1 新型コロナウイルスワクチンの接種について
 
 新型コロナウイルス感染症の流行は1年以上も続き、健康面からも、経済・教育の面からも、一日も早い収束が望まれます。こうした中で、国内で初めて使用される新型コロナウイルス感染症ワクチンが承認され、人々の期待を膨らませています。
 国内の医療関係者への先行接種が始まっているファイザー製のワクチンは、発症を防ぐ有効性が95%と非常に高いとされており、接種が進むイスラエルではすでに高齢者の感染や入院が減ったという報告もあります。
 今後、体制が整備され、市内でも医療関係者を皮切りに接種が始まりますが、接種率の高まりとともに、免疫を持つ人が増えることによって「集団免疫」を獲得し、ウイルスが広がりにくい状況を作り出すことが期待されます。
 しかし、ワクチン接種について、市民の大きな不安が存在することも事実です。子宮頸がんワクチンに代表されるように、ワクチンの副反応に対する疑問は根深いものがあります。これに加え、今回の新型コロナウイルスワクチンがこれまでの製造方法とは全く質を異にした、人類が初めて体験する遺伝子組み換えワクチンであることから、その安全性に疑問を持つ人もいます。
 
 ワクチンについては、これまで生ワクチンや不活化ワクチンといった、ウイルスを無毒化あるいは弱毒化したものを利用したものが一般的でした。ワクチン精製に手間がかかり、これまでの経験ではおたふく風邪ワクチンが最短で4年、その他のワクチンは10年近く開発に時間を要するのが一般的でした。その一方で、副反応などに対し一定のデータの蓄積があり、新しいウイルスの対しても副反応の予想が立てられるという利点があります。
 しかし、いま、新型コロナワクチンとして国内で使用されつつあるものは大きく分けて二つの種類があります。一つは、英アストラゼネカ社のアデノウイルスベクターワクチンで、チンパンジーの一般的な風邪のウイルス(アデノウイルス)に新型コロナウイルスのタンパク質の遺伝子を組み込むことによってワクチンをつくり、ヒトの細胞に入り込んで免疫抗体をつくるというものです。
 ワクチンのもう一つの種類は、米ファイザーやモデルナ社などの核酸ワクチンというRNAやDNAを利用したものです。これはウイルスの遺伝情報を伝達する物質メッセンジャーRNAを人工的につくって注射でヒトに投与し免疫抗体をつくるというものです。
 これらは遺伝子情報をもとに病原体のタンパクをヒト自身につくらせるという画期的な技術で、短期間に大量のワクチンの製造を可能にするものです。またウイルスの変異に対しても迅速な対応が可能だということです。
 
 このような新技術によって、ワクチン開発が驚異的なスピードで行われているわけですが、看過できない重要な問題点も指摘されています。
 第一に、十分な治験が行われないまま、文字通り世界的な人体実験となっている問題です。各製薬会社で一定数の治験によりワクチンの効果や副反応の状況が示されていますが、本来10万人・100万人単位のデータを積み重ね,時間をかけて検討して客観的な安全性を導き出すという本来のワクチン開発のプロセスが省略されています。
 また治験の結果を海外のデータに頼っていることも問題です。かつて、抗リュウマチ薬のアラバという薬は海外の第3相試験で良い結果が出たからと日本での試験を省略した結果、間質性肺炎により大量の死者が出たという苦い教訓もあります。やはり日本国内の治験をしっかりとやり、日本人の特性に合ったワクチンを開発する必要があります。
 第二に、治験の数が少ないために、ワクチン接種対象の基準が曖昧になっていることです。高齢者への治験が不十分なため、フランス、ドイツ、スウェーデンなどでは高齢者への接種を控えるよう勧告が出されています。日本では高齢者は接種対象の上位に位置づけられていますが、ヨーロッパ諸国との乖離に不安を持つ高齢者もいます。また、妊婦やアレルギーをもつ人についても、製薬会社の基準、WHOの基準、日本政府の基準に乖離が見られ、この点でも不安が出されています。
 第三に、副反応の問題です。
 1)副反応で問題になるのはまず、アナフィラキシーの問題です。新型コロナウイルスのワクチンの副反応の1つとしてすでに接種が始まっている海外では、数は少ないもののアナフィラキシーと呼ばれる急激なアレルギー反応が起こることが報告されています。アメリカ疾病予防管理センター (CDC)は、2020年の12月14日から23日の間にアナフィラキシー反応が21例報告されたと発表しました。21例中19例(90%)が女性で、21例中15例は接種後15分以内に発生、21例中17例はアレルギーの既往があり、アドレナリン注射などによって20例は回復し、帰宅したとの報告がありました。この時期のアナフィラキシー反応の発生頻度は100万接種あたり11.1件であり、インフルエンザワクチン2.5よりも高いことが示されています。
 2)中長期的な副反応への対応も重要です。
 アメリカの唯一の公式な有害事象報告は、先にも述べたアメリカ疾病予防管理センター(CDC)から出されていますが、2021年2月4日までの新型コロナワクチンの有害事象報告として12,044件出されています。そのうち、死亡が653件(5.14%)、永久的な障がい208件(1.64%)、生命への脅威468件(3.69%)、緊急病院に搬送2,772件(21.83%)となっています。
 2月4日の時点では、アメリカ国内で4,477万人がワクチン接種を行っており、死亡数653件をどうみるかは難しい問題ですが、1万2千件を超える有害事象報告があったことは重要です。ハーバード大学はこの数は実際の有害事象の1%に過ぎない見解を示しています。いずれにしろ中長期的には顔面麻痺など神経系の症状が特に若い層に多く見られ、注意を要します。
 さらに、中長期的な視点から、今回の遺伝子ワクチンで最も問題であるのは、遺伝子をヒトの体に注入することにより、正常な遺伝子が組み換えられる恐れがないのかということです。ヒトの体内で組み換えられた遺伝子が、コロナに関する遺伝子のみでなく,遺伝子の他の部位にいかなる影響を与えるのかは全く未知数で、今後の推移を見守るしかないわけです。
 3)副反応の問題では、抗体依存性感染増強の問題も見逃すことはできません。新型コロナウイルスの正式名称は、SARSコロナウイルス2であり、2002年に発見されたSARSウイルスの仲間と分類されています。しかし、SARSのワクチンは動物実験に17年間も失敗し続けており、いまだに有効なワクチンは開発されていません。それはなぜかというと、抗体依存性感染増強(ADE)というワクチン接種によってむしろ重症化する事例が発生し、この問題を克服できない状況にあり、変異しやすい新型コロナウイルスのワクチンについても、同様の副反応がおきてもおかしくないと言われています。
 
