子どもの自己肯定感を高める
 
 
脳科学からみた「祈り」  脳科学者 中野信子
 
・人間は本能的に「他者を利する行動」を志向するようにつくられている。
・愛情や慈しみの感情を抱いたときに脳から分泌(ぶんぴつ)される「オキシトシン」と いう神経物質
  ↓
 他者に愛情を向け思いやりを持つことが、私たちの幸福感にとって如何に大きな意味を持つかがわかってきた。
 
第1章 脳に与える祈りの影響
・ポジティブな祈りは脳にどのような影響を与えるか
 ベータエンドルフィン、ドーパミン、オキシトシンなど脳内快感物質が分泌される
・前向きな心でいるとき、笑顔の時、感謝の気持ちを持つとき、脳内には脳内快感物質が分泌される
 
オキシトシン=愛情ホルモン
・大切な誰かを思うとき、心がその人への愛情にあふれるとき、脳内にはオキシトシンが 多量に分泌される
・誰かのために祈る、その祈りがそのまま自分の脳にも良い影響を及ぼす
 
<財団法人日本青少年研究所が日・米・中・韓の四カ国の高校生を対象に実施した意識調査(2010年)>
日本の高校生が他の3カ国に比べて著しく自己評価が低いという結果が出た
・「私は価値のある人間だと思う」という項目に対し全くそうだと答えた割合 
 日7.5%、米57.2%、中42.2%、韓20.2%
・「私は自分に満足している」という項目に対し「全くそうだ」と答えた割合
 日3.9%、米41.6%、中21.9%、韓14.9%
・「自分が優秀だと思う」という項目について「全くそうだ」と答えた割合
 日4.3%、米58.3%、中25.7%、韓10.3%
 
<自分が誰かの役に立っている><愛されている>という実感が如何に幸福感となり「生きる力」になるかの好例→フランクル「夜と霧」
・強制収容所から生還したヒトはけっして体力に勝った人ではなく、「生きる意味」を持っていた人だそうだ
・極限状態の中でも「自分が誰かの、世の中の役に立っている」「誰かに愛されている」という実感を持ち続けることができた人は「生きる意味」と希望を見失わなかった
 
<エピローグ−逆行こそが脳を鍛える>
・逆境はあった方がいい、逆境の多い人生は、むしろ最高に幸せな人生になり得る
 単なる精神論ではなく、脳の仕組みをきちんと踏まえたうえでの結論
 
 
ポストコロナ期を生きるきみたちへ 内田樹 編
 
◎後藤正文
カート・ヴォネガットの言葉(国のない男)より
「芸術では食っていけない。だが、芸術というのは、多少なりとも生きていくのを楽にしてくれる、いかにも人間らしい手段だ。上手であれ下手であれ、芸術活動に関われば魂が成長する。シャワーを浴びながら歌を歌う。ラジオに合わせて踊る.お話を語る。友人に宛てて詩を書く.どんなに下手でもかまわない。ただ、できる限りよいものをと心がけること。信じられないほどの見返りが期待できる。なにしろ、何かを創造することになるのだから。」
 
◎山崎雅弘(戦史・紛争史研究家)
・新型コロナウイルスへの対応では、韓国や台湾、中国などで「安全に素早く行える新しい検査方法」や「マスク不足にならないようにする販売システム」、「無人で消毒や料理の提供を行える機械」などが次々と発案、発明された。
 日本人が学ぶことは、上司の許可を待ってから何かをつくるのではなく、まず自分が「良いアイデアだ」と思うことを具体的な形にする姿勢だ。
 
◎平川克美(文筆家) コロナと価値のものさし
・経済かコロナ対策かという二者択一の問題の立て方が間違っている。コロナか経済かと いう問題設定こそが問題なのだ。
・これまで私たちは経済発展によって何を獲得し、同時に何を失ってきたのかについて、 立ち止まって考えてみる必要がある。
・世の中で本当に必要な仕事の多くは、汚い、きつい、危険という3K仕事なのに、当然受け取るべき報酬を受けていない。それに対し世の中にさして影響を与えるとは思えない仕事に就いている連中が、不当とも言える収入を得ている。
 
 
人のために祈ると超健康になる! 橋徳
 
・オキシトシンが発見されたのは1906年 イギリスのヘンリー・デール
・人から優しくされたり、愛されたりするとオキシトシンが産生される。一方、人を愛し たり、人に優しくされたりすることでも、オキシトシンがたくさん出る。
 他者のための行動、利他の行動は、オキシトシンを大きく増やす。
 
