一般質問の要旨 (令和2年12月)
質問者 議席番号 4番 守 岡 等 議員
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1 新型コロナウイルス感染症対策のさらなる強化について
(1) PCR検査・抗原検査の活用による感染防止
全世界で猛威を振るう新型コロナウイルスは、国内各地においても連日のように一日の感染者数が過去最高を更新するなど、第3波ともいえる様相を呈しています。
特に、最近の都会における感染拡大は、無症状の感染者がウイルスを排出し続けることによる感染拡大が大きな問題となっており、本来であれば第一波、第二波が収まった段階で十分なPCR検査・抗原検査を実施すれば一定程度感染拡大を抑えることができたにもかかわらず、残念ながらわが国ではそうした対策は行われず、むしろGoToキャンペーンなどの実施により都会のウイルスを地方に拡散する事態となっています。
県内においても感染拡大地域からのウイルス流入により、感染者が増加する傾向にあります。こうした中で、地方自治体や企業の取組が今後のコロナ対策として重要になってきています。
わが国の感染症専門家の中で、唯一新型コロナウイルス感染症対策を社会システムの問題としてとらえてきた東北大学名誉教授の満夫氏は、Jリーグ及びプロ野球の「新型コロナウイルス対策連絡会議」の専門家チームの座長を務め、Jリーグは2週間に1回、プロ野球は月1回のPCR検査を義務づけ、試合の再開を可能にしました。
世田谷区では濃厚接触者を対象とした「行政検査」(国費で支給)に加え、既に介護、医療、保育、学校等の現場で働く人に対し、感染状況等から判断し一斉に検査を実施する「社会的検査」も実施しています。ある高齢者施設で職員61人に社会的検査を実施したところ、10人の陽性が判明しました。この施設の施設長は「職員はこの9カ月間、厳しい感染対策を行い個人の生活も律してきた。どこで感染したか不明で大変驚いているが、重症者が出る前に感染状況がわかったのは良かったと思う」と語っています。
このように、いま新型コロナウイルス感染症対策として必要なことは、第一に、発見された陽性者の行動を追跡して接触した人を見つけて保護・検査することです。第二に、感染者の40%が無症状者からの感染と言われるように、広範囲なPCR検査・抗原検査を実施して無症状感染を制御することです。そして、感染者を保護・隔離し、重症者を出さないことが重要です。
私は9月の定例会で、PCR検査の医療機関への委託を提案しましたが、その後、医師会の協力の下、市内でも12の医療機関で検査が受けられるようになり、より広範な市民が検査を受けられる環境が整備されています。
今後、市内でも感染の広がりが懸念されますが、これまでのような一律の経済活動の自粛や学校の一斉休校といった対応では、根本的なコロナ対策にならないだけでなく、本市の経済や教育を根底から破壊することにつながりかねません。
こうした視点から新型コロナウイルス感染症のさらなる強化について、以下の事項について提案するものです。
ア 高齢者や持病のある人に対する検査費用の助成
現在、新型コロナウイルスの検査は、発熱などの症状があって感染が疑われる場合や、感染者の濃厚接触者になった場合などに限り行政検査の対象となり、自己負担は無料となっています。しかし、地域や職場で感染が広がるなどして不安を感じても、行政検査の対象とならない場合、抗原検査(単価7千円前後)やPCR検査(単価2〜3万円)は全額自己負担となります。
特に高齢者や、糖尿病・呼吸器疾患など持病のある人は重症化するリスクが高く、また最近は無症状の人からの感染が増えていることから大きな不安をかかえています。
無症状感染者もけっして安心できません。高齢者の場合、無症状感染者であっても肺炎の兆候がみられ、ある日急激に悪化し死亡するという事例も報告されています。さらに、新型コロナウイルス感染症による致死率は、70歳を超えると10%を超え、80歳以上では致死率20%を超えており、特段の配慮が必要です。
こうしたことから、政府は発熱などの症状がなくとも、希望する高齢者らの検査費に対して市が助成を行う場合、国がその1/2を助成する方針を固めたようです。
本市においても、高齢者や持病のある人に対する検査費用の助成を行い、高齢者等の不安を払拭するとともに、感染の早期発見と重症化予防に取り組むことを提案します。市長のご所見をお示しください。
イ 市独自基準による無症状者への社会的検査の実施及び検査費用の助成
いま、無症状者によるウイルス感染をどう防ぐかが、最大の課題となっています。すでに全国の各自治体において無症状者への検査拡大が進んでいますが、富士宮市の独自基準に基づいた「富士宮方式」が参考になります。
