地方議員からみた社会保障
守岡 等
自己紹介
上山市議 現在2期目
15人の議員定数 1人会派 革新系4 保守系10
数の力をどう打ち破るか
 
@温泉健康施設計画
・16億円の建設計画 + ランニングコスト
上山市の財政を徹底的に分析
■これまでの自治体会計…現金主義・単式簿記
            資産・負債の状況がわからない、減価償却がなされない
            会計処理期間というブラックボックス(夕張の不正経理)
■総務省の方針で発生主義・複式簿記による新公会計制度の導入
 ・343億円の負債(市民一人あたり100万以上、4人家族で400万以上)
 ・地方債償還支出は14億円 地方債発行収入は26億円(償還が進んでいない)
 ・基礎的財政支出(プライマリーバランス)ー9億7400万円(財政の執行に係る経   費が借金に頼っている状態)
 ・債務償還可能年数(債務の償還に徹すれば最短何年で償還できるかの数値):10.4年
  →10年を越えると返済能力がないとみなされ金融機関は融資を断る
   宮城県の涌谷町:債務償還可能年数が悪化し、財政非常事態宣言
 ・資産老朽化比率57.2%(資産の半分以上が帳簿上の価値を失っている)
  今後40年間の公共施設の維持管理等に必要な額は1,140億円(1年28億円)
  充当可能金額を差し引いて352億円の更新財源が不足
             ↓
  「本市の今後の事業展開は、温泉健康施設など資産・負債を増やすような大型の事業展開ではなく、人口減対策に結びつく教育や社会保障など市民生活直結の事業展開を図りながら、負債を減らす方向にシフトすべき」
             ↓
      婦人団体が署名運動展開(将来の子どもたちに負債を残すな)
      賛成6 反対8 で建設計画は否決
      市長提案が否決されたのは上山市政で初
 
A国保問題
■国保の状況(4千世帯)
・一人あたり平均国保税額約16万円 年間所得200万円の4人家族で50万円
・資格証明書発行件数 28世帯
・国保基金積立額 10億円
・医療費は13市中南陽に次ぐ第2位
・肺炎、肺がんが多い タバコを吸っている人は増加
■この間の成果
・44条減免(窓口負担減免)は実施している(ことになっている)
・レセプト分析による医療費問題の分析を行っている
  医療費を押し上げている要因
   高血圧患者の増(基準値の問題)
   呼吸器疾患の特徴(タバコ、受動喫煙の問題)
   糖尿病の重症化→人工透析
・国保税算定方式から資産割を廃止(固定資産税納入者は保険税減)
・子どもが多いほど税額が高くなる均等割廃止を要求→市長会の要望事項に
  秋田・湯沢市では均等割廃止
■健康長寿の県・長野県と共通点が多い
長野モデルの三つの特徴
 @平均寿命が日本一 A就業率が非常に高い B高齢者医療費が低い
その背景にあるもの
★自然とともに生きる環境
・前菜畑(家の前の畑)が多い → 運動習慣
・高地と傾斜地が多い
・寒暖差 ワイン産地は長寿地域
・身近に温泉のある環境 ストレス軽減
★高齢者の働ける環境
・長野県の65歳以上就業率は26.7%で全国一位(就業率の低い沖縄県の2倍)
・小規模な土地を活かした果樹栽培
・ボランティア行動者率33.1%(全国6位)
★在宅死亡の割合が高い
・持ち家率が高い、高齢者単身比率・離婚率・生活保護世帯数が低い
・在宅死亡の割合が16.6%(全国平均13%)全国3位
・行政の積極的な在宅医療と家族条件がマッチ
★コミュニティ、生きがいづくり
・公民館の数は1236で全国1位 第2位は山形県の524
・歩いて行けるところに話し合ったり学習する場がある
★食生活
・腹七部目
・野菜や果物の摂取
・ポリフェノール リンゴとぶどう
・発酵食品 塩麹、味噌、醤油
・寒天
☆予防医療
・地域医療と保健活動
 浅間総合病院、佐久総合病院、諏訪中央病院
・自主的な組織 保健補導員
☆たゆみない行政の取組
・調査から実践、そして対策へ
・行政単位は1万人が基本(市町村合併を拒否)
☆行政、病院、住民三者の対等な関係
 
B介護保険
1)上山市での介護悲劇 80代の夫が寝たきりの80代の妻を殺害
 裁判記録の書き取り(木会長と一緒に) 
「介護サービス体系が未整備で、行政に助けを求めなかった状況も理解できる」(裁判長)→その後の生活相談
2)県社保協で介護悲劇の分析
・男性(息子・夫)の介護疲れによる母親・妻への加害の事例が多い
・特に50代の独身男性で十分な収入がない場合
・認知症対応は在宅では困難
・介護施設に預けたくても施設が不足して入れられない、経済的問題で入所できない
       ↓
<必要な対応>
・要介護者のいる全世帯の調査を行い、現状把握を行う
・特養ホームなど介護施設を整備する
・認知症対応の強化を図る
・低所得者対策を強化する
       ↓
   県内の介護悲劇は激減
3)認知症対策
・ユマニチュードの普及
  認知症の方を一人の人間として尊重し、同じ人間として向き合い、接することを基本  にした介護技法
  「見つめる」「話しかける」「触れる」「立つ」の4つを基本とし、認知症の方と介護  者の心の絆を結ぶことが大切
  → 劇的な成果 凶暴な方が赤ちゃんをあやす(実体験)
 