 このように、多くの問題点が指摘されている新型コロナウイルスワクチンですが、国の方針はワクチンの接種によって得られる利益(有効性)と副反応などのリスク(安全性)を天秤にかけ、リスクよりもベネフィットが勝るということでワクチン接種を進めるというものです。ただし、強制接種ではなく接種するかどうかは、一人ひとりの判断に委ねられています。
 ワクチン接種が始まろうとするいま、この問題に関心を持てば持つほど,不安を増しているのが実状です。ワクチンによって集団免疫をつくり、経済や教育など日常生活を取り戻したという切実な願いもあります。こうした中で、市民に正確な情報を伝え、市民の不安を取り除くために、市に新型コロナウイルスワクチン接種にかかる相談窓口を設置することを提案します。市長のご所見をお示しください。
 
 
2 一人暮らし高齢者の安心のために
 本市の高齢化率は38.0%(令和元年)と超高齢化社会となっています。その中でも一人暮らしの方が年々増えており、令和2年度は65歳以上のうち1,458人(男534人、女924人)が一人暮らしとなっており、人口流出が続く中、一人暮らしの高齢者も増え続けることが予想されます。
 しかし、一概に一人暮らしが不幸だというわけではなく、「生活満足度は独居高齢者の方が同居高齢者より高い」という調査データもあります。また高齢者の自殺率が独居高齢者よりも同居高齢者の方が高いというデータもあり、ストレスの面でも独居の優位性が示されています。
 これまでは一人暮らしは孤独死につながるというマイナスのイメージが強かったのですが、最近では様々な社会的資源を活用しながら、一人暮らしでも安心して充実した人生が送ることができ、生活スタイルの一つとして確立されつつあるのが実状ではないでしょうか。そして、一人暮らし高齢者が今後地域の中で暮らしやすい生活環境を整えることが、高齢者施策の重要な柱になると考え、以下の2点について問題提起するものです。
 
(1)高齢者共同住宅の立ち上げに向けた支援
 いま本市では一人暮らしの高齢者が空き家を活用した共同住宅を運営するNPO法人が活躍しています。比較的元気な高齢者が低額料金でルームシェアを行うと共に、様々な生き甲斐づくり活動に取り組んでいます。入居希望者も後を絶たず、同じような高齢者共同住宅の増設を求める声も強くなっています。
 この事業を始めるきっかけは、空き家対策がキーワードであり、空き家の有効活用を図るという点でも時代をリードする取組となりました。
 2015年2月に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」は、周辺に深刻な影響を及ぼす特定空家の除去のための対策が主な内容となっていますが、市町村が空家等の活用に努めていく旨も記載されています。本市としても、空き家を地域資源ととらえて、福祉目的に積極的に活用していく必要があります。
 そこで、一人暮らしの高齢者が安心して暮らせるために、高齢者共同住宅の立ち上げに向けた支援を行うことを提案します。具体的には、市内の空き家を借り上げて、バリアフリーなど必要最小限の改造を行い、その後の運営は既存のNPO法人の支援のもとで入居者自身が行うことを基本にします。こうした共同住宅を立ち上げることは、一人暮らし高齢者の安心をつくりだす上で最大の保障となるのではないでしょうか。市長のご所見をお示しください。
 