富士宮市では、市内の感染事例は感染拡大地域からの流入に起因するケースが多く、水際で感染者を早期に把握することが家庭内への感染拡大を防ぐ効果があると判断し、検査基準として感染拡大地域の訪問、感染拡大地域居住者との交流、感染者・濃厚接触者との接触の可能性があった場合を挙げ、いずれかに該当すれば希望者に医療機関を紹介し、検査を受けてもらうということです。
希望者については、感染拡大地域から帰宅した出張者や、観光客との接触が多い観光施設従業員、帰省した学生など、感染を不安視する市民を想定しています。重症リスクが高い高齢者や子どもと関わる医療、介護、教育従事者は優先的に手配するとのことです。
こうした人たちを対象に、富士宮市では一律2万円を補助するとのことです。
観光都市である本市においても、感染拡大地域からの流入は続いており、感染が拡大する可能性があります。こうした状況の下で、本市独自の基準を設け、行政検査の対象にならない無症状者への社会的検査を実施し、検査費用の助成を行うことを提案します。市長のご所見をお示しください。
(2) シトラスリボン運動の実施
新型コロナウイルス感染症はだれもがかかり得るものであり、医療従事者はその崇高な倫理観・職業観にもとづいて日々治療にあたっています。しかし、先日、山形市で小学生の感染が報道された際にも、学校に「どのクラスか教えろ」、「隠しているのか」といった詮索や中傷の電話が複数あったそうです。医療従事者の子どもが通う保育園では「通園するな」という露骨な中傷もあるようです。
こうした中、新型コロナウイルスの感染者や治療にあたる医療従事者などエッセンシャルワーカーへの差別や偏見をなくそうと、全国各地で「シトラスリボンプロジェクト」が取り組まれています。これはコロナ禍で生まれた差別や偏見を耳にした愛媛県の有志の方々が始めたプロジェクトで、感染が確認された方々、私たちの暮らしを守り支えてくれているエッセンシャルワーカーの方々と、それぞれの暮らしの場で「ただいま」「おかえり」と言い合える環境の啓発を行うものです。
具体的にはシトラスカラー(黄緑色)の紐などを使って、地域・家庭・職場(学校)などを示す三つの輪からなるシトラスリボンをつくります。このシトラスリボンを身につけたり、家の玄関や郵便受けなどに掲げてエッセンシャルワーカーへの感謝の気持ちを表すというものです。
すでに全国各地の自治体や学校、企業の間で取り組まれ、コロナ禍をみんなで支え合う気運が広がっています。
本市においてもこのシトラスリボン運動に取り組み、感染した人や医療関係者を温かく見守るまちにしていくことを提案します。市長のご所見をお示しください。
2 不登校の子どもたちへの支援について
(1) 公設民営の教育支援センター、フリースペースなど安心できる居場所づくり
不登校の子どもたちが増えています。文部科学省の「平成30年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によると、不登校の数は2001(平成13)年をピークに、ゆとり教育の影響もあり一時的には減少傾向にあったものが、2012(平成24)年以降、増加傾向となり、2018(平成30)年度には過去最高となっています。
具体的数字としては、小学校で約4万5千人(0.7%)、中学校で約12万人(3.65%)となっています。これは年間30日以上の欠席をした者で(病気や経済的理由によるものを除く)、欠席日数が年間30日未満の者や遅刻早退が常態化した者、登校はしたものの教室には入れない者などは含まれていません。
こうした中、文部科学省とは別に、日本財団が2018(平成30)年に「不登校傾向にある子どもの実態調査」を行った結果、全体の10.2%、人数にして推計33万人が不登校傾向にあるとしています。本市でも30人前後の不登校及び不登校傾向の子どもの数が報告されています。
この日本財団の調査は不登校の原因についても報告しており、現中学生に直接聞いた学校に行きたくない理由として、「朝起きられない」「疲れる」などの身体症状の要因を除くと、「授業がわからない、ついていけない」「テストを受けたくない」「小学校の時と比べて良い成績がとれない」など、学業に関する要因が多くなっているということです。
一方で、文部科学省の調査では、不登校の原因は「学業の不振」よりも「家庭に関わる状況」や「いじめを除く友人関係をめぐる問題」が多いとされていますが、回答者が教師であることから、学校現場は不登校の要因を正確につかんでいない可能性があると指摘する研究者もいます。
不登校の数が増え続ける中で、日本の教育制度の欠陥を指摘する声もあります。その最たるものが国連子どもの権利委員会の所見で、「高度に競争主義的な学校環境が、就学年齢にある子どもの間のいじめ、精神的障害、不登校・登校拒否、中退及び自死の原因となっていることを懸念する」と指摘しています。
