議席番号1番、日本共産党議員団の守岡等です。
 
1 ノーマライゼーションの普及啓発について
(1)共生社会づくりに向けた取り組み
 今年の7月26日に相模原市の障がい者支援施設で大変痛ましい事件が起きました。この事件の背景には様々なものがあり、いま解明が進められていますが、犯人の言動から見て、障がい者を差別する優生思想が大きく影響していることも事実だと考えます。優生思想とは「障害の有無や人種等を基準に人の優劣を定め、優秀な者にのみ存在価値を認める」という思想です。日本でも「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する」ことを目的に掲げた優生保護法が1948年に制定され、障がい者やハンセン病患者などが子どもをつくれないように手術を強制されました。1996年に「母体保護法」に改正されましたが、優生思想の側面が完全になくなったわけではありません。
 また、今回の事件は、少数者に対する憎悪に基づくヘイトスピーチやヘイトクライムが平然と行われる閉塞的な社会状況も反映しているのではないかと思われます。
 私は今回の事件を契機にして、障がい者が置かれている状況をきちんと整理して、障がい者が安心して暮らせる社会をつくること、決して今回のような悲劇を繰り返してはいけないことを痛感しています。そのためには学校教育・社会教育の場でノーマライゼーション、人権教育の強化を図るべきだと考えます。
 優生思想ほど極端でなくとも、働くことのできない、あるいは十分な意思疎通ができない障がい者を差別する風潮があります。高名な政治家や小説家が露骨に税金の無駄遣いを指摘する残念な場面に直面することもあります。
 一方で、障がい者一人ひとりが、豊かな感性のもとで日々一生懸命生活していることは、家族や障がい者施設で働く支援者がよく知っていることです。私の連れ合いは障がい者施設で働いていますが、利用者の日々の生き生きとした生活の様子を報告してくれます。
 私は、何よりも障がい者をめぐる様々な差別的事象が発生する背景には、障がい者との接点が非常に少なく、障がい者への理解が不足していることがあるのではないかと考えます。障がい者の日常を理解しないまま、ある人はかわいそうだ、またある人はいない方がいいという短絡的な考えで障がい者というものを判断してしまう傾向があるのではないかと思います。そうした誤解・偏見を取り除き、大切ないのちという価値基準に立脚して障がい者の問題を理解するためには、子どもたちや大人も、もっともっと障がい者との接点が増えるような仕組み作りが必要ではないかと考えます。
 上山市第7次振興計画の第2章では「障がい者の社会参加と障がい者理解の促進」ということでノーマライゼーションの普及啓発がうたわれています。そのためには共生社会づくりを展望した事業展開が必要となりますが、私は市民が主体的に学習に参加することにより、多角的にノーマライゼーションの社会づくりを考える系統的な学習講座の実施を提案します。
 この講座においては@障がい者の生の声を聞き、障がい者の生活実態を把握する、A障がい者を支援する施設や家族の声を聞き、必要な支援の実際を学ぶ、B障がい者福祉制度の進んだ国や自治体の方を招き、進んだ制度およびそれを生み出した社会背景について学んでいく、C施設などでのフィールドワークを実施し、実際の支援について学ぶ、D上山市でのノーマライゼーションの普及啓発の具体化を問題提起する、といったテーマを系統的に学習し、そして実践に向けた具体的方針を問題提起するというものです。企画の段階から市民や障がい者が参加し、手作りの事業を進めていくことは、地域住民が共生し、支え合うノーマライゼーション社会を作り上げる上で有効な取り組みだと考えます。
 ノーマライゼーションの普及啓発をはかる系統的な学習講座について、市長の御所見をお示しください。
(2)障がい理解教育のカリキュラム化
 また、子どもたちが障がい者との接点を増やすために、障がい理解教育を各学校の教育課程に位置づけることが必要であると考えます。障がい理解教育とは、共生社会の実現に加え、多様性への理解を培うことを目的に実施されるものですが、次のような発達段階に応じた障がい理解を培うことが目標となります。
 小学低学年では障がいのある人が世の中にいることに気づく段階です。中学年では障がいのある人の生活や特性を自分と比較しながら感じ考え社会的な痛みを心で感じる段階です。高学年で障がいに対する自分の態度を形成し、それを受容し、支援行動などの実践につなげる段階です。
 こうした発達段階に応じた障がい理解教育カリキュラムを整備し、障がい者への理解を培い、ノーマライゼーションの普及をはかることが必要だと考えます。教育長の御所見をお伺いします。
 
2 社会環境に配慮した小中学生へのフォーローアップ
(1)スクールソーシャルワーカーの増員
 近年、経済的あるいは社会的な背景が、子どもの教育に少なからぬ影響をもたらしていることが報告されています。そうした家庭的、社会的背景も考慮したフォローアップが求められています。
 具体的な事例として、第一に長期休業後の子どもたちの体重減の問題があります。本来であれば成長過程の子どもたちは長期休業後には体重が増えているはずですが、家庭において十分な食生活が保障されず、学校給食が主要な栄養源になっているがために、長期休業後の子どもたちの体重が減少するという問題が保護者から指摘されています。朝食を食べない子どもたちが1割前後いるようですが、この子たちの長期休業期間中の食生活も含め、休業開けの健康状況把握に特段の配慮が必要と思われます。
