一般質問の要旨     (令和2年6月)

 

質問者 議席番号 4番  守 岡  等  議員

 

1 新型コロナウイルス感染症対策における教育課題について 

 新型コロナウイルスは未知のウイルスであることから、今後の展開も予断を許さないものとなっています。本市でもこの間5人の感染者が判明しておりますが、一般的に感染者の8割は軽症・無症状といわれ、実際にはその10倍以上の感染者がいるのではないかと抗体調査による予測も出されています。

 また、感染が一定程度収まった後でも第二波、三波が予想され、100年前のスペイン風邪においては、第二波の方が毒性が増し、致死率も増したという報告もあります。

 感染症対策だけでなく、その経済的影響も深刻なものがあります。収入の激減による市民の苦悩に対して、国や県、本市においてもこれまで連続的な経済対策を打ち出し、その軽減を図ってきました。今後も市政の第一義的課題と位置づけ、経済対策の強化を継続して図る必要があると考えます。

 今回、私は新型コロナウイルス感染症対策における教育的な側面に焦点を当て、不安やストレスを感じやすい子どもたちが安心を取り戻し、学校教育で重要な、人と人との交流の中で成長できる環境を一日でも早く取り戻せるよう、問題提起するものです。

 

(1) 収入減により家計が急変した世帯への就学援助の対象拡大

 就学援助は学校教育法で定められた、経済的理由によって就学困難と認められる児童生徒の保護者に対して市町村が必要な援助を与えなければならないもので、生活保護法で規定する要保護者と、市町村教育委員会が独自の基準を設けて規定する準要保護者がその対象となります。本市では生活保護基準の1.45倍までを準要保護者と定め、支給されていますが、いま全国各自治体で新型コロナウイルス感染症の影響により家計が急変した場合に、前年の所得でなく、急変後の家計状況を加味した審査を行い、世帯構成に基づく所得基準を設け就学援助の支給対象を広げるところが増えています。

 本市においても、世帯収入が激減し、子どもの教育にも影響を及ぼしかねない世帯が相当いると予想されます。新型コロナウイルスの感染という、ただでさえ大きな不安とストレスを抱えている子どもたちが、親の経済問題にも心を痛めざるを得ない状況をこのまま見過ごすわけにはいきません。今年度に限り、就学援助の対象を新型コロナウイルス感染症の影響で失業者がいる世帯や、世帯収入が減少し経済的に困窮している世帯まで広げることを提案します。

 これまでは前年度の収入を判断基準としていましたが、新型コロナウイルス感染症対策の緊急性に鑑み、前年の課税証明書と、コロナの影響を受けて収入が減少したとわかる収入証明書(毎月の給料明細など)や自営業の場合は通帳のコピーなどによって審査を行い、迅速な対応を図る必要があると考えます。教育長のご所見をお示しください。

 

(2) 子どもたちの不安やストレスの解消

ア 人間関係づくりのエクササイズの実施

 3カ月近くに及び、しかも卒業・入学という学校生活における最も重要な期間を、休校によって家庭で待機を余儀なくされ、先生や友だちとのふれあいを奪われた子どもたちの不安・ストレスは計り知れないものがあります。新聞の投書にも、親仕事でいない長時間の孤独に加え、他の子はスマートフォンなどで連絡を取り合っていた事実を知り、二重のショックを受けた心情が綴られていました。現場の教師や保護者からも、表情が暗い、勉強が手につかない、早くも学校に行きたがらない子が出ているといった、いつもの新学期とは全く違った雰囲気もあると報告されています。

 ただでさえ長期休暇の後には不登校や自殺などが増加する傾向にありましたが、今回の新型コロナウイルスをめぐっては、これまで以上に深刻な事態が広がりかねず、十分な対策を講じる必要があります。