不登校の子どもたちや保護者の意見を聞いても、学校の競争的・管理的な環境・雰囲気がどうしてもいやだという声が多く寄せられています。
こうした状況の下、国の不登校対応も変化をみせています。1983(昭和58)年の「生徒の健全育成をめぐる諸問題−登校拒否問題を中心に」では、登校拒否になる児童生徒は不安傾向が強い、情緒的に未成熟などとし、親にも不安傾向があり、登校拒否を助長しているなどと分析し、登校拒否の原因を家族に求めていることが特徴的でした。ある医学者が新聞紙上で「登校拒否が将来のひきこもりに結びつく」と主張した結果、本人や家族が追い詰められ、親子心中が相次いだのもこの頃でした。
1992(平成4)年に出された文部省初中等局「登校拒否(不登校)問題について−児童生徒の『こころの居場所づくり』をめざして」では1983(昭和58)年の見解を180度変え、「登校拒否はどの子にも起こりえる」とし、その対応として見守ることの重要性を指摘しています。
その後適応指導教室の設置によるこころの居場所づくりや、スクールソーシャルワーカーの配置など社会的自立をキーワードとした働きかけが行われ、2002(平成14)年以降、約10年にわたり不登校児童生徒は高止まりましたが、全国一斉学力テストの平均点が自治体ごとに公表されるようになった2013(平成25)年度を契機に再び不登校児童生徒数が増えはじめ、2013(平成25)年度は7千名、2014(平成26)年度は3千名、2015(平成27)年度も3千名不登校者が増加するという結果になっています。
こうした状況のもとで、2016(平成28)年「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律(教育機会確保法)」が成立し、2019(令和元)年には「不登校児童生徒への支援のあり方について」が通知され、子どもや保護者の目線に立った不登校支援の方向性が示されました。
その特徴は、@「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではなく、社会的に自立することをめざす、A不登校の時期が休養や自分を見つめ直す等の積極的な意味を持つ、ということにあります。さらに、教育支援センター、不登校特例校、フリースクールなどの民間施設、ICTを活用した学習支援など、学校とは別の多様な教育機会が示されたことも重要です。
いま、不登校の子どもたちに一番必要なものは、安心できる居場所です。競争的なものや様々な圧力から離れ、ゆっくり休養しながら同じような気持ちを抱いている友だちと交流できる居場所を求めています。そして、やりたいことを見つけ、それを実現するために話し合いをはじめ、必要な知識を学んでいく中で自立心や学ぶ意欲を培っていくのがフリースペースです。
本市にも適応教室「すこやか教室」が設置されていますが、今年度は利用者はいないとのことです。全国的にも教育支援センターを利用する不登校の子どもたちは1割程度に過ぎないといわれていますが、やはり設置目的が最終的に学校復帰としているために、子どもたちのこころの居場所になり得ていないことが原因となっているようです。
しかし、栃木県高根沢町の公設民営の教育支援センターは、表面的な学校復帰を目標とせず、「学習の場であるよりも、何よりも子どもたちが安心して心身を休ませ、自分らしい自分、本当の自分に出会い、社会的に自立していくための居場所」(教育委員会)として位置づけ、子どもたちは100%社会復帰を果たし、高校にも進学しています。
また、こうしたフリースペースは不登校の子どもたちの親が集い、交流する場にもなります。本市においても不登校の子どもを持つ親の会があり、悩みを共有し、不登校に関する研修会を行うなどの活動をしていますが、残念ながら行政との接点はありません。教育支援センター・フリースペースに親が集う場所をつくる中で、親の会と行政との接点をつくり、様々な要望に応えていく取組も必要になるのではないでしょうか。
さらに、現在は学校の中に不登校の子どもを受け入れる場所を確保し、別室登校という形態がとられていますが、学校の外に教育支援センター・フリースペースをつくることは、現場の教師に「多様な教育の場がある」ことの理解を培う契機にもなります。
これまではどうしても学校復帰を目的に、学校内での対策が主流でしたが、本当に子どもたちの気持ちに寄り添い、子どもたちの社会的自立を図るためには、学校外のスペースでまずじっくり休養することが必要だという考えを、教師自身が持つ必要があります。
こうした視点に立って、子どもたちの安心できる居場所としての公設民営の教育支援センター、フリースペースの設置を提案します。教育長のご所見をお示しください。