<オキシトシンが足りないと、何が起こるか>
・ラットの母子分離実験
 生まれたばかりの子ラットを生後すぐに母親から引き離し、3時間引き離しまた戻すと いう作業を2週間続ける
   ↓
 オキシトシンの分泌量のとても少ないラットになる 性格は攻撃的、喧嘩をしやすい
 鬱になってしまう者もいる
 
・オキシトシンを媒介とした育児行動は世代的に継承されていく
・虐待が次の虐待を引き起こす、この現象もオキシトシンとの関わりから理解することが 可能
 
<対立し合う二つの双子ホルモン>
・オキシトシンが減るのと反比例するように増えるホルモン=バゾプレッシン
・視床下部でバゾプレッシンの濃度が上昇すると、不安が増強し、他者への攻撃性が増す。 一方、オキシトシンはこれらを軽減させる働きがある。
 
・常に私たちは、利己的なバゾプレッシンと、利他的なオキシトシンの間で、引き裂かれ てきた。生まれながらに善でもなく、生まれながらに悪でもなく、オキシトシンとバゾ プレッシンという2つのホルモンの相克をそのままに、生きなければならない存在。そ れが人間。
 
・オキシトシンは、通常、人と人との交流によって生じる。相手を大切に思う心から、オキシトシンが分泌される。
 
<瞑想>
・自己と他者の境界がなくなるような感覚
・自分が孤立したものではなく、万物と分かちがたく結ばれている感じ
・時間を超越し、無限にひらけてくるような感じ
       ↓
   このような意識状態にオキシトシンが関わっている
<町田宗鳳「ありがとう瞑想」>
・最初の10分間は「うれしい、楽しい、ありがとう」の言葉に合わせて、「吸って、た めて、吐く」という3段階の横隔膜呼吸法(腹式呼吸)を行う。
・次に、ひたすら「あ、り、が、と、う」を大声で発声し、参加者全員の唱える「ありが とう」の声の中に自分の声を埋没させていく。
       ↓
発声による刺激、合唱の和音を聞く聴覚刺激に相まって、強力なオキシトシン分泌が促される
 
橋徳氏は、実際にありがとうを唱えながら、利他の瞑想を行ったところ、オキシトシンの上昇を確認にした(世界初)
 
<LKM瞑想>Loving kindness meditation
・まず身近な人(家族、友人など)を想定し、その人の幸せを心の底から祈ることを始める
・その後、祈りの対象をよく知らない人にまで広げていく
・その後、自分が嫌いな人、自分を嫌っている人、疎遠にしている人などをも、祈りの対 象としてその人たちの幸せを真剣に祈るトレーニングをする。
・最終的には、人類、地球、宇宙にまで祈りの対象を拡大する
 
・LKMのトレーニングを積むことで、利己的だった脳の神経回路が利他的なものに変わっていく。その神経回路の構築に、オキシトシンが関わっている。
 
・オキシトシンは、人と人とが積極的で、好意的な絆のループを築く促進剤として働き、人を思いやったり愛したりすることを手伝ってくれる。
・このオキシトシンによって促進される人との付き合いを永く維持できれば、友好の輪がくずれることはない
・活発化したオキシトシンによる積極的な社会活動は、やがて地域全体に及び、結果として多数の人たちの利他の行動が平和で住みよい社会を作り上げることになる。
 
・母親の子育ての仕方が世代を超えて受け継がれるのと同様に、人と人の間の「好意」「共感」「友情」「愛」の感情も世代を超えて受け継がれていくだろう。
 
 
オキシトシンがつくる絆社会 モベリ
 
ボウルビー
子どもが両親と一緒にいることがどれほど重要であるか
<第二次世界大戦中の疎開>
・当時、ロンドンの多くの子どもたちが、地方の家に一時的に送られた。
・終戦後、影響調査。
 親元を離れ田舎で生活しなければならなかった子どもたちの方が、空爆にさらされるロ ンドンに親と共に残留した子どもたちに比べ、心理面で不安定だった。
 
■生きていく上で欠かせないオキシトシンはどうすれば出てくるのか
誰かに触れてもらい、誰かと身近に寄り添えばいい
 
■NHK番組 「つながり孤独」
・インターネットを介する人との関わり合いは、直接空間をともにして関わり合うこととは結局の所異なる。
・いつまでも満ち足りない空虚感が続く。
・なぜなら、そこには哺乳類全般に求められるふれあいやよりそいが存在しない。
(有名なハーローの実験)
 
 
自己肯定感の教科書 中島輝
 
<自己肯定感とは何か>
自己肯定感は6つの感によって支えられている
@自尊感情…自分には価値があると思える感覚
A自己受容感…ありのままの自分を認める感覚
B自己効力感…自分にはできると思える感覚
C自己信頼感…自分を信じられる感覚
D自己決定感…自分で決定できるという感覚
E自己有用感…自分は何かの役に立っているという感覚
 
