一般質問の要旨   (令和3年12月)

質問者 議席番号 4番  守 岡  等  議員

 

1 聴覚障がい者等の電話リレーサービスの普及について

(1) 市民及び関係機関における制度の周知

毎年、12月3日から9日は「障者週間」と定められています。まさに本日はこの障害者週間のまっただ中にあります。今回は、聴覚障がい者等の電話リレーサービスの問題を取り上げ、障がい者施策の向上に寄与したいと考えます。

  2020(令和2)年6月に「聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律」が国会で成立し、2021(令和3)年7月より電話リレーサービスが公共インフラとして開始され、聴覚障がい者が電話を使い、遠方にいる人とコミュニケーションをとることができるようになりました。

 電話リレーサービスとは、聴覚や発話に困難がある人と一般の人を、通訳オペレーターが手話・文字と音声を通訳することにより、24時間365日電話で双方向につなぐというサービスです。

 あらかじめ登録したパソコンやスマートフォンから専用アプリを立ち上げるとサービスセンターのオペレーターにつながります。画面越しに手話や文字チャットで話したいことを伝えると、それを理解した通訳オペレーターが電話の相手先に口頭で伝達します。逆に相手先の発言内容については、通訳オペレーターが手話や文字チャットを使い、聴覚障がい者や発話困難者に伝えるというものです。通訳オペレーターを間に挟むことによって、これまで難しかった聴覚障がい者等のリアルタイムなやりとりが実現しました。

 この電話リレーサービスは、緊急通報、仕事のやりとり、病院への連絡、家族や知人との会話など、様々な場面で活用が図られるということです。

 熊本地震の時に手話通訳の支援に入った人は「地震の恐怖におびえる70代、80代の聴覚障がい者が、初めて使用した電話リレーサービスから伝わってくる兄弟や親戚の励ましにどれほど元気をもらったことか。大変感激した」と話しています。

  まさに電話リレーサービスは、聴覚障がい者等の生活を変え、社会参加を広げていく契機となるものだと考えます。

 しかし、このサービスは、聴覚障がい者など当事者はもちろんのこと、周囲の多くの市民が知らなければ利用・普及は図られません。モデル事業の段階では、聴覚障がい者が実際にこのサービスを利用しようとして困ったこととして、「電話リレーサービスを使って電話をかけたが、知らない番号なので電話に出てもらえなかった」「電話を取っても日本財団ってなに?サービスは知らないと電話を切られたこともあった」という事例をあげています。

 電話リレーサービスの内容を多くの市民に知ってもらい、このサービスを使った電話が来たときには快く対応する環境を作ることが大切です。

 また、行政機関については総務省から通知が出されていますが、社会福祉協議会、医療機関、学校、放課後児童クラブ、葬祭場など様々な関係機関における制度の周知が必要です。

 電話リレーサービスの市民及び関係機関における制度の周知を提案します。市長のご所見をお示しください。

 

(2) スマートフォン等通信機器を日常生活用具給付等事業の対象に

 聴覚障がい者には、仕事に就くことができずに収入が極めて少ない方々が多数います。東京都の調査(2018年)では、仕事をしていないと回答した聴覚障がい者は71.6%、年収が200万円未満と回答した人が55.3%となっています。収入が少なくパソコンやスマートフォンなどの通信機器購入が困難な方が多いことから、通信機器の購入支援が必要になっています。

 この面では、障がい者総合支援法にもとづく地域生活支援事業の中で日常生活用具給付等事業が実施され、障がい者の日常生活上の便宜を図る用具についての支援制度があります。この事業の対象要件として、@障がい者等が安全かつ容易に使用できるもので実用性が認められるもの、A障がい者等の日常生活上の困難を改善し、自立を支援し、かつ、社会参加を促進すると認められるもの、B用具の製作、改良又は開発に当たって障がいに関する専門的な知識や技術を要するもので、日常生活品として一般に普及していないもの、といったことがあげられていますが、具体的な品目は市町村で定めることになっています。

 まさに聴覚障がい者の日常生活上の困難の改善、自立支援、専門的な知識・技術という面でスマートフォンなどの通信機器はこれにふさわしいものだと考えます。

 電話リレーサービスのモデルプロジェクトを実施している日本財団は、空港などを中心に全国6カ所に公衆電話のような電話リレーサービスの拠点作りを行っています。将来的には公衆電話のように、公共の場に専用の端末がおかれる環境が望ましいのですが、現状の到達点ではやはり個人のスマートフォン使用に頼らざるを得ません。

