請願第2号、「核兵器禁止条約への日本政府の署名と批准を求める意見書の提出に関する件について、願意妥当とし、採択すべきという立場から討論します。
 採択を求める第一の理由は、日本政府が条約に反対する根拠としている核抑止力論、核の傘原理は破綻しているということです。
 核抑止力は際限のない軍備拡大競争を招きます。常に相手よりも上位に位置する必要性があります。このことがアメリカの財政赤字を招き、貧困をはじめ様々な矛盾の根源になっています。
 また、核抑止力は一触即発の緊張をもたらします。北朝鮮はなんとしてもアメリカ本土に届く長距離弾道ミサイルに核兵器を積んでこそ抑止力となると考えています。そのため北朝鮮は常に監視され、アメリカ本土を直撃する長距離ミサイルを開発した段階で、攻撃される危険性があります。かつてのキューバ危機がそうでした。キューバ危機と同じレベルの危機が迫っています。
 また、抑止力を強め、徹底的な報復力を持つことは、先制攻撃の誘惑を強めるという問題があります。「先に撃った方が早い」「先に攻撃した方が被害も少ない」というように抑止力と先制攻撃は常に裏腹の関係にあります。事実、アメリカ政府は一貫して核先制使用の方針を保ち続けています。
 こうしたことから潘基文前国連事務総長は「抑止力は幻想だ」と断言しました。人類の生存にとってまさに核抑止力論は大きな障害となっていることを理解すべきです。
 
 核兵器が安全保障にとって本当に有効なのかという核抑止力論に対する疑問をアメリカ国内で最初に提起したのは、アメリカ外交の重鎮ヘンリー・キッシンジャーでした。2007年の1月にキッシンジャーはアメリカの核戦略の中枢にいた人たちと共に、「核兵器のない世界」を呼びかけました。これは決して人道的な見地からではなく、テロリストが核兵器を手にする前に核兵器をなくさなければならないという、アメリカの権益、アメリカの安全保障を守る見地からのものでした。喜んで自爆攻撃を行う国際テロリストに核抑止力論は成り立ちません。核抑止論では解決できない危機回避のために、核兵器廃絶を求める声は、アメリカ政府の中枢からも起きているわけです。
 
 また、日本にとっても核抑止力、核の傘は機能していないことを直視すべきです。日本政府がかたくなに条約参加を拒否する背景にはアメリカ政府の要求があります。アメリカ政府は秘密裏にではなく,堂々と文書で日本政府に参加するな,賛成するなといってきました。しかし、そのアメリカ政府自身が、もし日本が他国から核攻撃を受けた場合にどうするかという点で、アメリカは報復は行わない、日本は降伏すべきだという無責任な見解を、キッシンジャー始め多くの歴代アメリカ政府高官が述べています。日本が核攻撃を受けたとしても、アメリカ本土に影響が及ぶような対策は取れないといっているわけです。アメリカ国民の生命と財産を守る上では当然のことと考えられます。日米安保条約そのものが日本国民の生命や財産、日本の国土を守ることを前提にしていない以上、当然のことであります。
 このような核抑止力論が破綻している状態で、核攻撃を防ぐためには、やはり核兵器廃絶しか道はないのではないかと私は考えます。
 
 採択を求める第二の理由は、本市において1995年3月1日に核兵器廃絶平和都市宣言が採択され、唯一の被爆国としてわが国は核兵器を永遠に廃絶することを国の内外に訴えていくことを宣言しているということです。
 核兵器がいかに非人道的なものであるか、広島や長崎の原爆資料館を訪ねれば一目瞭然であります。そこにいた人間が蒸発し、影だけが燃え尽きている写真。生き延びた人々も塗炭の苦しみを強いられた後遺症の問題。資料館にはオバマ大統領やローマ法王のメッセージが記されています。
 オバマ前大統領はアメリカ大統領として核抑止力論に立って、核の先制使用も辞さない態度を表明していました。しかし、原爆資料館で被爆の実態をつぶさにみて、その態度を改め、核のない世界を主張するに至りました。
 ローマカトリックも、かつては戦争や原爆も神の意志だと語っていた時代がありました。その後ヨハネパウロ2世が来日し、原爆資料館を見学し、被爆の実態を理解した結果、ヨハネパウロ2世は、原爆投下は神の意志ではない。人間の仕業だと言うことを明言しました。私は、もし被爆の実情を理解していない人がいたら、ぜひ広島・長崎の原爆資料館に行くべきだと考えます。その上で、核兵器の存在を認めるのならばそれでけっこうだと考えます。
 いま、2018年4月1日現在、全国で239の地方議会で意見書が採択され、県内でも12市町村が採択しています。核兵器廃絶平和都市宣言を行っている本市が率先して意見書を採択し、全国の市町村を励ましていく必要があると考えます。
 国連で、今回の核兵器禁止条約をつくる先頭に立ったのが、日本国憲法と同じような常備軍を廃止した憲法を持つコスタリカでした。本来であれば平和憲法を持つ、そして唯一の被爆国である日本こそがこの運動の先頭に立つべきです。そして核兵器廃絶平和都市宣言を行っている本市こそがその先頭に立つべきだよ考えます。こうした立場で核兵器禁止条約の署名と批准を求める請願は願意妥当と考え、請願第2号核兵器禁止条約への日本政府の署名と批准を求める意見書の提出に関する件は採択すべきと申し上げ討論とします。