■自尊感情
・平成25年度内閣府「わが国と諸外国の若者の意識に関する調査」
 7カ国13歳から29歳の若者を対象にした意識調査
 日本人は諸外国の人と比べ、自尊感情が低い
 自分自身に満足してる 7.5%
 どちらかといえば満足している 38.3% 計45.8%
 アメリカ、ドイツ、フランス、韓国など満足している、どちからといえば満足している は70〜80%
 
■自己受容感
・アドラー心理学の「I'm OK, I'm not OK」の状態
・人間は完璧ではない。不完全な自分を受け入れる。そして、その中から肯定的な側面を 見いだす。
・ありのままの自分を認めたら「折れない心」が培われる
・自己受容ができている人は、様々な経験も乗り越えられ、共感力が磨かれ、信頼され、 愛される存在となる。
 
■自己効力感
・親子の関係の中では、母親の自己肯定感が低くなっていると、子どもの自己肯定感は弱 くなっていく。
・自己肯定感の低さは、世代間をまたいで連鎖する。
・肯定的な言葉が潜在意識を変えていく
 否定語を肯定語に変えるリフレーミング
 
■自己信頼感
・勇気と自信は自分でつくることができる
・瞑想が有効
 瞑想は心をリラックスさせ、不安、恐れ、心配といった人間が根源的に持っている防衛 本能の働きを緩めてくれる
 
■自己決定感
・人間の感じる幸福度は、「私が決めた」という「人生を自分でコントロールできている 感覚」に比例する。
・2018年に神戸大学が2万人を対象に行った研究でも、自己決定感の高い人は人生の幸 福度も高いという結果が出ている。
・選択に悩んだときの「レファレントパーソン」の活用
 尊敬できる人を想像し、その人だったらどうするかをイメージ
 
■自己有用感
・周囲の人や社会とのつながりの中で自分が役立っているという感覚
・ディズニーやスターバックスなどアルバイトが優れた働きをみせている組織では、現場 で働く人同士が褒め合う仕組みが導入されている。
・自己有用感が高くなると、私は社会の一員であり、私の存在は社会の役に立っていると いう安心感が湧き出る
・2012年内閣府の幸福度に関する研究会の調査…自己有用感が低いと現在の幸福感が低 い、という結果が出ている。
・ハーバード大学が75年以上にわたり700人以上の人を対象に追跡調査を行った「幸福」 に関する研究では、「幸福度が高い人は人間関係が良好」という結果が出ている。
 人間関係が良好であれば、自己有用感を実感でき、幸福度が高くなる。
 
<自己肯定感を高める方法>
@「やったー!」のポーズ
・朝、顔を上向きにして両こぶしを上に突き上げ「やったー!」のポーズをとる。
・肯定的な気分で1日を始める。
・朝だけでなくやったーポーズで心がリセットでき、リフレッシュできる。
 
A鏡の中の自分にポジティブな言葉をかける
・自分にポジティブな肯定語を伝えるだけで、潜在意識が書き換わる
 
B30秒のマインドフルネス瞑想法
・丹田(おへその下)に意識を集中 
・ゆっくりと鼻から息を吸う
 地球のマグマを意識するイメージ
・ゆっくりと口から息を吐ききる
 (みながしあわせになりますようにと心の中でつぶやく)
・頭からエネルギーを得るイメージを持つ
 (光のエネルギーが入るイメージ)
・最後に大地と天からのエネルギーとつながったイメージを持つ
 
C「自己肯定感体操」
 モンテディオ山形の監督も務めた奥野僚右さんが監修
・深呼吸
・手を開いて閉じる
 「元気−」といいながら開いて閉じる
・胸を開く
 手を後ろに組んで胸を開く
 息を吸って吐くが、吐くときはつま先を上げながら「やったー」という
・前屈運動
 前屈しながら「おかげさまー」という
・体の側面を伸ばす
 伸ばしながら「最高ー」という
・ひねりの運動
 ひねりながら「ついている−」という
・腰を回す
 「安心、安心」といいながら
・屈伸運動
 「できる、できる」といいながら
・ジャンプ
 「軽い、軽い」といいながら
・セルフハグ
 「ゆったりー」といいながら
・深呼吸
 「ありがとー」といいながら
 
