子どもの貧困と教育の無償化 中村文夫
 
子どもの貧困率 1985年の10.9%から2012年16.3%と悪化
子どもの6人に1人は相対的な貧困状態にあり、しかも相対的な貧困を図る中央値も下がっている
 
民主党政権 「子どもの貧困対策の推進に関する法律」「子供の貧困対策に関する大綱」
 
多様な出自、多様な心身の状況にある子どもたちが同じ場を共有することで、社会を成り立たせる相互理解を得ることが普通教育では最も大切なこと。そのためにも教育機会の平等は保障されなくてはならない。
 
しかし、相互理解を得る場としての学校の基本的な機能を軽視
学歴学力保障の教育の重視→貧富の格差を教育を介して助長
 
教育における社会科作用が衰え、選別作用のみが重視されれば社会的格差は拡大し、社会を分裂させる
 
<補助教材にかかる費用>P.14
 
公立小学校学校徴収金に占める学校給食費42%
 
<地方自治体が補助教材についての保護者負担軽減を試みている実例>P.20
 
補助教材を無償化するためには、公会計化を行い、財政民主主義により議会での徹底した議論が必須
 
<学校給食費の公会計化>
参議院総務委員会で公会計化答弁 2017.4.11杉尾秀哉議員
 
・学校給食費は学校給食法第11条第2項によって保護者からの食材費負担金の徴収が可 能になっている
・補助教材費、修学旅行費などはどの法律にも徴収することを可能とする法律はない
・公教育という公共事業にあって是以外負担をする場合には、法令に基づく必要がある
 
学校給食費の公会計化は、学校給食の無償化に向けた一つのステップ
 
 
<自治労学校事務協議会制作部の調査(2017年6月)>
公会計化団体534自治体 (30%)
学校給食の完全無償化75自治体(鮭川村) 一部補助208自治体
 
<教員の多忙化の底にあるもの>
・連合総研「日本における教職員の働き方・労働時間の実態に関する研究委員会」報告書(2017.1)
小学校教諭の在校時間11時間33分 中学校教諭12時間12分
 
・OECD等34カ国の比較調査
 1週間の仕事時間の合計は参加国平均38.9時間に対し、日本は53.9時間
 一般的事務作業に使った時間 平均2.9時間 日本5.5時間
 課外活動の指導に使った時間 平均2.1時間 日本7.7時間
 教員の自己効力感低い
   例) 「生徒に勉強ができると自身を持たせる」 平均85.8% 日本17.6%
      
文科省の改善策
・部活動では時間制限や部活動支援員の法整備
・事務作業に関して業務が集中する副校長や教頭への補助職員の配置、教員補助職員の配 置
 
教員が求める解決策と文科省の解決策の乖離
・会議と学校行事の精選
・非正規職員化が進み、経験の積み重ねと共同作業が困難に
・教員はじめ学校職員の多能化の根本原因は、業績主義に基づく挙証(アンケートや実績 報告、そして学校職員評価など)にある。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
子どもの貧困連鎖 保坂渉・池谷孝司
 
生活保護など福祉制度に詳しい社会福祉の専門職「スクールソーシャルワーカー」の配置
 
・SSWは貧困や虐待などの問題を抱えた家庭の状況を把握し、行政や福祉施設、警察などに協力を要請する活動おする。
・家庭と社会福祉をつなぐ貴重な存在
 
・ケースに応じ、学校関係者や民生委員、福祉、医療の担当者らがいつでも集まれるネットワークが必要
 
・内閣府のパーソナルサポートサービス
 
・厚労省の若者サポートステーション
 
・キャッシュフォーワークジャパン
 
<子どもの貧困と健康格差>
・7割の児童が虫歯、お金がかかるから歯医者に行けず
 4割は視力低下 めがねを買えない
 
<シングルマザーの会>
・一人で悩みを抱えるのではなく、本音で話し合える交流の場
 この会がある夜は特別保育を実施して子供を預かる
 衣服の交流
・ワンストップサービス、すべての家庭のニーズを受け止められるように食事の作り方、就労のスキルのみに付け方など多様なプログラムを用意して、生活支援の総合手稲地域センターとしての位置づけが重要
 