 いま、電話リレーサービスという聴覚障がい者にとって画期的なサービスが開始されましたが、所得の少ない方でも安心してこのサービスが利用できるように、スマートフォン等通信機器を日常生活用具給付等事業の対象にすることを提案します。市長のご所見をお示しください。

 

2 加齢性難聴者への支援について

(1) 補聴器購入補助制度の創設

年齢を重ねるにつれ、耳が聞こえにくくなる加齢性難聴は、65歳以上で約45%、80歳以上で約80%にのぼるといわれています(国立長寿医療研究センター調べ)。本市における介護認定に関わる聴力調査の結果(令和2年11月1日から令和3年

10月31日)においても「普通に聞こえる」は48.4%、「やっと聞こえる」が

32.6%、「大声で聞こえる」が17.0%、「ほとんど聞こえない」が1.3%と、半数近い方が難聴傾向を示しています。

加齢性難聴は生活の質を低下させ、うつ病や認知症の危険因子になることが医学的に示されています。厚生労働省の新オレンジプランでも、難聴が認知症の危険因子の一つとしてあげられています。

難聴を改善し、社会参加など生活の質を高める手段の一つとして補聴器の使用があります。高齢者にとって補聴器は社会参加を図る上での必需品となっています。また、日本耳鼻咽喉科学会では、加齢による聴力低下があっても、早期のうちに補聴器を使用することで聞こえを取り戻すことは可能だとし、軽度の状態における補聴器使用の予防効果も示しています。

しかし、日本において補聴器を使用している人は難聴者の14.4%にすぎないことが補聴器工業会の調査で示されています。これは欧米の半分以下の数字であり、耳が聞こえないために社会参加が制限されるのは基本的人権の侵害と捉える欧米と、加齢に伴う難聴は仕方のないことなんだとあきらめる日本の文化の相違とも考えられます。

なぜ日本において補聴器の使用率が低いのかという点では、欧米との文化背景の違いだけでなく、経済的負担が大きいという問題もあります。補聴器の価格は形状や性能によって様々ですが、中には30万円を超えるものもあり、高齢の年金生活者にとっては大きな負担です。

現在、両耳聴力が70デシベル以上など重い難聴でなければ障害認定をもとにした補聴器購入補助が受けられませんが、WHO(世界保健機関)は41デシベル以上の場合に補聴器の使用を推奨しています。

70デシベルというのは、相当の重度で、40cmの範囲内でしか聞き取れない、耳元で大きな声で話さないと聞き取れないというレベルです。そういう方だけが現行の補助対象になっているわけですが、WHOがいう41デシベルというのは、時々人の言うことが聞き取れない、基本的には聞こえるがかなり聞き取りづらくなっているというレベルです。WHOはこうした軽・中度からの補聴器使用を推奨しているわけです。

本来、補聴器の支給など加齢性難聴の支援は国が責任を持って行うべきものだと考えます。障がい者に限定した支援ではなく、補聴器の医療保険適用など医学的な側面からのアプローチが必要だと考えます。しかし、国の方針を待つだけでなく、自治体の責任で支援を行うところも増えています。購入補助だけでなく現物支給を行っている自治体もあります。本市においても、広く高齢者の生活の質を高める視点から、補聴器の購入補助制度を設け、加齢性難聴者への支援を行うことを提案します。市長のご所見をお示しください。

(2) エコーホールへのヒアリングループの導入

補聴器を使用している人にとって、ホールや会議室などの空間においては様々な方向から様々な雑音が入り、音声を正しく聞き取ることが困難だという指摘があります。そのため講演会や音楽会、演劇鑑賞などの文化行事に参加したくてもできない状況にあります。

そんな難聴者の「聞こえ」を支援する設備としてヒアリングループというものがあります。これはマイクからの音声を磁気に変え、その磁気を直接補聴器や専用受信機に伝えることでよりクリアな音声を聞くことが可能になるというシステムです。

基本的な原理は、導線ワイヤーを施設内の床などに這わせて輪(ループ)になるように敷設し、マイクから拾った音声をアンプで増幅しスピーカーを通さずにループ線で生じた磁界を通して直接補聴器に届くようにするというものです。空間を通さない分クリアな音声を聞くことができます。

国外はもちろんのこと、国内でも多くの公共施設でヒアリングループが設置され、難聴者の方々の社会参加を支援しています。最近では敷設型ではなく移動可能なものも貸し出されており、様々な場所で活躍しています。また、窓口対応として卓上型ヒアリングループを使用している自治体も増えています。

本市においても、難聴者の生活の質を向上させるために、エコーホールへヒアリングループを導入することを提案します。教育長のご所見をお示しください。