 
特別活動で、日本の教育が変わる!
杉田洋 稲垣孝章
 
・エジプトや高知県教育委員会が施策として特別活動を導入し、組織的に展開
 
第1章 特別活動を根づかせるには
■新学習指導要領における、特別活動の位置づけ
・「人間関係形成」「社会参画」「自己実現」という目指す資質・能力の視点が明確に打ち 出された
・特別活動の実践効果→「教師が規制する学校」から「子どもたちの自立による学校」へ と教師の子ども観が変革される
・特別活動の実践を通して、子どもたちの自己実現への支援を学校全体で推進すると、欠 席者が減少、保健室への通室者が減少、けがをする子どもの人数が減少
・学力と特別活動の間に相関関係があることは間違いない
  学習指導要領の改訂に当たって平成24年度学習指導要領実施状況調査を実施
  →特別活動に関する質問紙調査に肯定的に回答した子どもだけでなく、肯定的に回答   した教師の学級の平均正答率がすべての教科で高かった。
 
■特別活動の魅力は、学校が楽しくなること
■教育委員会が本気になったら、一気に根づく
・高知県教育委員会:積極的な生徒指導の充実策の中心に特別活動を据えている
 
第2章 特別活動は自尊感情を高め、自己実現を図る
・校長の学校経営として不可欠なのは、特別支援教育を学校の中核に据えるということ
 →障がいのある子どもたちが、のびのびと生活し、生き生きと活動できる学校でなけれ  ば、子どもたちにとって幸せな学校にはなり得ない。
 
・「場面リーダー制」の活用
 例えば生活班の中に「朝の会、給食、清掃、帰りの会」の各場面でのリーダーを置き、リーダーを交代しながら全員がリーダーシップを発揮する場面を取り入れる。
 →そのことが子どもたち一人ひとりの自己肯定感を高め、温かな雰囲気の中で豊かな学  校文化の創造に大きく影響
 
・この「自己肯定感」を高めるためには、自分が有用な存在と思える「自己有用感」が大 切な感情となる
 
・世界的に見ても日本の若者の自己肯定感は低い
 2013年内閣府が発表した意識調査
 「私は、自分自身に満足している」 1位米国46.2%、2位英国39.8%、3位仏30.9%、4位韓国29.7%、5位独29.1%、6位スウェーデン21.3%、7位日本7.5%
 
<自己実現とは何か>
・選択の科学(シーナ・アイエンガー)
 高齢者介護施設での心理実験
 ある階:職員が選んだ鉢植えを配り、水やりは職員、映画の予定も職員が選んだ
 ある階:入居者が鉢植えを選び、水やりもし、映画を見る曜日も入居者が決めた。
  ↓
 3週間後の調査
 選択権なし:70%以上に健康状態の悪化現象
 選択権あり:90%以上に健康状態の改善現象
 
・自分で意思決定する取組によって、どの学年でも意欲を持って活動できる
 
<学級という集団だからこそ、自己を実現できる>
・エジプトのクフ王のピラミッドの話
 多くのピラミッドは王から命じられてつくられたものだから、やがて朽ちてしまうが、 クフ王のピラミッドはみんながこの王様のためにという気持ちで心を込めてつくったも のだから、未だに原型をとどめている。
 君たちは学校をつくる主体者だ
<内発的な動機付け>
・特別活動の実践として昼休みを週1回30分にした
 その時間は何をしてもいいが、やりたいことがあれば「やりたいことボックス」に手紙 をいれる
・子どもたちは「自分たちで楽しい学校をつくれる」→「自分たちの学校は日本一だ」
・教師による「指示」から子どもたち自身による「自主的な活動」へ
・教師の「規制」から子どもたち自身による「規律」へ
 
・特別活動により子どもたちは自己有用感、自己肯定感を高め、自信と誇りを抱くようになった
 
第3章 学級会はこうしてみよう
国立教育政策研究所から出された指導資料…特別活動の各活動の特質や実践例が盛り込まれている
<生活問題を議題化する>
<問題発見力を育てる>
 
<レンガ運びの職人>の話
レンガ運びをしている一人の職人に「あなたは何をしているのですか」と質問したところ、その職人は「見てわかるだろう。単なるつまらないレンガ運びだよ」と答えた。次に別の職人に同じ質問をすると、その職人は「レンガを運んで、この城の壁をつくっているんだよ」と答えた。また別の職員に同じ質問をすると、その職人は「レンガを運んで、この国で一番立派な城をつくっているんだよ」と答えた。
<アポロ11号の建造にまつわる話>
 この開発には科学者や技術者をはじめ40万人が携わった。当時のケネディ大統領がNASAを視察に訪れた祭、廊下にいた清掃員に「あなたは何の仕事をしているのですか」と尋ねると、その清掃員は「大統領、私は人類を月に送るのを手伝っています」と答えた。  ↓
共通しているのは、目的意識を明確に持ち、自らの仕事に誇りを持って取り組む姿勢。
このことは、学校組織の一員としての教職員、学級の一員としての子どもたちの意識によって、教育活動も大きく変わってくることを物語っている。
 