<アメリカのペリープレスクールプロジェクト>
乳幼児期に質の良い保育を無償で受けた子どもたちは、同じ家庭環境で保育を受けられなかった子どもたちに比べて、進学や就職や社会的な適応などの点で劇的な改善が見られ、その経済的な効果は、無償で保育を提供するのに必要な費用の数倍にもなる。弱い立場の子どもたちに投資すると言うことが、社会全体として利益につながるという結果は非常に説得力がある。
 
 
 
現場からみた「子どもの貧困」対策 京都府立大学地域未来創造センター
 
「子どもの貧困対策の推進に関する法律」(2014.1施行)
「子供の貧困対策に関する大綱」(2014.8制定)
・大綱では「子供の貧困対策に関する基本方針」が示され、指標を設定
・教育の支援、生活の支援、保護者に対する就労の支援、経済的支援、調査研究が謳われ ている
・中でも学校をプラットフォームとした総合的な子どもの貧困対策を展開するとして
  学力保障や福祉関連機関との連携、地域による学習支援に力を入れるとしている
  特に、学校をプラットフォームとして子どもたちを早期の段階で生活支援や福祉制度  につなげるシステムを作るために、スクールソーシャルワーカーの配置推進が謳われ  ている
・スクールソーシャルワーカーの配置を通じてケースワーカー、医療機関、児童相談所な どの福祉部門と、教育委員会・学校などとの連携強化を図る
 
第1章 箕面市の子どもの貧困対策
@機構改革(組織再編)
・教育委員会の中に子どもたちの基礎情報を持ち継続的な支援を可能にするための専門部 局「子ども未来創造局子ども成長見守り室」を創設
・教育と子育てに係る支援をすべて教育委員会に一元化
  一元化することで0-15歳の子どもの支援を教育委員会だけですべてフォロー
A個人情報保護条例の改正
・本人の同意がなくとも収集目的外利用を可能にした。
B子どもに関するデータベースの構築と運用
・「子ども成長見守りシステム」の構築
・学力、生活困窮判定、非認知能力判定などの情報も含めて一元化し、3段階の総合的見 守り判定(T:重点支援、U:予防的措置、V:見守り)としている。
・担当職員による「ケース会議」 公的支援が必要な子どもたちを4千人と特定し、支援
 
第4章 武雄市の子どもの貧困対策
・教育委員会に「子どもの貧困対策課」を設置
・小松市長が発起人になり「子どもの未来を応援する首長連合(子どもの貧困対策連合)」 を設立(2016年6月) 2017年現在179団体
 
・要保護・準要保護認定児童生徒数(  ) 
 18歳未満の子どものいるひとり親世帯(  )
 
 こうした背景を受け、武雄市では困窮家庭の孤立化を防ぐためには、まず基本的な学力・生活習慣・社会性が必須と考え、未来を生き抜く力を身につけ、自立できる子どもを育 てるべく「子どもの貧困対策課」を創設
 
<子どもの貧困対策課>
・課長1、係長1、係員5
・そのほかに副市長をトップに福祉課、健康課、生涯学習課、企画課からを加えた12姪 で構成する「子どもの貧困対策ワーキンググループ」を組織
@実態把握(調査の実施)
・食事を摂っているか。清潔にしているか、給食費などの滞納、集団の中での疎外、過程 の状況、物忘れ、遅刻や欠席、保護者とふれあう時間がないなど
Aひとり親家庭の自立を支援する事業の開始
・仕事(母子家庭等自立支援教育訓練給付金追加支給事業)
・居場所(ファミリーサポート事業無料券配布および減額助成事業)
・住まい(ひとり親家庭等空家改修助成事業補助金)
B子どもの生活実態調査
Cひとり親家庭などへのアンケート調査
D関係機関(保育所、幼稚園、小中学校、近隣高校、民生委員)へのヒアリング調査
 これらの調査結果などを踏まえ「武雄市子どもの未来応援計画」を策定(2017.3)
・伴走型支援
  教員OBと保健師を「子どもの笑顔コーディネーター」として配置
  
