負債を抱え、借金を重ねなければ財政執行ができない状況において、さらなる負債をふやすことは、本市の財政をますます圧迫し、将来世代へ大きな負担を残すことになります。
 また、本市の人口は減少を続け、令和元年中にも3万人を切ると予想されていますが、当然税収も減少することになり、これまでと同じような財政運営を行っていたのでは、財政破綻を招きかねません。
 本市の今後の事業展開は、温泉健康施設や駅前開発など資産・負債をふやすような大型の事業展開ではなく、人口減対策に結びつく教育や社会保障など市民生活直結の事業展開を図りながら、負債を減らす方向にシフトすべきだと考えます。
 私たちがことしの1月から2月にかけて行った市民アンケートでも、箱物行政から脱却して教育・福祉の充実を求める声が数多く示されました。特に学校給食の無償化や子どもの医療費無料化の高校3年生までの拡大、そして安心できる医療・介護を求める声が圧倒的だったことを紹介します。
 今後の本市の財政方向としては負債を減らすことに主眼を置き、貸借対照表の資産や負債増加につながらない財政への転換を図るべきだと考えます。こうした中で、温泉健康施設等の整備に関する財政見通しをどのようにお考えか、市長の御所見をお示しください。
 
 次に、公共施設等再生整備基金の創設についてです。本市には、資産から負債を除いた純資産が約285億円あります。資産が多いことは望ましいことだと考えられていましたが、資産があることはその維持や修繕などさまざまな費用負担が発生します。また、資産はやがて老朽化し、資産価値を失い、その更新を図らなければなりません。これまでは財政状況の把握は負債、つまり借金に主眼が注がれてきましたが、実は資産についてもさまざまな検討課題があることを平成29年度上山市の財務諸表が教えてくれます。
 これまでの「現金主義・単式簿記」による官公庁会計では、固定資産などの価値の損失分を費用として損失計上する減価償却費が考慮されず、公共施設の更新費用がほとんど予算計上されないまま推移してきました。しかし、平成29年度上山市の財務諸表によれば、本市の有形固定資産減価償却率、いわゆる資産老朽化比率は57.2%となっており、現在保有する建物や設備の半分以上が既に帳簿上の価値を失っています。
 平成29年に作成された上山市公共施設等総合管理計画によれば、今後40年間の公共施設等の維持管理・修繕・更新等に必要な額は1,140億円、平均すると1年当たり28億円に対して、これに充当可能な金額は787億円、平均すると1年当たり19億円で、352億円の更新財源不足が見込まれるとのことです。
 この不足分については、公共施設の削減とそれに伴うコスト減により軽減を図るということですが、それでも多大な更新財源がかかります。企業会計では、減価償却費に見合う積み立てを行い、更新財源に充てていますが、官公庁会計では、減価償却費という概念がなかったため、そうした対応はとられてきませんでした。今回、固定資産台帳及び財務諸表の整備によって、将来の公共施設の維持更新に向けた具体的な指標が示されたことから、中長期的な視野に立ってその財源を積み立てていく必要があります。こうしたことから、本市においても公共施設等再生整備基金を創設し、公共施設等の維持・更新等を計画的に行っていくことを提案します。市長の御所見をお示しください。
 
 次に、会計業務の整備について、複式簿記導入に向けた人材育成についてです。
 今回の発生主義と複式簿記に基づく財務諸表は、本市の財務状況を知る貴重な資料です。しかし、一般企業の経営者や経理担当など、一定の専門的知識を持っていなければ発生主義と複式簿記の考えを理解することは困難です。今後、発生主義・複式簿記に基づく財務諸表を活用するに当たって、何よりも市の職員が発生主義・複式簿記に関する知識を深め、現実的な対応を行っていく必要があります。千葉県習志野市等では、「バランスシート探検隊事業」を実施して、「市のバランスシートを高校生にもわかる視点で読み解く」という取り組みが行われています。この探検隊は、バランスシート、いわゆる貸借対照表とはどのようなものか基礎学習から活動を開始し、市の職員と大学生が高校生にわかりやすく説明するレクチャーノートを作成します。さらに文献学習だけでなく、実際に市の資産である施設を訪問し、実際に見て、感じて、触れることによって資産とその維持について学ぶというものです。
 今後、本市においても資産・負債の視点からの財政や減価償却に基づく資産管理と公共施設の維持・更新などが重要な課題になってきます。専門家を招いた通年的な研修など、複式簿記導入に向けた人材育成を図る必要があると考えますが、市長の御所見をお示しください。
 