<成果主義が学校をだめにする>
<失敗してもいいのが学校>
特別活動の理念は、まさに「競争から共創へ」「個性と共生の両立」
 
第35回「道徳と特別活動の教育研究賞」(財団法人総合初等教育研究所)に論文
 
<学校経営に特別活動を導入した成果>
・学力向上
・けがをする子が激減
・欠席者数が激減
・異年齢集団での活動の活性化
・学校文化の創造
・生徒指導上の問題も解決
  教師の子ども観が変化
  教えることが先にある教科指導とは異なり、子どもの実態から教育活動を構想する特 別活動の理念が浸透したとき、学校は大きく変わる。
 
<特別活動を学校経営に活かす視点>
・個を活かす
・子どもたちの自主的な活動を大切にする
 
<ハーバードメディカルスクールの研究>
・1938年から75年にわたり、724人の追跡研究
  人生を最も豊かにするのは「人間関係」だった
まさに学校教育においてその中核を担うのが特別活動だ
 
・「人間関係形成」「社会参画」「自己実現」という資質・能力の育成を目指し、特別活動 が未来に向けていっそう重視されるべき時代になる
 
<コロナ禍>
・感動の卒業式ができない状況に対し
世界に一つの卒業証書…クラスメートのがんばりや成長をたたえる「もう一つの卒業証書」を一人ひとりに贈り合った。(小川町立八和田小学校)
 
第8章 世界へ広がる日本式教育「TOKKATSU」
<エジプトで広まる特別活動>
「日本人は歩くコーランである」(エジプトのシーシー大統領)
 
 
希望のつくり方 玄田有史
 
・一人ひとりが希望を持つには、周囲が的確に「大丈夫!」の言葉を投げかけることが重 要
・そんな状況でも、ずっと大丈夫と言い続けてくれるのは、タレントの志村けんさんだけ。 ご自身の仕事の調子がよいときも、そうでないときもずっと「だいじょうぶだぁ」と言 い続けてきた志村さん。そんな人こそ、本当は日本の希望なのです。
・若い世代が希望を持って生きていくには、その先を生きる世代が、まずは自分自身が希 望を持って生きている姿を示していくことが大切です。希望は人から人へと伝播してい くのです。
・村上龍「希望の国のエクソダス」 「この国には何でもある。本当にいろいろなものが あります。だが、希望だけがない」
・2007年に発表されたローマ教皇ベネディクト16世の回勅「信仰とは希望である」
・1994年5月1日の水俣病犠牲者慰霊式において、当時の水俣市長・吉井正澄さんが行っ た謝罪は歴史的な転換点となった。
 「もやい直し」を提唱
 もやい直しににより、立場の違いを超え、共に行動していくことが宣言された。
 具体的取組として、市の計画・立案・実施のすべてにおいて、市民主体の「行政参加」 によるまちづくりを推進 
・希望の定義づけと「希望のポーズ」
 社会思想研究者リチャード・スウェッドバーグ
 Hope is a Wish for Something to Come True by Action Each.希望とはお互いに行 動によって何かを実現しようとする気持ちである。
 (ポーズはP.41参照)
・人間関係を一気につなげる方法が一つある。共通の敵を仕立てることだ。みんなの敵を 倒すことを、共通の希望とするのだ。その希望は人々に一体感を生む。しかし、それは スポーツの場合を除き、社会でやってはいけない禁じ手だ。
・希望を持っている人の特徴として、実は職場を離れた友人・知人が多いこと。
 この自分と違う環境にある人との、たまに会う程度のゆるやかなつながりが「ウイーク タイズ」である。
 子どものウイークタイズ…異年齢活動?子ども会
・本人にとっては選ぶことのできない家庭環境のために、希望を持つことが難しい人たち がいる。
<希望という物語>
・希望がないと当初思っていた人が、焦らず時間をかけて自分の頭で考えるうち、希望を 見つけるその過程で、期せずして共通に用いる言葉があった。それは「物語」もしくは 「ストーリー」という言葉。
・希望は文字通り、希にしかかなわない望み
・しかし、希望は、失望に変わったとしても、探し続けることにこそ、本当の意味がある。
・希望の多くは簡単に実現しない。大事なのは、失望した後に、つらかった経験を踏まえ て、次の新しい希望へと、柔軟に修正させていくことだ。
・希望が失望になっても、くじけず新たな希望という旅に向かって歩み出す。その波瀾万 丈の姿に、心を動かされるのが、物語である。
 「希望の多くは失望に変わる。しかし希望の修正を重ねることで、やりがいに出会える」 これが希望の物語性についての第一の発見です。
・希望を修正させていくということ−ある生年の物語
 高校を卒業して以来、ずっと仕事をしてこなかった若者
 「何か好きなことはあるか?」「別にない」
 「好きだったことはあるか?」
 実は野球少年だった。しかし現実の衝撃に目標を失い、ニートに。
 「野球を好きになったきっかけは?」
 親が球場に連れて行ったことがあった。一気に階段を駆け上がると階段の先には、今ま でみたことのないほど、美しい芝生が広がっていた。その瞬間、彼は野球の虜になった。
 そのやりとりを聞いていた女性がパソコンで「芝生」を検索して地元の企業を探したと ころ、芝生を生産・販売する会社があった。
 自分の原点を振り返り、彼は希望を変えていった。彼は、生のプロ野球との最初の出会 いにあった芝生を植え付ける職人になることへと、新たに希望を修正させていった。
 