第6章 京都府におけるスクールソーシャルワーカーの配置
2008年度文科省のSSW活用事業がスタート
<SSW活用事業実施要領>
・事業の実施主体:都道府県・指定都市・中核市
・SSWはいじめ、不登校、暴力行為、児童虐待などの生活指導上の課題に対応する
・職務内容:問題を抱えた児童生徒がおかれた環境への働きかけ、関係機関とのネットワ ーク、校内のチーム体制、保護者・教員などに対する支援・相談・情報提供、研修活動・選考:社会福祉士や精神保健福祉士に加え、教員資格や心理間計の資格を有した方
 
国は2019年度まで原則として全国の中学校約1万校にSSWを配置する目標
 
第7章 子どもの包括支援の「プラットフォーム」に学校がなり得るために
・大綱では、教育費負担の軽減に加えて「学校」を子どもの貧困対策のプラットフォーム と位置づけ総合的に対策を推進することを謳っている。
<具体的に>
@学校教育による学力保障
A学校を窓口とした福祉関連機関との連携
B経済的支援を通じて、学校から子どもを福祉的支援につなげる
 
<学校プラットフォーム施策>
@学校教育による学力保障
・少人数の習熟度別指導や放課後補習
  ↓
 授業以外に費やされる教師の多忙
 学力保障の要である学校教育が本来あるべき機能を果たし切れていない
A学校を窓口とした福祉関連機関との連携
・SSWの配置を進めて、貧困家庭の子どもたちを早い段階から生活支援や福祉制度につ なげる
・SSWは専任職員のような安定的位置づけはされず、学校に常駐することもない
 こうした誤りを克服する
・一人ひとりそれぞれの家庭に寄り添った伴走型の支援体制を構築
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
貧困の中にいる子どものソーシャルワーク 大西良
 
我が国の社会が作り出す貧困は、困窮のみならず、人と人、あるいは人と社会の関係を断ち切り、様々なチャンスを剥奪し、さらに人々の自信や意欲をも失わせていく。加えて格差によって生じる差別や偏見は、多くの傷付きと生きづらさを生み、人々の心を深くむしばんでいく。
 
相対的貧困は、経済的な理由でその国もしくは社会の大多数が享受している普通の生活を送ることが出来ない状態を言う。
 
絶対的貧困は視覚的に困窮の状態であることが理解しやすいが、相対的貧困は明確にはわからない。
 
相対的貧困の本質的問題の一つは、人々の関係性やつながりの喪失にアル。
 
<格差のメカニズムとマタイ効果>
最初の小さな格差が次の格差を生み出し、次第に大きな格差に変容する性質
 
小さな格差でも、それを放置すると社会的排除という重大な問題へ発展する
→負のスパイラル
 
日本の子どもの貧困率は13.9%(2015年)
就学援助を利用している児童・生徒 15.2%(2015年文科省)
戸村健作(山大 2012年) 産業構造基本調査に基づいて13.8%
 
この20年の間に子どもの貧困率が高まってきた要因の一つに1990年代以降の日本社会において、非正規雇用者が増大し、低賃金で働く人々が増加したことがあげられる
 
日本貧困の特徴
・女性、特に母子世帯においてワーキングプアとなるリスクが高い
・ワーキングプアの一定部分は、政府の所得移転、特に社会保険料負担により作り出される官製ワーキングプアである(P.25)
 
2015生活困窮者自立支援法施行
メニューの一つに学習支援
約500の自治体が学習支援(平成29年度)
平成30年に法改正
子どもの学習・生活支援事業開設
 
<玉名市 くらしサポート課>
家族の多重債務問題へのチームアプローチ
弁護士を通じて問題解決を図っても再び手を出す
家計管理支援を積極的に実施(寄り添い型支援)
債務以外に税の滞納、家族関係、就労といった広範囲の生活問題に対応
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
子どもの貧困U 阿部彩
 
