一般質問の要旨 (令和2年3月)

 

質問者 議席番号 4番 守岡 等  議員

 

 

1健康寿命の延伸について

 

 医学の進歩や生活環境の改善によって、今や人生百歳時代を迎えようとしています。わが国の平均寿命は男性81.09歳、女性87.26歳(2017年)と世界一の長寿国となっています。また健康寿命も男性72.14歳、女性74.79歳(2016年)となっており、平均寿命との差をいかに減らすかが今後の大きな課題となっています。

 ちなみに上山市の平均寿命は男性81.94歳、女性87.94歳で、健康寿命は男性80.37歳、女性84.41歳(平成28年)と、健康寿命が全国平均よりもかなり高くなっています。

 山形大学公衆衛生学教室の研究では、高齢者の社会参加が健康寿命延伸の大きな要因になっていることを明らかにしていますが、本市においても地区会、公民館、図書館などを基盤にした地域活動が活発に取り組まれ、健康寿命延伸の大きな要因になっているのではないかと思われます。

 しかしながら、上山市「湯ったり健康かみのやま第二次行動計画」およびその中間評価と見直しによれば、本市のいくつかの健康課題も明らかになっています。

 第一は糖尿病対策です。特定健診におけるHbA1cが要指導58.6%、要受診8.2%、合計66.8%の人が要対策となっています。糖尿病患者の重症化予防が重要な健康課題となっています。

 第二に特定健診の血圧測定においても「要指導・要医療」の人が男性49.9%、女性42.6%と高くなっています。

 第三に呼吸器疾患の問題です。死亡原因第一の悪性新生物の中でも肺がんが男性一位となっているほか、死亡原因の第2位に肺炎が入っていますが、それにもかかわらず、たばこを吸っている人は中間評価時の15.8%から21.2%と増加しており、本市が特に力を入れなければならない課題となっています。

  こうした健康課題を克服し、健康長寿のまちをつくるために、以下の事項について提案するものです。

 

(1)レセプトデータ分析にもとづくハイリスク者抽出と重症化予防プログラム

 本市の健康課題で最も優先的に取り組むべきものが糖尿病の重症化予防です。糖尿病有病者は予備群も含めると全国で2千万人に及ぶと言われています。おそらく本市においても相当数の有病者がいると思われますが、こうした糖尿病有病者の糖尿病腎症など重症化を予防することは、本人の生活の質QOLを維持するだけでなく、医療費を抑制する面でも重要です。

 この間、本市においては特定健診のデータは整理しているようですが、これに加えレセプト(医療報酬明細書)データを活用し、糖尿病腎症が重症化するリスクの高い人たちを見いだし、介入を行い人工透析への移行を防ぐことが重要です。

 具体的には、空腹時血糖値126mg/dl以上またはHbA1c6.5%以上の高血糖の人や、過去3年間の健診でHbA1c7.0%以上が確認されているのに,最近1年間に糖尿病受療歴のない人をレセプトや健診データから抽出します。そして、速やかに状況確認を行い、可能な限り健診受診、医療機関受診、保健指導などを行なうというものです。

 こうした取組によって、埼玉県では新規受診者が1.8倍増加し、保健指導などのプログラムに1,086人が参加し、食事、運動療法、服薬指導など自己管理能力が向上し、うち279人にHbA1c0.3%の低下がみられたとのことです。

 本市においても、レセプトデータ分析にもとづくハイリスク者抽出と糖尿病重症化予防プログラムを実施することによって、重症化予防を図っていく必要性があると考えますが、市長のご所見をお示しください。

 

(2)がん検診受診率の向上

 国民2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなるといわれています。本市もその例外ではなく、がんを予防することが、健康寿命の延伸につながっていきます。

 がんを予防するには、早期発見・早期治療がもっとも有効です。そのためにはがん検診の受診率を大幅に伸ばしていく必要があります。

 本市のがん検診受診率(平成30年度末)は、胃がん26.6%、大腸がん43.0%、肺がん44.7%、子宮がん49.3%、乳がん61.3%となっており、目標50%を達成しているのは乳がんのみとなっています。

 どうしたらがん検診受診率を向上させ、がん予防につなげられるか、先進自治体の取組を調査してみました。その中で東京都の取組がすぐれており、八王子市ではがん検診受診率90%という驚異的な数字を残しています。そうした取組に学び、本市でがん検診受診率向上のために以下の取組について問題提起します。

 