・挫折について
 軽量歴史社会学者の佐藤香 未婚者のうち、失恋という左折を経験したことのない人ほ ど、恋愛や結婚に希望を持てないことを指摘している。
 
・希望は、実現することも大切だが、それ以上に探し、出会うことにこそ、意味がある。
 希望とは何かを考えれば考えるほど、すぐには答えの見つからないものだ。
 
<キャリア教育>
・人生という長い道のり、誰もが途中で迷ったり、悩んだりする。そのときに、どうすればいいのか。そんな困難をくぐり抜けてきた人が、生きるための知恵として、いろいろな形でその経験を若い世代に伝えていく、それが本当のキャリア教育である。
 
<私の希望>
・希望のことを考えるうちに、とてもあこがれる言葉が出てきた。それは「まんざらではない」という言葉。
・まんざらではないというのは、「人生つらいこととか、いろいろあるけど、ふりかえってみると、案外まんざらじゃないんだよ」
・その言葉には、報われるとか、成功するとかといったこととは違う、希望を持って生きることの大切な意味が込められている。
 
 
■「総合的な学習」の導入(教育新聞)
・平成12年旧学習指導要領の移行措置が始まり、総合的な学習の時間が初めて導入され た。
・その趣旨などが十分理解されないまま、「活動あって、学びなし」という授業も少なく なかった。
・ターニングポイント:平成25年の「全国学力・学習状況調査」
 自ら問題解決に取り組む子どもほど学力が高いことがわかった。
・今回の新学習指導要領では、
  「総合的な学習」の目標を決める際には、各学校で教育目標を踏まえることが求めら  れる→探究的な学びにするため
 
■「総合」子どもたちがたくましく表現できる場を 田畑栄一(新方小)教育新聞4/19
・4年生から6年生が1年間の学習成果を「自分の得意で表現しよう」をテーマに
・研究発表、楽器演奏、理科実験、創作劇、教育漫才、読み聞かせ、ダンス、社会科クイ ズ
・子どもたちの達成感
 
■社会全体で育てる時代(5/5山新)
・この1年数ヶ月、人々は不安や不満を抱えながら暮らしてきた。
・しわ寄せは一番弱いところに来がち
・小中高生の自殺者数が全国的に急増
  警視庁のまとめ
  昨年自殺した小中高生は過去最多の499人 前年より100人増
  特に女子高生が急増
  一斉休校後の5月頃から増加し、夏休みが短縮された8月が目立った
・悩みの原因が学校だけでなく、家庭にあることもめずらしくない
  国の初めての調査
  大人に代わり、家事や介護など家族の世話をする「ヤングケアラー」
  中学生で5.7%(約17人に1人) 高校生で4.1%(約24人に1人)
  クラスに1,2人いる計算
 
■地域と連携しSOS受け止める(子どもの自殺) 本橋豊(いのち支える自殺対策推進センター)
・子どもの自殺の要因
 自己肯定感が低いこと、課外活動などの居場所が失われたこと
・SOSの受け皿として、学校と地域の連携を強化する必要
 コーディネーターの役割で、地域と連携していくことが必要
 
■コロナ休校から不登校に(4/27赤旗)
・ダブルワークのシングルマザー
・休校中に仕事を休んで子どもを家でみることができなかった
・一人で過ごす時間が長くなったことが不登校の一因になった
・長期休校の後、学習の遅れを取り戻すことが優先されたため「子どもの負担になった」・子ども自身が自分と向き合い「何かしたい」と意思を出せるようにすることが大切
 
■子どもの自殺急増で超党派議連が文科相に要請(赤旗)
・厚労相指定法人の「いのち支える自殺対策推進センター」にはノウハウも経験もある。 対策には厚労省と連携を図るべき
 