 いま、学校現場では長期休校に伴う授業時間の確保に悩んでいるところだと思います。学習指導要領で示された学習内容を指導するための夏休みの短縮化など、必要な対策を講じるべきとは思いますが、それ以前に子どもたちの不安やストレスを解消し、心と体の健康を取り戻すことが何よりも必要だと考えます。成長過程の子どもたちは、いま自分の心や体に起きている異変を自覚することができないままジレンマを抱え、そのストレスをぶつけたり、発散したりできないまま矛盾を抱え込んでいる状態です。大人である私たちですら、不眠やうつ状態に陥っている人が増えています。

 こうした中、学校再開後の人間関係づくりの工夫を図り、子どもたちがいち早く日常の学校生活を取り戻すことができるように専門家から具体策が提起されています。

 まず、構成的グループエンカウンターのエクササイズです(宮城県教育カウンセラー協会 ()(まき)(かん)()氏ら)。エンカウンターとは「出会い」という意味で、本音と本音の交流という意味でも使われているようで、このエンカウンターをグループで実現しようとするのがグループエンカウンターです。

 これは、「自己開示」と「フィードバック(相手の話を聴く・受け取る)」のバランスを考えて、子どもたちの間に本音や感情交流がある関係(リレーション)づくりを図るものです。

 「自己開示」では数カ月間自宅でどのように過ごしていたか、どのような気持ちだったのかを語ります。「フィードバック」では語ったことを元に、相手に肯定的・受容的な気持ちを伝えます。それぞれの体験や経験の似ているところ、違うところを共有することで、一気に心理的な距離を縮めることができます。子どもの語る本音から、SOSのサインに気づくこともできます。

 また、自己紹介カードの活用(文部科学省 ()()(きょう)()氏ら)も唱えられています。これは「自己紹介カード」を学級の人数分用意し、毎日違う生活グループで交換し合うなどして、徐々に人間関係を広げていったり、「どうぞよろしくカード」を掲示しておき、朝の会で「私は誰でしょう」クイズをグループごとに相談して答えるようにするなど、楽しみながら互いを知ことができるようにするものです。

 さらにイエナプランを取り入れている学校で実施されている「サークル」(車座での話し合い)というものも有効です。これは授業と授業の間に行われるミーティングのようなもので、サークル(車座)になって日常の出来事を発表する中で、擬似的な家族体験を経験し、信頼関係や思いやりの心をつくるというものです。当番の生徒があるできごとを発表し、全員がその生徒に質問、評価を行い、共感的な感情を育成し相手を認め合うというものです。

 こうした様々なエクササイズを通して、孤立し不安を抱えていた子どもたちの間で人間関係がつくられ、仲間意識や安心感を醸成することができます。

学校において、このような人間関係づくりのエクササイズの実施を提案します。教育長のご所見をお示しください。

 

イ 新型コロナウイルス問題を学びの課題に

 「新型コロナウイルス感染症は恐ろしい病気だ」、「世界を消滅しかねない邪悪な存在だ」このような一部マスコミの極端な報道を信じて、必要以上に不安を募らせている子どもたちがいます。こうした子どもたちに真実を明らかにすると共に、人類はこれまでいくつかのパンデミックに対し、協同して立ち向かい、克服してきたという輝かしい歴史を持っていることを教える必要があります。いま、この時期だからこそ、コロナ問題を学習課題にして、人類史における価値を共有し、前向きに生きる契機にしていく必要があります。

 各教科での学びの課題としては、例えば、保健における新型コロナウイルスの特徴とその予防方法の学習、特に日本の公衆衛生がコロナ予防で世界的に大きな評価を得ていること国語の分野では、作文を通して自分の気持ちを述べること、カミュのペストなどを読んで人類の希望を考えること、社会の分野では、公的医療保険制度が整備されていない国で感染者や死亡者が多いことなど、コロナ問題を学びの課題にして、これまで科学や諸制度を発展させてきたことを理解する必要があります。

 こうした学びを経て、子どもたちの不安やストレスを解消していくことを提案します。教育長のご所見をお示しください。