 次に、複式簿記導入に向けた財政システムの整備についてです。
 複式簿記に基づく財務諸表を作成するには、現行の現金主義・単式簿記の歳出を資産、あるいは費用に仕訳変換する作業が必要になります。現状では、現金主義・単式簿記の予算科目と発生主義・複式簿記の勘定科目が1対1対応していないものを財政課職員が勘定科目も整理し直す期末一括仕訳が行われています。しかし、これは膨大な作業量を要し、年度末にかろうじて財務諸表が出されるため、当該年度の決済や予算の審議には反映されないという弱点を持っています。
 それに対し、最近では、支出を行う際に各課の職員が勘定科目の選択を行い、仕訳を起こす日々仕訳を行うところがふえています。今後こうした方向性で会計業務整備が行われていくと考えられますが、しかし、この日々仕訳についても全ての職員が複式簿記の考えを身につける必要があり、さまざまな業務を抱える中で、複雑な複式簿記の仕組みを理解することについて限界があると思われます。
 こうした中で、和光市では、予算仕訳というものを整理して、複式簿記の仕訳に対応した予算科目で予算編成を行うことにしたということです。この予算仕訳では、例えば工事請負費を「工事請負費(工作物)」「工事請負費(維持補修)」といった形で複数の科目(細節)に分解することにより、それぞれが複式簿記の仕訳の勘定科目と一致するので、公会計システムに財務会計システムから抽出した支出データを取り込めば、自動変換で仕訳が完了するというすぐれたシステムです。
 今後、本市においても複式簿記に対応した予算科目の整備を行い、自動仕訳変換システムの導入とともに、財政システムの整備を図っていく必要があるのではないでしょうか、市長の御所見をお示しください。
 
 次に、大きな2番目として、国民健康保険制度の負担軽減についてです。
 まず、低所得者への窓口負担の減免についてです。現在、本市の国民健康保険制度には、4,288世帯が加入しています。国保は、以前は自営業者の医療制度という色合いが強かったのですが、現在では年金生活者を初めとした低所得者の割合がふえ、1人当たりの平均国保税額は約16万円となっています。年間所得200万円の4人家族で50万円近い保険税になっています。高過ぎる国保税を1年以上滞納し、資格証明書を交付される世帯も28世帯に及んでいます。
 本市の医療給付費が高い要因として、病気になっても我慢し、重症化してから受診する傾向があることが指摘されていますが、経済的な問題が背景にあることも予想されます。
 こうした状況のもと、国保制度には法律で規定した窓口負担、いわゆる一部負担金の減免の制度があります。災害による損害、農作物の不作、倒産、解雇など、特別な事由に該当した場合に、減額、免除、徴収猶予を受けることができる制度ですが、具体的なところは各市町村で定めることになっています。国保に加入している世帯の厳しい経済状況から見て、こうした減免制度を市民が積極的に活用してもよさそうなものですが、本市においては、申請が全くないという状況です。全国的には、厚生労働省が平成18年に行った調査では、1,818の保険者のうち、1,003の保険者が実施しています。大阪府などでは6,000件を超える申請もあるということです。
 しかし、なぜ本市で全く利用されていないのか詳しく分析する必要があります。通知の面では市報やホームページ、市や医療機関の窓口で案内しているとのことで、保険税減免に比較すると通知は徹底されていると思います。そこで、制度の中身に問題があるのではないかと思い、分析したところ、恒常的な低所得者は対象外とされているとのことです。低所得者ほど医療機関の受診を控え、結局重症化して医療費がふえる傾向にあることから、恒常的な低所得者も減免の対象にしたほうが低所得者の受療権を守ることにつながり、医療費削減、保険税引き下げにもつながるのではないでしょうか。低所得者への窓口負担の減免について、市長の御所見をお示しください。
 
 次に、子育て世帯の国民健康保険税軽減についてですが、国保税がほかの社会保険などよりも高くなる要因の一つに、均等割、平等割の問題があります。所得に関係なく、家族の数がふえた分だけふえていく均等割や世帯ごとに一律に課せられる平等割の部分が実は国保税の負担感を増大させていると考えます。国保には、扶養という概念がなく、就業のない人も生まれたての赤ちゃんにまでこの保険税がかかるという、こういう矛盾した制度であり、市長会等においても、負担軽減の支援を要望していると伺っていますが、横浜市ではこうした矛盾点を先駆けて把握し、市単独事業として子どもがいる世帯に対する保険料の軽減制度を設けています。これは申請しなくても自動的に減免が適用され、16歳未満の被保険者1人につき33万円、16歳以上19歳未満の被保険者1人につき12万円が算定基準となる所得から控除されるというものです。1世帯当たりの同居人数が多い本市においては、均等割による影響が高くなる傾向にあります。高過ぎる国保税の負担軽減策として、あるいは子育て支援の一環として、子どものいる世帯への国保税減免制度を設けることを提案します。市長の御所見をお示しください。