■コロナ禍のメンタルケア 香山リカ(議会と自治体277)
・震災との違い:震災や洪水被害であれば被災地にボランティアに行ったり、募金活動を 行うために街頭に出るなどできた。しかしコロナ禍ではそれができない。家でじっとし ていることがコロナ対策。
・そういう状況下で、何もできない、何の役にも立たないと、自分の存在意義が感じられ なくなる。
・さらにコロナで職を失ったり収入が激減する人たちが、特に助成で急増。生活の糧を失 い、これからの生活に希望を失う深刻な事態が広がっている。
・自然災害の場合は復興の工程が見えやすいが、コロナの場合は収束が見えない
・リモートワークや休校やオンライン授業で家族が家にいる時間が長くなり、夫婦げんか が増えたり、子どもをしかる場面が多くなっている。
・メンタルケアに大切なこと
  休養
  心が華やぐ時間 おしゃれをやってみる
・コロナ禍 生きているだけで合格点!
 
■学校に笑いの文化を! 越谷市立新方小学校(教育新聞4/26)
・学校では、友と創り上げる表現活動への制約や停止が続いている。表現し合えないスト レスは相当なもの。
・教育漫才授業をスタート
・合唱から教育漫才に
・生活アンケートでは99%が楽しいと回答
・先行き不透明な時代において自殺、不登校、いじめを防ぐには、笑いの文化が有効な手 段になる。なぜなら、たくましく自分を表現してこそ自己肯定感が育まれるからだ。
「クラスが笑いに包まれる!小学校教育漫才テクニック30」東洋館出版社
 
■自殺者11年ぶり増 2.1万人に 女性・若者目立つ (3/17朝日)
 
■データの一元化で子の貧困把握
・自治体が保有する生活保護の受給状況、学校にある学力、体力、給食費滞納といった様 々な情報を一元化し、問題を抱えながら声を上げられない子どもたちを見つけ出す。
・大阪府箕面市では116人の支援必要者を発見
<例>
学校:学力、体力、給食費の滞納
保育所、幼稚園:登園状況、日常の様子
児童相談所:虐待通報や対応状況
自治体:生活保護、就学援助、納税状況
 
■厚労省指定法人「いのち支える自殺対策推進センター」
・10月に緊急レポート:女性の自殺が急増 10月は前年比8割以上も
 「同居人がある女性」「無職の女性」「女子中高生」
・コロナ禍でジェンダーの視点からの自殺対策が必要
・女性の自殺の背景 雇用問題、DV、育児・介護の悩み
・一方、4月から6月にかけての自殺者数は、過去5年間の傾向からの予測値よりも少なか った。→新型コロナの感染拡大を受けて「命を守ろう」とする意識が高まった。
 また、政府の支援策である住居確保給付金、緊急小口資金、総合支援資金は一定の自殺 抑止効果がみられた。
 
・仙台市:弁護士、臨床心理士、社会保険労務士などが相談に応じると共に、ソーシャル ワーカーが伴走型の支援を行う「暮らし支える総合相談」事業を開始
 
■子どもの自殺大幅増加 (NEWS WEB4/14)
・福岡市のあるクリニックに設けられている「自殺予防外来」には今年夏以降診察に訪れ る人が増えている。
・例年と比べて2倍近く、10代20代の若者が深刻な状況
・カルテ「これからどう生きていけば良いかわからない」「死んだら楽になるとは思う」
・ある中学生はもともと父親から虐待を受けていたが、休校になり逃げ場がなくなったこ とで自殺を考えるようになり、母親と診察に訪れた
 
・福岡市教育委員会 小中高217校で緊急面談
・現場ではどう子どもたちの声をくみ取るのかが課題に
 
「RAMPS」というソフト 東大大学院教授で精神科医でもある佐々木司さんが開発
・タブレット端末を手渡し、示される11の質問に答える
・養護教諭が端末に示される質問を行う(回答結果に応じて変化した質問)
・このソフトを使うことで踏み込みにくい質問でも気軽に話せる雰囲気がつくれるほか、 教諭の知識や経験にばらつきがあっても質を担保できる。
・「全く問題ない」と思われていた子どものリスクが明らかになったり、「なんとなく心配」 と思われていた子どもが、実は自殺の計画まで立てているほど深刻だったりしたケース があった。
・現在は、新潟、東京、茨城の高校など36校で導入
 
■オンライン教育
・オンライン教育による学びの継続
・教育委員会として公式動画チャンネルを立ち上げ、動画の作成・配信を行うと同時に、 オンライン会議サービスを活用した取組を各学校で進める
・不登校の生徒がオンライン授業に参加できるようになった事例もある。
 