C生活保護
・この間300件以上の生活相談 そのほとんどは生活苦
・最後のセーフティーネットとしての生活保護制度(社会保障制度)
・上山市では水際作戦など露骨な申請権の疎外はなし(少なくとも同行申請においては)
  むしろ他市からの流れ者も救済
・貧困の実態…低年金・無年金者、コロナによる失業・休業、刑務所からの出所者(暴力 団、覚醒剤、アルコール依存症)、精神疾患(ひきこもり)
・住居がないと申請できない…良心的な大家さんの存在 敷金の問題
・たとえ保護支給になっても医療的な支援が必要(アルコール、ギャンブル依存症)
・スティグマ(恥)の問題
  若い家族が申請の意思を示しても、老親が許さない「世間体が悪い、ご先祖様に申し  訳ない」→世帯分離できないか 「家計が同一でなければ可能」
・生活保護捕捉率が低い(生活保護基準以下の世帯がかなり多い)
  コロナ禍における生活資金特例貸付 市内で30件以上申請
 
D胃がん対策
1)胃がん検診は内視鏡検査を標準に
・胃X線造影検査(バリウム検査)は身体への負荷が大きく、放射線被爆によるがんのリ スク増加を招く
・内視鏡の方が発見率が高い(新潟県立がんセンター、日本消化器がん検診学会)
・しかし、依然としてバリウム検査が主流→2014年ガイドラインが示され、少しずつ内 視鏡検査が普及
2)特定健診にピロリ菌検査を導入すべき
・最近の研究ではヘリコバクターピロリ(ピロリ菌)の持続感染が胃がんの主な要因と認 知。血液検査で判定可能に。
・内視鏡検査とピロリ菌感染検査を受けて、ピロリ菌感染胃炎と診断されれば除菌治療に 保険適用に。
・国際機関の報告ではピロリ菌除菌により胃がん発症を30〜40%減少できる
 
E新型コロナウイルス対策
1)ウイルスとは
・自らは生殖できない非生物
・遺伝情報を細胞に組み込み繁殖
・毒性を強めたり弱めたり
・宇宙生物学(アストロバイオロジー) ウイルスは宇宙由来
・パンデミックの後の歴史的変化 ルネサンス、産業革命、世界大戦
2)新型コロナウイルスの恐ろしさ
・8割の人は無症状・軽症者 数%にはものすごい毒性発揮
              →肺炎(窒息に近い症状で死亡)
・無症状、軽症者も急に亡くなる例も
・最期の対面も果たせず、火葬後の遺骨を受け取るのみ
3)県内の状況
・感染者:   死亡者:
・抗体検査の推計値(山形大学) 陽性率0.5% 県民107万人のうち少なく見積もって 670人、最大で1万人の感染者
・3月〜4月の状況 … 保健所機能の問題を明示(検査と感染経路の確認)
・簡単にPCR検査ができない状況
4)地方自治の独自性が鮮明に(独自のPCR検査)
・ドライブスルー方式によるPCR検査(新潟市、名古屋市など)
・ウォークスルー方式(富士宮市) 感染リスクが低い 
・移動式PCR検査(鎌ケ谷市など) ワンボックスカーを改良
・訪問医によるPCR検査(新宿区) 高齢者施設に向け
・いま全国で広がっているのが唾液を使ったPCR検査
  唾液を検体に使い民間検査機関に搬送→2〜3日で結果判明
  練馬区内では100カ所を越す診療所が意向表明
  ソフトバンクグループは2千円で実施
5)いま必要な対策
・第2波、第3波が来てもロックダウン(都市封鎖)、一斉休業・休校は現実的ではない
・きめ細かいPCR検査でクラスター(線)を封鎖 エピセンター化(面)を防ぐ
・そのためには各医療機関でPCR検査ができるように体制を整備する
・エッセンシャルワーカー(医療、福祉、教育など)に対する検査の実施
  世田谷区では区内すべての介護施設職員や保育士など2万人を検査対象に 
  4億円公費で
・インフルエンザ予防接種費用の助成対象拡大
  最上広域(新庄市を除く)は全住民を対象に
・無症状感染者・軽症者の管理、重症者の医療機器・体制の整備
6)心構え
・変異性でワクチン・治療薬開発が困難 収束まで2〜3年はかかる(ハーバード大学)
・リスクマネジメントは最悪を想定して逆算
・パンデミックの影響としての二面性    格差・差別の拡大
                     社会の変革
 
 今回のコロナ禍で明らかになった新自由主義の矛盾を克服し、新たな文化、社会体制の 構築を
 
以上