ア 意識調査の実施

 検診受診率を上げるためには、広く市民を対象にした意識調査を行い、市民のがん検診に対する意識を把握し、効果的な受診対象の抽出を行っていく必要があります。

  たとえば、西東京市では市民に対する無作為調査を行い、「受診率が低い」かつ「市の検診に依存する者の割合が高い」集団を対策の必要性が高い層として、さらに「検診を受ける意図がある者の割合が高い」集団を勧奨の期待効果が高い層としてそれぞれ当てはめ、双方に該当するがんの種類や性年齢層を割り出しました。その結果、若年層向けの子宮頸がん検診対象の優先順位が最も高いという結論に至り、受診率向上に結びついたとのことです。AI(人工知能)によるビッグデータの分析が功を奏しているとのことで、東京都のいくつかの自治体で民間の協力も得て有効ながん検診が実施されているようです。

 さらに、検診を受診しない人の意識動向を調査する必要性もあります。検診を受診しない理由は様々で、興味がない、費用が心配、内容・意義が分からない、悪い結果が出たら心配だ、医学的な根拠があるのか、近くに検診機関がない、時間がない、申し込み方法が分からない、土日も受診できるのか、など様々な理由が示されます。そうした理由の一つひとつに対応策を講じて受診率を上げているところがあります。具体的には宣伝ちらしを工夫したり、受診環境を整備したりして検診を受診しない理由を一つひとつ消していく作業を行う必要があります。

 このように、科学的な意識調査を行い、検診受診率を上げていく必要があると考えますが、市長のご所見をお示しください。

 

イ QRコードの利用等電子申請の実施

 がん検診を受診しない理由に、申し込み方法がわからない、あるいは申し込み方法が煩雑というものがあります。そうした傾向は若年層に多く見られるようです。東京都の各自治体でもそうした傾向が強いことから、QRコード付きの受診案内リーフレットによる個別勧奨を行い成果をあげているということです。

 QRコードは導入の手間・コスト共に小さく、容易に電子申請にアクセスすることができます。電子申請には「時間を選ばない」という利点もあります。特にスマートフォン等のデジタル媒体を活用する若年層に向けての効果が期待されます。

 本市においてもがん検診受診申し込みの際に、QRコードの利用等電子申請の実施を行うことを提案します。市長のご所見をお示しください。

 

(3)地域保健推進員の創設

 地域の保健活動の核となるのが保健師で、様々な地域活動を行っています。今回提案した糖尿病重症化予防やがん検診向上に向けた取組の中心を担うことが期待されますが、本市の8名の保健師でそれをすべて担うには限界があります。長野県のように保健師が数多く配置されている自治体であればいいのですが、本市では財政的な問題もあり、いきなり保健師を増員するというわけにもいかないと考えます。

 そうした状況の下、いま各地で地域保健推進員制度を取り入れているところが増えています。地域保健推進員は、地域の健康づくりのリーダーで、市と協力しながら地域づくりのために活躍しています。

 たとえば館山市では、2カ月児訪問、乳児健診への協力、中学生を対象にした生活習慣病予防事業、健康相談・健康教育・介護予防教室への協力、減塩メニューの伝達、乳幼児・高齢者の家庭訪問、市で行う保健事業の案内や健康に関する知識の普及などに取り組んでいます。

 このように市(保健師)と地域住民の仲立ちとなって,地域健康づくり行うことは、今後の健康寿命の延伸や生活習慣病予防、健診受診率の向上にとって非常に有意義なものになると考えます。

 本市において、地域保健推進員制度を創設し、地域保健活動を強化していくことを提案します。市長のご所見をお示しください。

 

2 教員の働き方改革について

 教員の長時間労働は依然として深刻で、教材研究や子どもたちとのふれあいなど教員本来の業務を制限するだけでなく、過労による休職や、全国的には痛ましい過労死も起きています。そうした中、早期退職者が増えるだけでなく、教員を志望する学生も減り始め、教員の長時間労働の是正はまさしく日本の教育の現在及び未来に関わる重大な課題となっています。

 教員の長時間労働の要因としては、学級事務の繁雑さ、様々な調査・報告書の作成、学校行事、保護者対応、校務分掌、教材研究、部活動,研修など様々なものがありますが、本市では令和2年度当初予算で教員の働き方改革を図るため、校務におけるICTの活用や部活動指導員の配置などが計上されており、現場の先生からも歓迎されているようです。一方で、国から示されている働き方改革には現状にそぐわない面もあることから、2点問題提起させていただきます。

 

(1)働き方改革にそぐわない変形労働時間制

 2019年12月の国会で、公立学校の教員に「1年単位の変形労働時間制」を導入可能とする「改正教職員給与特別措置法」が成立し、今後各自治体で制度導入の是非が問われることになりました。

 変形労働時間制とは、「1日8時間労働」の原則を崩し,繁忙期と閑散期を設定した上で、繁忙期の所定労働時間を延ばし(最大一日10時間)、閑散期の所定労働時間をその分短くするというものです。