■学校運営協議会(コミュニティースクール)
・「学校評議員制度」では、校長の求めに応じた個人の意見にとどまるのに対し、運営協 議会は、学校運営や人事に一定の責任と権限を持つため、より安定的で地域共同性の高 い学校づくりが進む。2017年の制度改正(地方教育行政の組織及び運営に関する法律 の改正)で、教育委員会には設置の努力義務が課され た。
<具体的なメリット>
・学校、地域、家庭で子ども像や学校像を共有し、計画段階から地域や保護者らの参画を 得た学校運営ができる
・小中連携や地域連携が図られる
・子どもたちの学力向上に寄与
・学校への苦情が減った
・地域コミュニティ活性化につながった
・学校を核とした地域防災体制が確立
 
■コロナ自粛の深刻な副作用 和田秀樹(国際医療福祉大学大学院教授)
・一連のコロナ自粛要請で自宅にこもる機会が増えたことで、孤独感や感染不安が募って うつ状態になった人や、雇用が奪われて経済苦を抱えてしまった人が精神的に追い込ま れている。
・自殺者とコロナ累計死者数の関係 3〜4倍の自殺者数(?)
 自粛要請はコロナ感染抑制に一定の効果はあっただろうが、その反面数倍の副作用死
 を招いた
・人との会話の重要性→リモートの活用
・高齢者の場合、外出を控えたり、刺激のない生活を続けることで、足腰が弱ったり、脳 の機能の低下が簡単に起こってしまう。将来の介護率が上がってしまう。
 
■自殺防止対策
・検索連動型広告
 インターネット上の検索サイトにおいて、自殺関連キーワードの用語検索を行うと、検 索結果の上位に相談窓口のリンク先が表示される「検索連動型広告」の取組を開始した 自治体(千葉県)
・2020年10月現在、50万4千件の広告表示があり、そのうち相談窓口を案内した件数が1 万9千件あった。
・SNSを活用した相談窓口(千葉県)
 
■自殺統計にもとづく自殺者数(厚生労働省より)よりEduwell Journalが作成した資料
・原因や動機が特定できたものでは「学校問題」の増加が顕著に示されている。
 特に女子に関しては6倍以上となっている。
・6月から学校が再開し、授業の遅れを取り戻そうと授業時間の延長や夏休み期間の短縮 などの対応が図られていた時期に、学校での何らかのトラブルが生じやすい状況になっ ていたと推測される。
 
■厚労省は「新型コロナとそれにともなう社会状況との関連性」について詳しく分析する 方針発表(2020年秋?)
 
■増える10代の自殺(山形県) 山新4/18
・本県では2015年〜2018年と比べて、2019、2020年に倍増し、減少傾向にある全世代と 逆行している。
・全国では昨年、小中高生の自殺者数が過去最高になった。
・2020年の統計(速報値)では、県内で自殺した10代は9人。(村山地方4、庄内地方3、 置賜地方2)
・5月以降に8人が集中 一斉休校など異例の事態が続いた頃
・厚労省自殺対策推進室は、外出自粛による家庭での時間増加に伴い、学業や進路、家族 の不和などに悩む子が増えた可能性を指摘。
 
■高校生の自殺がなぜ増えているのか 秋山千佳(文藝春秋2021.4)
・二つの傾向 
@「家庭不和」
・コロナ以前は学校、友人関係、バイト先など逃げ場があったが、コロナ禍のもと逃げ場 がなくなった
・親子関係、夫婦仲の悪化が影響
A「情緒不安定」
・コロナ禍で将来が見通せない
・なんだか気持ちがプツッと切れてしまった
・ニュースに反応(高校生の自殺、芸能人の自殺)
・死にたくないのに、先が見えなさすぎて衝動的に死に至ってしまう
 
学校が居場所になる
・昼休みに誰かしら教室の窓の外に向かって叫ぶのが日常の光景に
・生徒指導件数が増えた
  暇を持て余し飲酒や喫煙をSNSにアップ
・学校が居場所になっているのはなぜか
 →支援の手厚さ
  養護教諭に加え、カウンセラーとソーシャルワーカーが週3回在校
 
■新型コロナ禍のひとり親家庭の生活実態(山新11/18)
・新型コロナウイルスの感染拡大を受け、県内のひとり親家庭の4割で拡大前より収入が 減り、7割以上で家計の支出が増えたことが、県の実態調査で明らかになった。
・巣ごもり生活で食費や光熱費がかさんだ
・マスクや消毒液など衛生用品費も増えている
 
■アンガーマネジメント(怒りをコントロールする)
・6秒間ルール:かっとなったとき、激しい言葉を吐く、あるいは暴力を振るいそうにな るときには、とにかく6秒間待つというルール