・教育学においては、親の所得と子どもの学力がきれいな比例関係にあることが実証され ている。(耳塚2009)
 
・子どもの健康状態についても、貧困層の子どもとそうでない層の子どもには、統計的に 有意な差がある(阿部2013)
 
・全国の小中高の養護教員の団体は、けがや病気をしても病院に行けない子どもや、常に 空腹な子どもなどについて「保健室から見える子どもの貧困の実態」というリーフにま とめている。
 
・不登校、児童虐待などのリスクは、親が就労問題、経済問題などを抱えている世帯に特 に高い(山野2008)
 
・さらに懸念されるのは、貧困が子どもから自己肯定感や将来の希望を奪うこと。
 
・相対的貧困が子どもに及びす一番大きな悪影響は、親や家庭内のストレスがもたらす身 体的・心理的影響
 →児童虐待、子どもの健やかな成長を妨げる
 
<学習支援>
・厚労省は2009年より生活保護受給世帯に属する子どもたちに学習支援する自治体に事業費の補助を行っている。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「なんとかする」子どもの貧困 湯浅誠
 
・貧困と貧乏は違う。貧困とは貧乏+孤立だ
 
・全国で初めて県として貧困家庭の学習支援を事業化(埼玉県のアスポート事業)
  学習教室と家庭訪問を二本柱とした貧困対策事業
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
・教育支援 貧困の連鎖を防ぐための学習支援
 
子どもの貧困率:標準的世帯の年間可処分所得の半分、一人あたり約122万円未満で暮らす18歳未満の割合
 
・教育に関わる家庭の負担 文科省調査
 幼稚園から高校まで公立に通った場合の学習費の総額は平均で約550万円、大学まで進学すると約1千万円近くかかる
 私立はこれ以上の家計負担
 
・学習塾などの学習補助費は公立の小学校で年間約13万円、中学校約25万円、高校7約24万円
 
・学習支援を生保受給世帯の中3に限定せず、生活困窮世帯の子どもや対象年齢も含め支援対象者を拡大する必要がある
 
行使の担い手拡大:地域の教員や塾講師OB
 
・子どもの貧困対策の推進に関する法律にもとづく子どもの貧困対策の策定について
 
・武雄市では地域ボランティアに登録した人が学校に来て、朝の授業で子どもたちの宿題や問題に○付けをする
 
・子どもの貧困率は16.3%だが、ひとり親世帯に限っては54.6%
 ひとり親世帯の85%は母子世帯
 選べる職種が臨時・パートなど非正規雇用が多い
 
・本市の0-17歳の子どもの数は(  )人、これに貧困率16.3%を乗じて単純計算すると(   )人が貧困状態に陥っている
 
・子どもの貧困対策の総合担当部署の設置
 
女性のひとり親家庭である特定寡婦控除対象者(  )人 うち非課税者(  )人
            男性寡婦控除(  )人 非課税者(  )人
 
・生活実態調査 放課後の我紀州支援対策
 
子どもの貧困対策庁内連絡会(文京区)
・和光市では介護保険制度を活用して、ケアマネジャーが各家庭の状況を聞き取り、関係 機関との連携で子育て支援を行っている。
 
 
 
<教育委員会質問事項>
 
@子どもの貧困対策の推進に関する法律、大綱で市町村で基本計画を定めることになって いるが本市の状況は?
 
 
A子どもの貧困対策について、福祉関連機関との連携
1)生活困窮者自立支援法の活用
  学習支援(全国500自治体実施)
 
 
2)教育委員会に子どもの貧困対策にあたる専門部局を設置することについて
(箕面市、武雄市)
 
 
3)「子どもの未来を応援する首長連合」への加入
 
 
4)SSWの配置について
・現状は
・SSWの各学校への常設
・ケース会議
 
 
B学校給食費の滞納状況
 徴収方法
 公会計化(市の業務化)の見通し
 給食費無償化の見通し
 
 
C子ども食堂との連携
 
D教育委員会としての貧困対策事業があれば