  学期中を「繁忙期」とし、所定労働時間を延長することは、教員の労働環境をさらにひどい状況に追い込むのではないかと考えられます。例えば現在の退勤時刻が午後4時45分なら、変形労働時間制の導入によって退勤時刻が6時、7時となってしまいます。それによってこれまで午後4時45分終了をめどに設定されてきた会議が6時、7時まで可能となり、教員はそれから授業準備などを行うことになります。まさに長時間労働を固定化し、助長するのが変形労働時間制といえるのではないでしょうか。

 また、子育てや介護などによって、どうしても午後5時に帰らなければならない教員がいます。定時が延長されることにより、19時まで学校に残らざるを得ないことになればこうした保育や介護は誰が面倒をみるのでしょうか。子育て支援に逆行するのが変形労働時間制です。

 さらに、変形労働時間制は部活動の顧問についても大きな影響を及ぼします。部活動の顧問について、文部科学省の見解は「所定労働時間内に限り職務命令できる」というものですが、所定労働時間が延びることによって、夜の6時、7時まで職務命令が可能になります。本来、任意のはずの部活動顧問が義務化される環境となります。

 こうした大きな問題がある一方で、変形労働時間制は完全に選択制であるという特徴を持っています。つまり都道府県が変形時間労働制の条例を定めるかどうか、条例ができた下で個々の自治体や学校が導入するかどうか、いずれも自由であるということです。また、導入するかどうかは毎年度決めることになります。各自治体の判断で採用しないということもあり得ると衆議院文部科学委員会で文部科学大臣が答弁しています。

 このように問題だらけの変形労働時間制ですが、今後のスケジュールとしては、文部科学省の通知を受け、まず校長が教員たちの意見を聞く各学校での検討が始まります。続いて各学校が市教育委員会と相談し、上山市教育委員会として制度についての意向を持つことになります。そして、都道府県教育委員会が各市町村の移行をふまえ条例案を作成します。最終的に市町村教育委員会が各学校の意向を踏まえ,導入する学校や具体的な導入の仕方を決定します。

 このようにこの制度のもっとも基本となる部分は市教育委員会と各学校です。私は様々な問題を持ち、教員の働き方改革にはそぐわない変形労働時間制は採用しないことを提案します。教育長のご所見をお示しください。

 

(2)コミュニティスクールの設置

 教員の長時間労働を是正する最も有効な手段は、教員の数を抜本的に増やすことです。欧米並みの教員数を確保するだけで、かなりの教員の負担が軽減され、教育の質も向上するものと思われます。

 しかし、今の政治の下で、教育予算を増やし教員数を増やすということは至難の技です。そうした中、保護者や地域住民の力を借りて、少しでも教員の負担を減らす取組が上山市のいくつかの学校でも行われています。こうした取組を発展させ、保護者や地域住民とともに学校運営協議会で問題を共有し、主体的に学校運営に参加し、教育ボランティアや地域支援者として活動を行うコミュニティスクールを整備する必要があります。

 コミュニティスクールとは、学校と保護者や地域の皆さんがともに知恵を出し合い、学校運営に意見を反映させることで、一緒に協働しながら子供たちの豊かな成長を支え「地域とともにある学校づくり」を進める仕組みで、「学校運営協議会」が設置されている公立学校を意味します。法律的には「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」第47条の6にもとづくものです。平成31年の3月定例会でもコミュニティスクールの設置を提案しましたが、今回あらためて教員の働き方改革の視点から問題提起するものです。

 教員の働き方改革の視点からコミュニティスクールを考えた場合、その導入の最大の利点は地域に潜在している教育資源(人・物・教材・場所・情報など)を活用できるということです。これまでの学校教育は、教員免許を持っている教員だけで教育活動が行われてきましたが、小学校での英語教育、プログラム教育の導入など教育内容の高度化、子どもたちをめぐる環境の変化、多様なパーソナリティなど、学校の人材や空間だけでは対応しきれない問題も生じてきています。そうした中、もっと子どもたちとふれあいたい、補習授業をしてあげたい、いい授業をしたい、保護者の声も聞いてあげたい、部活の指導も向上させたいと思いながらも果たせないでいる教員も多いのではないでしょうか。

 コミュニティスクールは、そうした地域の教育資源を活用し、地域の人たちの支援を受けながら教員の負担を軽減し、同時に子どもたちの教育を充実させるというものです。

 具体的には授業補助・学習支援、特別支援教育ボランティア、部活動支援、ICT支援、学校外部評価などが考えられますが、その他にも花壇などの環境整備、スキー教室の指導、登下校時の見守り、保護者対応、不登校対応、運動会など学校行事の支援、遊具整備、放課後や土曜日の補修活動など多彩な実践がすでに全国各地で取り組まれています。

 本市においてもコミュニティスクールを設置し、地域住民の協力を得ながら教員の働き方改革、負担軽減を図っていく必要があると考えます。教育長の御所見をお示し下さい。 

以上