私が今回の「安全保障関連法案の制定断念を求める意見書の提出」求める誓願に賛同し、紹介議員になった理由は次のようなものです。
 第一に、日本の将来に関する重要な11法案を一括して審議を行い、わずか80時間の審議で通そうとしていることです。改定されるそれぞれの法律は過去に長い時間をかけて議論してきたものです。たとえばPKO法だけでも衆議院で160時間も審議してきました。首相は4月29日にアメリカ議会で演説を行い、夏までに実現すると公約しましたが、国のあり方を根本から変える法案を、対米公約のために拙速に強行することは許されません。共同通信の世論調査では「十分説明しているとは思わない」が81.4%にのぼり、テレビ朝日の世論調査でも「廃案にすべき」「時間をかけて審議すべき」が82%となっており、多くの国民は今国会での成立を望んでいません。
 
第二に、平和安全法制整備法をめぐる国会の審議で、戦闘地域での後方支援は、憲法違反の武力行使に道を開くことが明らかになったことです。
 戦闘地域では自衛隊が相手から攻撃されることもある、攻撃されたら自衛隊も武器を使用することがあり得る、このことを安倍首相は認めています。
 安倍首相は「自己保存型の武器しか使用できない」と言っていますが、これは実態上も、国際法上も通用しない論理です。実際にイラク・サマワに派遣された自衛隊は対戦車弾や無反動砲といった重武装を行い、とても自己保存型の武器とはいえないものでしたが、戦闘地域に行くことになればさらに強力な武器を持って行かざるを得ず、こうした武器で反撃することは戦闘以外の何物でもありません。
国際法上も自己保存型の武器使用などという概念は存在しないことは外務省も認めています。
 そもそも後方支援というのは戦闘地域に武器弾薬を運ぶ兵たん活動です。敵はその兵たんを一番に狙うそうです。戦時国際法(ジュネーブ条約追加議定書)でも攻撃の目標になると定められた戦闘と一体のものです。攻められた自衛隊は即時に反撃しなければ死ぬだけです。米軍指揮下で「攻撃されたから退去」などといえない状況です。戦闘地域で戦闘を行う、これは文字通り武力行使を禁じた憲法9条に違反することは明白です。
 
第三に、集団的自衛権の問題です。自国が攻撃されたわけでもないのに、他国が起こす戦争に武力行使をもって参加することが集団的自衛権ですが、これまで実際に集団的自衛権が行使された事例のほとんどは、米国によるベトナム侵略戦争など、大国が中小国家への侵略・干渉戦争を行う際の口実として使われてきました。
 そして歴代内閣は、集団的自衛権の行使は「憲法上許されない」という立場を取ってきました。しかし安倍政権は2014年7月の閣議決定で、武力行使の新3要件を定め、他国に対する武力攻撃でも「日本の存立が脅かされた」と政府が判断すれば集団的自衛権を発動できるようにしました。
 その具体例として「中東ホルムズ海峡に機雷が敷設されて日本に深刻なエネルギー危機が発生し得る事態」や「経済基盤が脅かされる事態」などをあげていますが、まさにかつて日本軍国主義が「満蒙は日本の生命線」といって侵略戦争を拡大していった歴史を繰り返す道を歩もうとしています。
 
第四に、PKOの問題です。今回の法制案ではPKOに参加する自衛隊の武器使用権限も大幅に拡大しています。これまでの自己保存だけでなく、任務遂行上の武器使用も認め、他国軍を武力で守る「駆けつけ警護」も可能にします。さらに国連の統制下にないアメリカ中心の有志連合が行う活動にも自衛隊が参加できるようにします。
 こうしたことが認められれば、多数の死者を出したアフガニスタンでの国際治安支援部隊(ISAF)や、イラク駐留多国籍軍のような活動に参加することになります。アフガニスタンのISAFでは2002年から13年間で3500人の兵士が死亡しました。イラク多国籍軍も戦闘終結宣言後に4800人の兵士が死亡しました。まさに殺し、殺される戦場に自衛隊員を送り込むことになります。
 
 このように今度の安全保障法制案はたくさんの問題をはらんでいます。ほとんどの憲法学者は憲法違反だと言っています。私たちは何よりも立憲主義の精神に立ち返って、憲法に違反する法体制を許すならば歯止めのない混乱・モラルハザードが待ち受けていることを想起すべきです。
 そして第二に、今一度、戦争の悲惨さを思い起こす必要があるのではないでしょうか。多くの犠牲の上に、二度と戦争はしないことを誓ったのが日本国憲法です。この憲法によって、戦後日本の自衛隊は戦争で一人も殺し殺されることなく歩んで来た事実があります。上山市にもたくさんの自衛隊の方々がおります。自衛隊に入隊するとまず、憲法と諸法令を守ると宣誓するそうです。自分たちからは攻撃しないが、万が一攻めてきたら守らないといけないと教育されます。そうした自衛隊員、若者のいのちと人生を守る必要があります。戦争の背景には政治・経済・宗教など様々な利害がからんでいます。大切な命をそうした利害の犠牲にしてはならないのです。
 そうした観点から、安全保障関連法案は制定すべきではない、この請願を採択してほしいと言うことを最後にお願いして、趣旨説明を終わります。