(2)一人暮らしを支える介護サービスの充実
 一人暮らしを行う上で一番不安なことは、病気や体が不自由になったときの対応の問題ではないでしょうか。これまでは人生の最期を病院や施設で迎えるのがあたりまえという発想のもと、在宅で一人でいることに不安を感じているのだと思われます。しかし、病院死と在宅死の割合が逆転したのは1976年であり、在宅で最期を迎えるのが普通であった時代はそう昔のことではありません。最近ではすみなれた我が家で最期を迎えたいという人も増えており、どうすれば在宅で安心して最期を迎えられるかということがポイントになります。
 介護保険制度には地域密着型サービスがあります。これは住み慣れた地域や自宅での生活を支えるもので、地域包括ケアシステムの中心を担うものです。住民のニーズにも合致し、利用者も年々増えているようです。
 この地域密着型サービスの一つに、定期巡回・随時対応型訪問介護看護というサービスがあります。このサービスは、1回10〜15分の訪問介護を1日4〜5回、毎日使うことも可能です。人の生活の基本は食べる、出す、清潔を保つ。つまり食事介助、排泄介助、入浴介助の3つのケアで生活を支え、24時間対応の訪問医、訪問看護師と連携をとれば、たとえ一人暮らしであっても最期まで自宅で過ごすことができるというものです。
 また、地域での一人暮らしを支えるサービスとして、看護小規模多機能型居宅介護というサービスもあります。これは24時間・365日の訪問看護と訪問介護、デイサービス、ショートステイを同一事業所で提供するサービスです。 利用者の状況に応じて、事業所への「通い」を中心に、自宅への「訪問」、施設への「泊まり」を柔軟に提供するものです。
 しかし、こうした在宅での高齢者を支える定期巡回・随時対応型訪問介護看護や看護小規模多機能型居宅介護サービスを行う事業者は本市にありません。山形市内の定期巡回・随時対応型訪問介護看護サービスを利用している状況にあり、利用者もサービス提供者も不便な思いをしているのが実状です。
 全国的にもこのサービスを実施している自治体は少なく、2017年の厚労省の調査で、定期巡回・随時対応型訪問介護看護など24時間対応のサービスがあると答えたのが596自治体(37.7%)、なしと答えたのが983自治体(62.3%)でした。要介護認定者に占める利用率は0.36%と大変低くなっています。
 なぜこのサービスが進まないのかという点では、@このサービスが地域住民や事業者に十分理解されていない、A事業者にとって住民ニーズが少なく、採算があわない、人員配置や確保が難しい、B介護報酬上の加算や減算が多く、給付管理が複雑でケアマネジャーに敬遠される、C利用者からみて夜間訪問に遠慮がある、といったことがあげられます。
 一方で、このサービスを実施している自治体では総合病院に付属したりサービス付き高齢者向け住宅の整備とあわせて実施するところが多くなっています。利用者やその家族からは大変喜ばれているだけでなく、事業者にとっても「24時間契約を結んでいると必要に応じて柔軟に訪問できる。定期的に訪れることで利用者の変化に気づける。何よりも利用者の在宅での安心できる介護に寄り添える」といったメリットを指摘する声もあります。
 もともとこのサービスは2025年の地域包括ケアシステム実現の中心を担うもので、地域密着型サービスは市が責任を持って事業計画を立て、配備・指定を行うものです。
 利用者から言えば夜間サービスがないから利用しない、事業者から言えばニーズがなく採算がとれないから実施しない、といった鶏が先か卵が先かの議論を行っていては、一向に前に進みません。
 こうした中、中長期的にこの分野のサービスを前進させ、たとえ一人暮らしでも地域で安心して生活できるまちをつくるために以下の事項について提案します。
@事業者向けの研修会を実施して、24時間サービスの意義を知ってもらいます。
A研修の中で、初期投資に使える国の補助金を示すとともに利用予測に向けたデータを  提供し、理解を培います。
B市と事業者との間でサービス提供時間の契約を結び、24時間体制を整える事業者への 支援を進めます。
C利用者への宣伝を強め、体験事業などを通してサービスへの理解を培います。
 かつて他人に家に入り込んでほしくないと、ホームヘルプサービスがまだ一般的でなかった時代に、ホームヘルパーの数を増やせばニーズが高まるという世論が沸き起こり、その後介護保険制度も整備され、今では日常的なサービスとなり、ヘルパー不足ともいわれる時代となりました。
 在宅での24時間対応は、今後ますます必要になるサービスです。中長期的な視点を持って地域包括ケアシステム、地域密着型サービスの核として、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、看護小規模多機能型居宅介護サービスを整備し、一人暮らしを支える介護サービスの充実をはかることを提案します。
 市長のご所見をお示しください。
 
以上