 第二に、歯科検診受診率の問題です。歯科検診を受け、医療機関の受診を勧められ実際に受診している割合は、小学校で約90%です。残り10%の子どもたちに対しては個別に声かけを行っているということですが、なかなか受診しないという問題があるようです。貧困は何よりも歯に現れるという歯科医の意見を聞いたことがあります。治療が必要でも経済的な問題などで受診できず虫歯がいっそうひどくなるという現状があるそうです。現在当市では子どもの医療費無料制度があるので、そうした心配はないと思うのですが、それでも受診しない1割の子どもたちの状況について、やはり家庭での検診に対する理解不足などが心配されます。
 第三に就学援助の問題です。現在、本市において150名(117世帯)の子どもたちが就学援助を受けています。本市に限らず、山形県内の各市町村の生活保護受給率が全国平均を下回り、本来保護が必要な世帯のうち受給している世帯の割合(捕捉率)が低いことをこの間指摘してきました。就学援助も同様の傾向があります。この問題の背景には生活保護や就学援助を受けることを恥じらう地域性の問題があります。社会保障・教育保障としての位置づけを明確にして、生活保護や就学支援を受け子どもたちが安心して生活できる環境の整備が必要です。
 こうした就学援助の捕捉率調査をはじめ、歯科検診の問題、体重減の問題など、子どもの家庭環境・社会的背景を把握し、子どもたちの不安を取り除き、また保護者にとっても必要なサービスや支援につなげるためにはスクールソーシャルワーカーの役割が重要になってきています。
 現在、本市においては2名のスクールソーシャルワーカーが配置されていますが、厳しさを増す経済環境・社会環境にともない、国の方でもスクールソーシャルワーカーが学校に必要な職業として法令に明記する答申が出され、将来的には全公立小中学校への配置を目指すとしています。さらにスクールソーシャルワーカーという名称を使うには社会福祉士や精神保健福祉士など、専門の資格を持つ人の人材確保が必要になってきます。
 厳しい社会環境のもとで、子どもたちの教育を保障するために、スクールソーシャルワーカーの増員、全小中学校への配置が必要と考えますが、いかがでしょうか。教育長の御所見をお伺いします。
 
3 小中学生の学力低下克服への手立てについて
(1)学力低位層を対象にした放課後、週末も利用した補習の実施
 この間、我が国では日本国憲法や教育基本法の崇高な理念に基づき、教育環境の整備が行われ、世界でもトップクラスの教育を実現してきました。
 一方で、教育をめぐる様々な克服しなければならない課題があるのも事実です。「国連・子どもの権利委員会」は「子どもの権利条約」に基づいて日本政府に対し、いくつかの重要な勧告を行っています。特に日本の競争的な教育システムが子ども間のいじめ、不登校、中退、自殺の原因となっており早急な是正を勧告しています。
 私はこうした国連の指摘する問題、競争的な教育システムの改善が、子どもたちの学力の低下を克服するカギになるのではないかという視点から問題提起していきたいと思います。
 山形県は2007年から文部科学省が実施している全国学力・学習状況調査の結果などを分析し、山形県の小中学生の学力が低下傾向にあり、とりわけ算数・数学や国語の分野における応用力でその傾向が顕著にみられると分析していますが、当市の児童・生徒においても同様の傾向があるようです。ある年の学力テストでは、公式をあてはめれば解ける基礎問題では78%が解答しながら、応用力を試される問題では正解率が全国平均を4.4ポイント下回り46.4%の正答率、全国31位という結果に終わっています。
 それとは別に、市内の中学生の評価テストの結果を分析してみました。今年の6月段階では5教科平均350点台で、本来であれば350点をピークに釣り鐘型に分布していくのが望ましいのですが、200点以下(これは一科目40点以下の学力低位層と位置づけられています)が横に広がっているという分布図になっているのが特徴的でした。これが7月段階では5教科平均350点以上をピークにしながら150点未満が1割近くおり、もう一つのピークをつくっていたのが特徴的でした。これは学力分布のふたこぶ型という、高位層と低位層の学力格差が生じていることを示すものになっています。 
 私は、このようなふたこぶ型の学力格差が生じている中で、小中学生の学力低下傾向を克服するためには、なによりも「一人も見捨てない教育」を合い言葉に、平均点40点以下の学力低位層の引き上げを図っていく必要があると考えます。
 学力世界一といわれるフィンランドでは、進んだ教育保障制度、修士号を取得した教師の資質、20人前後の学級運営などがその要因としてあげられますが、なによりも@すべての子どもがわかるまでを基本に、平等の教育が徹底され、A特別支援教育や学力差に応じた個別指導の実施などを通じて、国全体の学力差を小さくすることが学力世界一の要因になっていることが指摘されています。
 学力低下傾向の克服のためには、平均点40点以下の学力低位層の引き上げをはかることが急務だと考えます。このことは学力のボトムアップをはかるだけでなく、児童・生徒が楽しい学校生活を送る上でも非常に重要なことだと考えます。本来、学校は楽しい場であるはずです。勉強は子どもたちにとって誇りと自信を身につけるものです。しかし今、後ほど述べるアクティブ・ラーニング・学び合いの手法を取り入れ、学力向上に向けた実践も行われつつありますが、どうしても授業について行けない子どもたちがいることも事実です。
 私はひとりも見捨てない教育の実践と、学力向上に向けたボトムアップのために、補習の強化を提案します。いま、各小中学校ごとに、長期休業中の補習授業や教室や図書室を開放した補習、あるいは中学校では数学・英語、小学校では漢字や計算などを重点的に学力低位の子どもを指名して補習が行われているようです。現場の先生方のご奮闘に対し、心から敬意を表したいと思います。
 こうした各学校ごとに行われている補習について、市全体の取り組みとして強化する必要があるのではないかと考えます。とりわけ、学力低位層の補習については放課後や週末も利用し、専任の教員やボランティアを配置して、個別指導を中心とする補習を実施し、学力向上に努めるべきだと考えますが、いかがでしょうか。教育長の御所見をお伺いします。
(2)一斉授業から協同的な学び合いの全面実践へ
 いま日本の教育制度は、明治5年の学制公布、そして戦後の民主教育への転換に引き続く第3の大改革を行う途上にあります。それは少子化と経済のグローバル化にともなう市場と雇用の国際化を展望して、グローバルな社会人に求められる基礎的な能力(主体性、コミュニケーション能力、課題解決能力)といった、これまでの詰め込み教育からの脱却をめざすものです。
 高等教育の改革にあたってはすべての授業等を英語で行うスーパーグローバル大学など、新たな大学間格差を生み出しかねない問題もあり、またそれに伴い、中等教育についてもこれまでの単線型から複線型・分枝形のシステムへの転換も検討されており、十分な検討が必要な課題も多々あります。
 しかし、こうした改革の論議で検討されているこれまでの一斉授業を見直し、アクティブ・ラーニングへの転換は、学力低下克服の観点から、あるいは競争原理とは違う協同の原理に基づいた新たな人間関係を構築するものとして非常に重要なものだと考えます。
 これまでは教師がみんなの前で講義・板書を行い、生徒がそれをノートに書き写したり発言するという一斉授業が我が国の教育手法の中心でありました。しかし、今やこうした一斉授業を行う国は、先進諸国ではほとんど見受けられなくなりました。先進諸国の小中高等学校の教室では、少人数グループのディスカッション形式の授業が一般的となっています。
 こうした学校教育の変化の背景にあるのは、受験勉強の暗記中心の学び方では、知識や情報処理能力の形成や、現実社会の問題解決をはかったりコミュニケーションをはかるという、時代の求めるニーズに対応しきれないということです。
 こうした21世紀型の学校を求めて、いま国の方からアクティブ・ラーニングが提唱され、次の学習指導要領改定で出される予定です。文部科学省によるアクティブ・ラーニングの定義は「教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称で、学修者が能動的に学修することによって、認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験を含めた汎用的能力の育成を図る」とし、「発見学習、問題解決学習、体験学習、調査学習等が含まれるが、教室内でのグループディスカッション、ディベート、グループワーク等も有効なアクティブ・ラーニングの方法である」とされています。
 また、山形県は探求型学習推進プロジェクト事業を今年度から開始し、「主体的に学習に取り組む態度」を養う「探求型学習」の実践を進めています。これもアクティブ・ラーニングの一環だと県では説明しています。
 また、アクティブ・ラーニングの一つとして協同的な学び合いというものがあり、市内でも中川小学校で実践が進んでいます。県の探求型学習が学力の向上に主眼を置いているのに対し、協同的な学び合いは全体の協同で、全員が課題達成をめざすというもので、学力向上だけでなく人間関係の向上もはかられるという特徴を持っています。
 協同的な学び合いを行っているところでは、協同学習と称して課題解決に向けグループに分かれて話し合い、正解にたどり着くプロセスを重視し、そしてそれを発表することによって説明する力、表現力を養っています。黙って一人で問題を解くのではなく、みんなで話し合いながら進めていくことによって、普段であれば質問をためらうような子どももグループの中で気軽に質問でき、理解している子どもも友達に教えることによって知識を深めるという効果があるようです。こうした取り組みを通して、応用力や活用力を身につけ、思考力や表現力の向上にもつながっているとのことです。
 そして、協同的な学び合いの最大の特徴は、全員の課題達成を目標にするということです。協同的な学び合いの実践の中で、学力低位層の子どもはもちろん、クラス全体の成績が向上するそうです。そして学力向上だけでなく、協同の取り組みを通じて人間関係が向上し、孤立やいじめ、不登校という問題の解消にもつながることが報告されています。
 このような子ども集団の持つすばらしい力が最大限に発揮される協同的な学び合いを、教科や学年の壁も越え全面的に実施し、実践の積み上げと検証を行い、すべての学校、学年、教科で実施していく必要があると考えます。教育長の御所見をお示しください。
 
以上